交通事故の行政処分はどうやって決まる?
交通事故の加害者が受ける行政処分の重さは、事故発生時の状況や、被害の程度などにより決まります。まず基本として、次の3つのケースでは、交通事故を起こしたドライバーに違反点数がつきます。
- 人身事故を起こした場合
- 建造物損壊にあたる事故を起こした場合
- 事故発生時にほかの交通違反を行っていた場合
人身事故とは、怪我人や死亡者が出た事故を指します。人への被害がない物損事故では、基本的に違反点数がつきません。ただし、建造物を損壊させた場合や、事故発生時に何らかの交通違反(当て逃げを含む)を行っていた場合は、物損事故も行政処分の対象となります。
人身事故の違反点数
交通事故の違反点数は、基礎点数と付加点数で構成されます。ほかの違反なしで人身事故を起こした場合だと、「安全運転義務違反」の基礎点数2点に加えて、被害者の負傷状態により次の付加点数が付されます。
事故の種別 | 専ら違反者の 不注意による事故 |
被害者の過失が 認められる事故 |
死亡事故 | 20点 | 13点 |
治療期間3ヶ月以上 または後遺障害が残る傷害事故 |
13点 | 9点 |
治療期間30日〜3ヶ月未満の傷害事故 | 9点 | 6点 |
治療期間15日〜30日未満の傷害事故 | 6点 | 4点 |
治療期間15日未満の傷害事故 | 3点 | 2点 |
被害者の不注意が事故の一因と認められる場合は、付加点数が低くなります。たとえば、被害車両の急停止が事故の原因と認められれば、付加点数の軽減を受けられるでしょう。
建造物損壊事故の違反点数
建造物損壊事故の違反点数は、次のように定められています。
専ら違反者の 不注意による事故 |
被害者の過失が 認められる事故 |
3点 | 2点 |
人身事故と同様に、建造物損壊事故にも基礎点数がつきます。たとえば、よそ見運転で建造物損壊事故を起こした場合は、安全運転義務違反の2点と建造物損壊の3点(合計5点)が加点されるでしょう。
安全運転義務違反以外の基礎点数
事故発生時に何らかの違反行為をしていた場合は、3点以上の基礎点数をつけられる可能性があります。交通事故の原因となりやすい違反行為のうち、主だったものの基礎点数を見てみましょう。
酒気帯び運転 0.25mg以上 |
25点 |
酒気帯び運転 0.25mg未満 |
13点 |
速度超過 30(高速40)〜50km/h未満 |
6点 |
速度超過 25〜30(高速40)km/h未満 |
3点 |
信号無視 | 2点 |
一時停止無視 | 2点 |
妨害運転 (あおり運転をした場合) |
25点 |
妨害運転 (あおり運転で危険が生じた場合) |
35点 |
上記のような基礎点数に加えて、事故発生後に負傷者の救護をせずに逃走した場合は、救護義務違反(ひき逃げ)の違反点数35点が上乗せされます。また、物損事故で当て逃げをした場合は、基礎点数に危険防止措置義務違反の5点が追加されます。
点数計算の基本ルール
ここで簡単に、違反点数計算の基本ルールを押さえておきましょう。
- 違反点数は3年間まで累積計算される
- 一定点数に達すると免停または免許取消しになる
- 免停・免許取消し期間経過後は前歴がつく
- 前歴の累積回数に従い免停や免許取消しの基準点が下がる
前歴のないドライバーの場合、累積点数6点で免停に、15点で免許取消しになります。交通事故で人に怪我をさせた場合は、免停以上の処分を受ける可能性が高いといえるでしょう。
【重要】免許の点数を確認する方法とは?点数がリセットされるのはいつ?
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交通事故の刑事罰はどうやって決まる?
交通事故の加害者には、行政処分とは別に刑事上の責任が問われます。刑事罰の対象となるのは基本的に人身事故の加害者であり、事故の状況や被害者の状態に応じて次のような刑罰が科されます。
処罰の種類 | 基準 | 刑罰 |
過失運転致死傷罪 | 不注意により 人を死傷させた場合に適用 |
7年以下の懲役か禁錮 もしくは100万円以下の罰金 ※被害者の傷害が軽い場合は |
過失運転致死傷 アルコール等 影響発覚免脱罪 |
アルコールや薬物の影響で 不注意による死傷事故を起こし、 かつアルコールや薬物の摂取が 発覚しないよう 工作した場合に適用 |
12年以下の懲役 |
危険運転致死傷罪 | 下記のような危険運転により 人を死傷させた場合に適用 ・アルコールや薬物の影響で |
被害者が負傷した場合は 15年以下の懲役 被害者が死亡した場合は |
過失運転致死傷罪の罰金額は、被害者の怪我の程度や、弁護活動の結果などにより変わります。つまりはケースバイケースといえますが、事例を見るかぎりは50万円までに収まる場合が多いようです。なお、懲役刑と禁錮刑については、法改正により2025年6月ごろまでに拘禁刑に一本化される見通しです。
建造物損壊に対する刑事罰
物損事故は基本的に刑事罰の対象にならないものの、建造物を損壊させた場合は話が別です。交通事故により建造物を損壊させると、道路交通法116条の規定により、6ヶ月以下の禁錮刑または10万円以下の罰金が科されます。
なお、交通事故で懲役刑や禁錮刑、罰金刑などを受けると前科がつきます。被害者との示談が成立し、不起訴処分となった場合は前科がつきません。
民事訴訟と保険について
交通事故で人や物に危害を加えると、民事訴訟により治療費や慰謝料などを請求される可能性が生じます。行政処分や刑事罰の対象にならない物損事故の場合も、物的損害の賠償を求められる可能性があります。
人身事故の賠償には自賠責保険を使えますが、物損事故には同保険が使えません。任意保険に加入していない車で物損事故を起こすと、多額の損害賠償金を直接請求される結果になりかねないので注意しましょう。