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土砂崩れ・土砂災害の種類と対策についてわかりやすく解説

防災ニッポン

なお、土砂災害警戒区域とは、土砂災害が発生した場合に住民の生命や身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域のことで、イエローゾーンとも呼ばれます。

また、土砂災害警戒区域の中でも特に建築物の損壊や住民の生命に危害が生じるおそれがあるエリアを「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」といいます。

避難すべきタイミング

土砂災害の避難すべきタイミングは、「土砂災害警戒情報」が発表された時です。

土砂災害警戒情報とは、大雨警報(土砂災害)の発表後、命に危険をおよぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況になったときに、市町村の避難指示の発令判断や住民の自主避難を支援するため、気象庁と都道府県が共同で発表している情報です。

土砂災害警戒情報の発表は以下の図の「避難が必要となる警戒レベル4(避難指示)」に相当します。

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引用:気象庁「土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)」

土砂災害警戒情報が発表されたら、土砂災害警戒区域外に避難する必要があります。

なお、土砂災害警戒情報の前段階となる大雨警報(土砂災害)は警戒レベル3(高齢者等避難)に相当します。

警戒レベル3では、高齢者は土砂災害警戒区域外に避難が必要となり、それ以外の人も普段の行動を見合わせたり、避難の準備をしたり、自ら避難の判断を行わなければなりません。

土砂災害(土砂崩れ)の前兆

土砂崩れには、がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)と地すべりと土石流の3種類があります。ここでは、それぞれの種類の特徴や前兆を紹介します。

がけ崩れ(急傾斜地の崩壊)

引用:神奈川県「がけ崩れとは」

 

がけ崩れは、地中にしみ込んだ水分が土の抵抗力を弱め、雨や地震などの影響によって急激に斜面が崩れ落ちることで起こります。突発的に起こりやすいことから、人家の近くで発生すると逃げ遅れるケースも多く、死者の割合が増えやすい特徴があるので注意が必要です。

がけ崩れには以下のような前兆が見られる場合があります。

・斜面に亀裂が生じる
・小石が斜面からぱらぱらと落ちる
・斜面から異様な音や地鳴りがする
・湧水がにごる
・水の吹き出しが見られる

このような現象が見られる場合はがけ崩れに要注意です。

地すべり

引用:国土交通省「地すべりとその対策」

地すべりは、斜面の一部や全部が地下水と重力の影響によりゆっくりと斜面下方に移動する現象です。地すべりは動く範囲が広いことから家や田畑、道路、鉄道などが一度に大きな被害を受けてしまいます。

地すべりには以下のような前兆が見られる場合があります。

・地鳴りがする
・地面が振動する
・山腹や地面にひび割れや亀裂、段差が発生
・舗装道路やトンネルにクラックが生じる
・建物が変化する(壁に隙間、戸の締まりが悪いなど)
・沢や井戸水などがにごる
・斜面や地面から水が吹き出す
・電柱や樹木が傾く
・山鳴りがする

このような現象が見られる場合は地すべりに要注意です。

土石流

引用:国土交通省「土石流とその対策」

土石流は、山や谷の土砂が大雨で崩れ、水と混じってどろどろになって勢いよく麓に向かって流れることで起こります。鉄砲水や山津波などは、土石流の別称です。土石流は自動車と同じくらいのスピードで谷を削りながら流れ下るため破壊力があり、家や田畑、道路が押し流されたり、人が亡くなったりするなどの被害が生じます。

土石流が発生する前には以下のような前兆が見られる場合があります。

・泥臭いニオイがする
・雨が降っているのに河川の水位が急激に下がる
・山鳴りがしたり、立ち木の裂ける音や石がぶつかりあう音がしたりする
・地鳴りがする
・川の水が濁ったり流木が流れてきたりする

このような現象が見られる場合は土石流に要注意です。

土砂災害(土砂崩れ)が起きやすい条件

ここでは、土砂崩れが起きやすい条件を紹介します。

豪雨・長雨があった

土砂崩れは豪雨や長雨によって発生することが多くあります。

大量に雨が降ると、雨が地中に浸透して土地を緩ませ、雨の期間が長くなると地中深くまで浸透するため、さらに土壌が不安定になって土砂崩れが発生しやすくなります。

土に浸透した水はすぐに乾かず、雨がやんでも土砂災害のリスクがすぐに消えないため、雨がやんだ後も大雨警報(土砂災害)や土砂災害警戒情報がしばらく発表されたままの状態になるケースがあります。

雪が多い

雪が多いと土砂崩れが発生しやすくなります。

特に春先など、気温が上がって積もっている雪が溶けてくるタイミングでは、溶けた雪が地表に達してそのまま地中にしみ込むことで、大雨が降ったときのような状態になります。

気温が急上昇して雪が溶けているときは、土砂崩れのリスクが高まるため要注意です。

リアルタイムの土砂災害リスクはキキクルを活用しよう

リアルタイムの土砂災害リスクは気象庁が発表しているキキクルで把握することができます。

キキクルとは、大雨による洪水・土砂災害などの危険度の高まりを地図上で確認できる危険度分布のことです。「黄色は警戒レベル2相当」「赤色は警戒レベル3相当」「黒色は警戒レベル5相当」のように警戒レベルとリンクしています。

引用:気象庁「キキクル」

上の図では、三重県の黄色くなっているエリアが警戒レベル2相当であることが確認できます。警戒レベル2は土砂災害への注意が必要な段階で、ハザードマップで避難行動を確認しておく必要があります。

赤色になったら「高齢者等避難」、紫色になったら「避難指示」のレベルであるため、土砂災害警戒区域から離れて避難することが必要です。

パソコンやスマホで「キキクル」と検索すると、誰でも簡単にリアルタイムの土砂災害に対する危険度を把握できます。

キキクルは土砂災害、浸水、洪水の3種類あるため、土砂災害のマークを選択しておきましょう。

引用:気象庁「キキクル」

また、実際に活用する際には色の推移にも注目しましょう。

例えば、同じ黄色でも白色から黄色になっている場合は時間とともに危険度が高まっているといえますし、赤色から黄色になっている場合は危険度が下がっていることになります。

危険度が高まっている場合は、特に早めの避難準備や行動が必要です。

また、キキクルは雨雲レーダーや警報、土砂災害警戒情報などの情報もあわせて活用することをおすすめします。

土砂災害の発生件数

国土交通省によると令和4年における土砂災害は42道府県で795件発生し、そのうち8月と9月だけで525件も発生しています。

平成24年から令和3年までの年間(8月9月)の平均発生件数は366件です。土砂災害は毎年のように全国で多く発生しているため、決して珍しい災害ではありません。

土砂災害のリスクを正しく把握し、日ごろから備えることが大切です。

防災グッズを日ごろから準備しよう

土砂災害が発生すると家屋の倒壊が発生したり、道路が寸断されて孤立したり、ライフラインが止まって電気や水が使えなくなったりする可能性があります。

このような状況に備えるためにも、防災グッズを日ごろから準備しておくことが大切です。

土砂災害では最低3日分、できれば7日分は物資が届かないことも想定して防災グッズを備えましょう。

以下は備えておきたい防災グッズです。

・水(1人1日3ℓ)
・非常食:乾パン、クラッカー、レトルト食品、缶詰等
・衛生用品:医薬品、マスク、生理用品等、簡易トイレ
・熱中症対策:乾電池式のハンディファン、冷却タオル、塩タブレット、経口補水系
・水のう袋
・懐中電灯
・モバイルバッテリー
・ポータブル電源
・土のう

8月9月に土砂災害が頻発していることからもわかるように、土砂災害は暑い時期に起こりやすい特徴があります。そのため、熱中症対策に関連する防災グッズの備えも必要です。

また、土のうを設置することで、浸水や土砂災害が発生したときに家屋への水や土砂の侵入を防ぐこともできます。

土のうはホームセンターで購入するか、自治体によっては配布している場合もあります。まずは住んでいる地域の市区町村に問い合わせてみましょう。

まとめ

土砂災害に備えるためにも、まずは自宅が土砂災害警戒区域に入っているかどうか調べておきましょう。

土砂災害の危険性がある場合は、避難情報が発表されたときに迅速な行動が取れるように、避難場所までのルートを事前にチェックし、防災グッズも備えておくことが大切です。

土砂災害は毎年発生している災害です。防災意識をしっかりと持って備えましょう。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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