ダブルクラッチを知るために学ぶMTの構造
ダブルクラッチ自体は上記のやり方で問題なくできますが、トランスミッション内部で何が起きているのかを知るにはあまりにも情報量が少ないです。
仕組みを理解するにはマニュアル・トランスミッションの構造を理解することが不可欠となります。
ここではマニュアル・トランスミッションの構造とシンクロナイザーリングの役割を解説した上で、ダブルクラッチを読み解きます。ちょっと長いですが読んでください。
マニュアル・トランスミッションの構造
主な構成部品はシャフト類・ギア類・クラッチ類
マニュアル・トランスミッションの構成部品を大きく分類すると、シャフト類・ギア類・クラッチ類に分けることができます。実際にはこれらの部品を動かすパーツも存在しますが、ここでは割愛します。5速MTを例に見ていきましょう。
シャフト類:インプットシャフト / カウンターシャフト / アウトプットシャフト
シャフト、つまりは軸にあたるものです。クラッチとつながっているのがインプットシャフトで、インプットシャフトはその固定ギアを用いてカウンターシャフトを回転させます。そしてそのカウンターシャフトがメインシャフト(アウトプットシャフト)へ同じくギアを通じて回転を伝える仕組みです。
メインシャフトで生み出される動力は、ドライブシャフトやプロペラシャフトなどを通じてハブへ伝えられ、結果的にタイヤ(正確にはホイール)が回転します。
前輪駆動車ならドライブシャフトが使われていますし、フロントエンジンの後輪駆動車(FR車)ならドライブシャフトもプロペラシャフトも役割を担っています。
ギア類:1~5速ギアやバックギア
ギア類とはそれぞれのシャフトに固定されているギア(歯車)のことです。例えばインプットシャフトには1つのギアがありますし、メインシャフトは1~4速までの各ギア、そしてカウンターシャフトにはメインシャフトのギアそれぞれに対応するものと後退ギア、そして5速ギア等が組まれています。
クラッチ:動力伝達・遮断の役割
クラッチの役割はエンジンで生み出された動力の伝達及び遮断です。その動力はクランクシャフトからフライホイールを経由してクラッチへと導かれます。
フライホイールとクラッチの間では動力を伝達・遮断できるようになっていて、それがいわゆるクラッチを切る(クラッチペダルを踏む)ことです。
構造上、各シャフトやギアには回転差が生じます。その回転差を同調させるためには動力の伝達・遮断が必要不可欠なわけです。
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変速時にギア(シャフト)間で回転差が発生する
1~5速の各ギアは異なるギア比を持っています。この中で1速ギアはギア比が最も高く、5速ギアは最もギア比が低いです。
例えば、2速ギア・時速60kmで走行中のエンジン回転数と、3速ギア・時速60kmで走行中のエンジン回転数は、2速ギア時のほうが高いです。ギアの回転差はかくして発生します。
3速ギア・時速60kmで走行時に2速ギアへ変速(シフトダウン)を試みると、それぞれのギア回転数が異なるためこのままではギアが入りにくいです。
シンクロメッシュ機構で回転差を同調する
そこでシンクロメッシュ機構というものが採用されました。この機構は、シンクロナイザーリングと呼ばれるギアを変速先のギア(正確にはシンクロナイザーコーン)へ押し付けるものです。これにより変速先ギアの回転が下がって、ギアを入れやすくします。
シンクロナイザーリングはスリーブによってシンクロナイザーコーンへ押し付けられます。この押し付ける動作は、シフト操作によって行われています。
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シンクロナイザーリングがあるのに何故ダブルクラッチをするのか
ここまでお読みいただくと、「シンクロナイザーリングで回転差を同調できるのであれば、ダブルクラッチしなくても良いのでは」と考えるはずです。確かにそうなのですが、ダブルクラッチをすることで次の2つのメリットを得ることができます。
まず1つが、先でも少し触れたようにギアの負担軽減です。シンクロナイザーリングをシンクロナイザーコーンへ押し付けることでギアの回転を同調させることは、高速回転する金属同士をぶつけることと同じです。
そうすれば金属(つまりギアとシンクロ)は削れるますし、速度差があればあるほどたくさん削れ、その分消耗も早くなります。
ダブルクラッチでシフトダウンする時、シンクロナイザーリングはシンクロナイザーコーンへ押し付けられていません。変速先のギアの回転を上げた状態で押し付ければ、回転差がない・少ないので削れる量が少なくなります。そしてスポンスポンとギアが入るので気持ち良いです。
2つ目のメリットはシフトショック対策。これも少し述べましたが、シフトダウンする度にエンジンブレーキで前方へ揺られるのは、あまり気分がよいものではないでしょう。ダブルクラッチをすればそれも解決できます。
シフト操作の難易度は上がりますが、ダブルクラッチにはそれをするだけの恩恵があることも事実です。2000年以前のMT車を運転する際には、運転操作の楽しみも兼ねてやってみてはいかがでしょうか。
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