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ヒートアイランドで都市の乾燥化が止まらない!どうすればいい?

防災ニッポン

なお、「地球温暖化」は大気中の二酸化炭素などの温室効果が増えることが原因で気温が上昇する現象であるのに対し、ヒートアイランドは人工的な構造物や排熱によって、都市部を中心に気温が上昇する現象であるという違いがあります。

どちらも人間活動によって起こる現象で、ヒートアイランド現象は地球温暖化の要因の1つといえるでしょう。また、ヒートアイランドは都市部の気温が上がるだけでなく、乾燥化の原因にもなります。

ヒートアイランドによる都市部の乾燥化と暑さの関係

引用:気象庁「平均相対湿度の長期変化傾向」
13地点:網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、銚子、境、浜田、彦根、多度津、名瀬、石垣島

上の図は、ヒートアイランドが進んでいる大都市6地点と、都市化の影響が比較的小さいとみられている13地点の、平均の都市化率と平均相対湿度の変化を表しており、各都市においてこの100年間でどれくらい相対湿度が下がっているか、つまり乾燥化が進んでいるかを季節ごとにまとめたものです。

都市化率が低い13地点の平均に比べ、都市化率が高い大都市ほど湿度の低下率も高いことがわかります。

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都市化率とは、観測地点の半径7kmの円内が「建物用地・道路・鉄道」などの人工被覆でどのくらい覆われているかを%で表したものです。

図を見てもわかるように、特に都市化することで、春や冬の乾燥化が進んでいることがわかります。

季節ごとに見た場合、ほかの季節に比べて夏の湿度低下はゆるやかです。6月~7月は梅雨で雨の日が多く、ヒートアイランドによる湿度の低下が起こりにくいことが理由であると考えられます。

引用:気象庁「大都市及び都市化の影響が比較的小さいとみられる13地点平均の月平均相対湿度の長期変化傾向」

ただし、梅雨明け後の8月を見ると湿度の低下率が大きくなっていることからもわかるように、夏(特に8月)も都市部を中心に乾燥化が進んでいるといえるでしょう。

ヒートアイランドで乾燥化が進む理由とは

ヒートアイランドでの乾燥化は、気温の上昇が大きく影響しています。気象庁で用いられている空気の乾燥具合を示す「相対湿度」とは、「空気中に含むことができる水蒸気量(飽和水蒸気量)に対し、実際に含まれている水蒸気の割合」を示します。

相対湿度は以下の計算式で求められます。

「相対湿度=水蒸気量/飽和水蒸気量」

飽和水蒸気量は気温によって異なり、気温が高いほど大きくなります。

例えば、気温が25℃なら1㎥あたりの空気中に最大で約23.0gの水蒸気量を含めますが、30℃になると最大で約30gの水蒸気量を含めるというものです。

仮にもともと空気1㎥あたりに20gの水蒸気があったとします。

このケースだと気温25℃なら湿度は「20g÷23g(飽和水蒸気量)×100%=約87%」ですが、気温30℃なら湿度は「20g÷30(飽和水蒸気量)×100%=約67%」になります。

気温が5℃上昇するだけで湿度が20%も下がることになります。

「気温が上がると湿度も上がるのでは?」と思われるかもしれません。
晴れた日の早朝をイメージするとわかりやすいですが、気温が下がる早朝に窓や車が結露していることがあります。

これは気温の低下と共に飽和水蒸気量も低下(湿度が上昇)し、やがて湿度が100%を越えることによって、空気中の水蒸気が水として出現したというわけです。

このようにもともと存在する水蒸気量が変わらなければ、「気温が上がると湿度は下がり、気温が下がると湿度は上がる」という性質があります。

また、植物には蒸散といって水蒸気を放出する働きがありますが、都市化によって植物が少なくなると蒸散が行われなくなり、空気中の水蒸気量そのものが減少して乾燥化が進みます。

ヒートアイランドによって起こりうること

ヒートアイランドは、都市部の集中豪雨や熱中症リスクを高める可能性があります。
それぞれ解説します。

集中豪雨が増える可能性がある

集中豪雨の発生回数は年々増加しており、1時間80mm以上や3時間降水量150mm以上など強度の強い雨は1980年頃に比べて約2倍です。

引用:気象庁「全国(アメダス)の1時間降水量50mm以上、80mm以上、100mm以上の年間発生回数」

これらの原因となっているのは主に地球温暖化であり、都市部では春から夏の夕方を中心に降水量が増加しているというデータもあります。

これはヒートアイランドによって風の流れが変わることや、積乱雲を生成する上昇流の強化が一因として考えられます。

熱中症が増える可能性がある

ヒートアイランドによる気温上昇は、熱中症リスクを高めることにもつながります。

また、ヒートアイランドが起こる都市部の路面は地面が熱を吸収しやすい「アスファルト」が多く、真夏の地面温度は60℃に達することもあり、気温以上に暑く感じます。
さらに、ビルや高層の建物が多い都市部は風通しが悪く、体感温度も高くなります。

このようにヒートアイランドが起こる都市部では気温だけでなく体感温度も高くなりやすいため、熱中症への備えがより重要です。

私たち自身も気温上昇を促進しないために、熱中症に注意しながらエアコン温度を適度に保ったり、自動車の運転時には無駄なアイドリングを避けたりするなどの対策も大切です。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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