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いじめ防止の伝え方。ラグビー選手の熱血指導が子供の心を動かす理由

パラサポWEB

「いじめ」が深刻な社会問題としてとらえられるようになったのは、1980年代後半からだと言われている。それから40年あまり、残念なことに問題が解決する兆しは見えていない。そんな中「いじめはあかん!」というストレートなキーワードを掲げ、いじめ防止の出張授業を行っているのが、ジャパンラグビーリーグワンに所属する三重ホンダヒートだ。子どもたちに、何をどう伝えているのか、その熱い授業について取材した。

何があっても「いじめはあかん!」

三重ホンダヒートでは、2017年頃から、主に地元三重県鈴鹿市の小中学生を中心とした出張授業「ヒート授業」を行っていた。これは「ラグビーを通じてチームワークを学ぶ」ことを目的としている。この授業の名前はチーム名の「ヒート」からきているのだが、その由来についてチームの公式サイトにはこんな風に記されている。

~HEATの由来~
全ての原点である心、すなわち気持ちが熱くなければ真の強さは得られない!
そして三重ホンダヒートに関わる全ての人達とその“熱さ”を共に感じたい。

(三重ホンダヒート公式サイトより)

今回の取材でインタビューに答えてくれた「ヒート授業」の責任者・上村素之氏は、初対面でもその熱を感じるほどの熱い男だった。この上村氏こそ、ヒート授業に「いじめ防止」の要素を盛り込んだ張本人だ。

右端、黒いウェアで拳を上げているのが、上村氏

「ヒート授業といじめ防止の活動は2020年頃からやっています。新聞などでいじめが相変わらずなくならないとか、三重県でもいじめを苦にした自殺があったなどというニュースを見て、この問題をなんとかしたいと思うようになりました。ラグビー憲章では『品位・情熱・結束・規律・尊重』という5つの言葉を掲げています。また、ホンダヒートの母体となる本田技研工業(株)のフィロソフィーにも『人間尊重』という言葉があります。僕は人がお互いに違いを認めて尊重しあえば、いじめはなくなると思うんです。ですから、ヒート授業にもいじめ防止のテーマを組み入れて試行錯誤を続けているところです」(上村氏、以下同)

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上村氏はいじめ防止に取り組もうと考えたものの、当初は何をどうやって始めたらいいのか悩んだそうだ。そこで、高校時代の恩師を訪ね一緒に山登りをしたときのこと。

「前を歩いていた恩師が突然振り返って『いじめは絶対にあかん!』ってすごい熱量で怒鳴ったんです。それを見て、あ、これやな! と思いました。まずは大人が本気で、『いじめはあかん!』と伝えることだと」

何があってもいじめは駄目だと伝えること、それがいじめ防止のヒート授業の根底にはある。

何を教えるかではなく、どう教えるか

ホンダヒートの選手も一緒になって行うミニゲーム

いじめが駄目だと伝えるのは、当たり前のことだ。しかし、どれだけ多くの大人がそれを本気で子どもたちに伝えているだろうか。上村氏の本気度は想像をはるかに超えていた。ヒート授業は基本的にはホンダヒートの現役選手が5~6人と、上村さんをはじめとするスタッフが鈴鹿市の小中学校を訪れて行う。参加する子どもの人数や学校の状況などによって、内容や授業時間は毎回変わるそうだが、短くても1時間半ほどが望ましいという。授業の内容は、最初に選手と一緒に体を動かすミニゲームに次々とチャレンジ。チーム戦では、作戦会議の時間を設け、結束を深める。その後、いじめ防止を訴える選手による寸劇などを見てもらうなど道徳的な授業が行われる。はたしてそれだけで、子どもは真剣に話を聞いてくれますか? と聞いたところ、上村氏はいきなり「わーー!!」と大声をあげた。びっくりして上村氏を見ると「ね、僕のこと見るでしょ?」と満面の笑み。

「まずは、『こんにちはー!』と元気よく挨拶したり、『わっ!』と、子どもたちが驚くような声を出したりしてこちらに注意を引き付けます。注意がこちらに向いたところで、授業の冒頭に、一流の人間を目指さなあかんという話をします。一流と二流の違いは、一流の人は失敗した時に『なにくそ!』って考えて次に向かう。でも、二流の人間は、失敗した時にヘラヘラ笑ってごまかす。そういう人には成長はないし、5年後、10年後に、一流と二流では大きな差がつくと。だから、今日の授業も一生懸命本気でやって一流を目指してください、と話すんです」

これを文字で読むと「へえ、そうか」くらいにしか思わないかもしれないが、取材中に関西弁で語る上村さんの口調はとにかく元気で熱い。この熱い語りを聞いた子どもたちは、冒頭で心を掴まれるようだ。実際、ヒート授業を受けた子どもたちの感想の中にはこんなものがあった。

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