効率を追求すれば車重は軽くなるのがセオリー

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昨今のクルマに求められる性能には様々なものがありますが、特に安全性と環境性能の追求はユーザーに限らず厳しいものがあります。

四半世紀前と比べると、クルマのクリーン性能は大幅に向上していますが、これは自動車メーカーがエンジンや排気系のみならず、効率の良さを追求した結果なのではないでしょうか。

燃費やクリーン性能に寄与するもののひとつが、車両重量です。しかし、四半世紀前のクルマと比べると、実は現代のクルマの方が重い傾向にあることはご存じでしょうか。

例えば、現代のSUVブームを牽引してきたトヨタ ハリアー。初代が約1.6〜1.8tだったのに対して、現行型は1.5〜2t。昨今大ブームになっているスズキ ジムニーは、2代目末期のJA11が0.8〜0.9tだったのに、現行型JB64はなんと1t越え。

トヨタ ハリアー(現行モデル)

ハリアーはモノコックボディ、ジムニーはラダーフレームを継承しており、基本的な車体構造が大きく変わったわけではありません。

さらに、ボディ構造的には軽いはずなのに、むしろ重くなっている例もあります。

日産 エクストレイル(先代モデル)

同じくSUVブームの火付け役となった日産 テラノは約1.7tの車重がありましたが、ラダーフレーム構造だったために重量が重くなる要素がありました。

しかしその後、テラノに変わって日産SUVのフラッグシップになったエクストレイルは、モノコックボディを採用しているにも関わらず、約1.75〜1.9tに増加しています。

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安全性と環境性能の両立が重くのしかかる

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なぜ、車は重くなっているのでしょうか。実はその理由こそが、この十数年、自動車メーカーを悩ませてきたものだったのです。

環境性能と同時に、近年のクルマに求められ続けてきたのが安全性の向上でした。各メーカーは安全自動ブレーキに始まり、車両の挙動安定装置、自動追尾式のオートクルーズコントロールなど、様々な安全装置を開発・装備してきました。

こうした安全装置は、エンジン、車輪回転数、車速、Gなど、様々な車両の状態の感知が基本であり、各センサーからのデータをコンピュータ(ECU)が計算し、それを基に多様な電子デバイスを作動させるのです。

このデータのやり取りは、ハーネスと呼ばれるコードによって行われます。こうしたやり取りは、安全性能だけでなく、環境性能のためのエンジン制御にも必要になります。

各センサーは1秒間に100〜1000回も車両状態を感知し、それをECUに送ります。そしてECUは秒間25回、それを計算してデータ判断し、異常がある場合は電子デバイスに作動指令を送ります。

データを高速で送るために、ハーネスは膨大な量となり、1台の乗用車で約200kgの配線が必要となるのです。

加えて、事故時のライフスペースを確保するため、サイドドアビームやボディ補強なども、旧来のクルマより増加しています。

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