クルマの「ヘッドランプ」は黄ばむのに「テールランプ」はなぜ変色しない? 同じ“ランプ”なのに何が違う?

ヘッドランプが劣化して、黄ばんだりくすんだりしているクルマを見かけることがありますが、一方でテールランプがそういった状態になっているクルマはあまりありません。何が違うのでしょうか。

ヘッドランプのカバーが黄ばむ理由とは?

 クルマのフロントに装備されているヘッドランプは、長く使っているうちにカバーが黄ばんでしまうことがあります。
 
 一方で、車体後部のテールランプのカバー(以降、テールレンズ)は、同じように長く使っていてもヘッドランプのような黄ばみはあまり見られません。これはなぜなのでしょうか。

 ディーラーの整備士に「テールレンズが黄ばみにくい理由」を聞いたところ、「そもそもヘッドランプカバーとテールレンズとでは使われている素材が異なるため、同じ年数が経過していても劣化に差が生じます」と回答がありました。

 ヘッドランプに使われているのは「ポリカーボネート」と呼ばれるプラスチック素材です。耐衝撃・耐久性があり、軽くて加工がしやすいのが特徴で、それまでのガラス素材に代わって1980年代から自動車のヘッドランプに使われているものです。

 このように優れた特徴を持つポリカーボネートですが、紫外線や熱の影響を受けやすいという性質もあり、長く使用していると劣化し、黄ばんだり、白く変色してしまいます。

「自動車のヘッドランプが黄ばむ(白くなる)のは、ポリカーボネートの性質上、避けられません」(先述の整備士)

 一方、テールレンズには「アクリル樹脂」が使われています。アクリル樹脂はポリカーボネートよりも紫外線に強いため黄ばみにくいのが特徴です。ただし、ポリカーボネートと比べると衝撃に弱いため、「破損しやすい」という弱点があります。

 つまり、ヘッドランプカバーと異なり、紫外線に強い素材を使っているということが、テールレンズが黄ばみにくい謎の答えとなります。

 テールレンズが黄ばみにくい理由は分かりましたが、それならヘッドランプカバーもテールレンズと同じ素材を使えば、黄ばむのを防ぐことができるのではないでしょうか。

 それなのに、なぜヘッドランプカバーにはポリカーボネートが使われるのでしょうか。

 先述の整備士によると「それぞれの場所で求められるものが違うため、前後で異なる素材が使われている」とのこと。

 クルマのフロントは、跳ねて飛んできた石がぶつかるなど外部からの衝撃を受ける機会が多い箇所。多少の衝撃でもカバーが破損しにくいよう、耐衝撃・耐久性に優れたポリカーボネートが使われています。

 一方、リアはそういった衝撃を受けることは少ないため、ポリカーボネートではなくアクリル樹脂を使っているのです。

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 テールレンズが黄ばみにくい理由は、紫外線に強く黄ばみにくい素材を使用しているから、でした。

 ただし、ヘッドランプカバーと比べると衝撃に弱いため、強い衝撃が加わると割れて粉々になることがあります。

 バックする際などはテールレンズをぶつけたり擦ったりしないよう注意しましょう。