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体育会系人材の弱みとは?元慶大4番打者が語るキャリアマネジメントの考え方

パラサポWEB

こうして自身のキャリアの軸を「スポーツ選手の強みを発掘し、それを最大限に活用すること」と定めた木下さんは、さらにその領域を自身の原点でもある「野球」に絞って専門性を高めようと考え、起業し株式会社ナイスガイ・パートナーズを設立。プロ野球選手を中心に、プロアスリートのキャリアサポート業務やマネジメント業務を行い、引退を控える彼らの今後の人生そのものを支援している。

自身もスポーツに打ち込んできたからこそ経験できた、『ああすればよかった』という反省とこれまでのPR経験を活かし、選手たちがいつまでも輝き続けられるようなキャリア支援を行うことは、木下さんにしかできない特技のひとつとなっている。そのうえで木下さんは、次のようなことを伝えたいと強く語る。

「それは体育会系人材には企業から高く評価される強みがある一方、特有の弱みもあるという傾向です。目標を与えられたら、それを達成する能力は非常に高いのに、目標を自ら定めるのが苦手なことがある。特に一流のアスリートとして頑張ってきた人たちは、監督やコーチがお膳立てしてくれたレールの上を一つひとつゴールをクリアしながら走ってきているので、そもそも目標を自分で決めるという経験を積んでいないケースも多いです」(木下さん)

かくいう、木下さん自身も小中高大とその時々で与えられたゴールを達成しながら一貫して野球に取り組み、そのまま「みんなが良い」という企業にストレートに就職するのが正しい道だと思っていたそうだ。

「でも、本当は全然そんなことなくて、遠回りをしながらでも、肥やしとなるような失敗経験をたくさん積んだ方が、この変化の激しい不確実な社会では強いと思うんです。特に若いうちは、留学など通じて異文化や異分野に触れ、自分の実力のなさを知る機会が大切。それにより視野がグッと広がり、『自分はどういう人間なんだろう?』『何ができるんだろう?』『何がしたいんだろう?』『どんな人になりたいんだろう?』と模索することで、進むべき目標が明確に見え、自分の本当の適性もわかるようなりますから」(木下さん)

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体育会系人材にはスポーツ経験を通じて獲得した強みと合わせて、こうした弱みについても分析してほしいと語る木下さん。「だから、部活動に取り組む学生でも途中で自分の限界を知って競技転向し、新天地で結果を出せた人材は強いと思います。自分の強みを自身で分析し、それを活かすにはどんな競技を選べばよいか、自分の頭で考えた経験をもっているはずですから」と強調する。

失敗を恐れ、安易に正解を求める今の時代にこそ必要な、体育会系人材の真の「強み」

体育会系人材の酸いも甘いも知り尽くした木下さんだが、最後にあらためてその強みについて尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「スポーツの価値というのは、自己研鑽だったり、勝利を掴むための努力だったり、いろいろあると思うんですが、私はかけがえのない仲間がつくれたり、チームワークが築けたりと、人とのつながりを深められるところにあると思っています。というのも、社会に出てから取り組む仕事のほとんどは人と協力しながら進めるものですし、生成AIなどのテクノロジーが進化するこれからの世の中では、よりいっそう人との関わり合いの中でしか人間がやるべき仕事は生まれないはずです。そんなときに必要とされるのは、人間関係を築くことができるコミュニケーション能力。実はそれこそが、体育会系人材がスポーツ経験を通じて獲得している一番の武器ではないかと思っているんです」(木下さん)

事実、木下さんも学生時代の野球生活から社会に出てからの適職探しまで、決断に悩むことも多かったそうだが、その度に人に助けられ、ここまで来れたという。「恩師や同期、先輩や後輩など、人に恵まれたことが私の誇りです」と木下さんは語る。

そして続けて、「でも、それ(人に恵まれる)には人として実直でいることが大切かもしれません」と強調する。

「体育会系人材の時に正直過ぎとも感じる誠実さや礼儀正しさは、これまでの積み重ねがもたらす特性だからこそ、人間関係を構築するうえでのアドバンテージになるんです。私の会社もナイスガイ・パートナーズと命名しましたが、そこにはそうした意味合いやお互いを尊重し合えるナイスガイとパートナーシップを組みたいという想いが込められているんです」(木下さん)

体育会系人材の強みと聞くと、ストレス耐性の高さや鍛え抜いた体力といった表面的なことばかりが思い浮かびがちだ。ところが、慶応大学野球部で実績を残し、それを武器に社会に出てからもさまざまな経験を積んできた木下さんが考える真の強みとは、意外にも人とのつながりを深められるコミュニケーション能力やそれを円滑にする誠実さや実直さだった。

仕事や人生に王道なし。失敗を過度に恐れ、安易に正解を求めがちな今の時代だからこそ、やはり必要なのは「正攻法でいく地道さ」なのかもしれない。そんな大切なことに気づかせてくれる素晴らしいインタビューとなった。

text by Jun Takayanagi(Parasapo Lab)
photo by Yoshio Yoshida

【前編はこちら!】

体育会系の王道を歩んだからこそ見えた道!高橋由伸と肩を並べた慶大の4番打者が、キャリアアドバイザーという天職に出会うまで
https://www.parasapo.tokyo/topics/110400


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