「WE ACTION」のイベントに参加した子どもたちが選手と触れあい「自分も選手たちのようになりたい」と言ってくれることもあるのだとか。サッカー選手は競技で私たちを楽しませてくれるだけでなく、生き方そのものが、子どもたちにとって憧れの存在、ありたい姿になっているのかもしれない。
親子で訪れたい、渋谷に誕生したWEリーグの情報発信基地
渋谷、明治通り沿いに誕生した「Home of .WE」。カラフルな外観が目を引くJリーグには以前から「シャレン!」と呼ばれる活動がある。
シャレン!(社会連携活動)とは?
社会課題や共通のテーマ ( 教育、ダイバーシティ、まちづくり、健康、世代間交流など ) に、地域の人・企業や団体(営利・非営利問わず)・自治体・学校などとJリーグ・Jクラブが連携して、取り組む活動です。
(シャレン! 公式サイトより)
「Jリーグのこうした活動はテレビの全国放送などで紹介される機会は多くありませんが、地域に絞って見るとまた違ってきます。たとえば私の地元の長崎ですと、テレビのローカル放送では、長崎のサッカークラブのニュースはトップ扱いで、みんながその話題を当たり前にしていたりします。ただ、Jリーグは(J1、J2、J3合わせて)全国に60のクラブがあって、それぞれホームタウン活動をしてファンとの交流をはかっています。その点、WEリーグは12チームしかないので、Jリーグと同じように認知度をあげていくのは難しい状況です」
「Home of .WE」では、さまざまな情報を発信するほか、オリジナルグッズの販売などもそこで2023年10月28日に渋谷の明治通り沿いに誕生したのがWEリーグの情報発信拠点「Home of .WE」だ。カラフルで親しみやすい外観のこの場所には、サッカーファンのみならず連日多くの人が訪れるという。
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「若い人だったり、外国の方だったり、いろんな人たちが集う渋谷という場所で、女子サッカーのことを知ってもらえるような発信ができたらと考えています。『ちがいを ちからに 変える街。』というキャッチフレーズで多様性や国際性に関するさまざまな取り組みをしている渋谷区と連携し、勉強させていただきながら、渋谷区がWEリーグのホームタウンとして根付いてくれたらいいですね。そうしたら一気に女子サッカーの魅力が広がるんじゃないかなと期待しています」
アクセスしやすい渋谷だからこそ、親子で女子サッカー観戦を楽しむようになったら、ぜひ訪れたいスポットの一つだ。
女子サッカー界を日本の女性活躍のロールモデルに
WEリーグの優勝トロフィー。女性の障壁として例えられる「ガラスの天井」から着想を得たガラス製日本の女子プロスポーツは、ゴルフやテニスなどの個人競技は以前からあったが、チームスポーツにおいては現在サッカーのみだ。つまりWEリーグはサッカー界だけでなく、日本中の女子アスリートからも多くの期待を寄せられているのだ。しかし日本のジェンダーギャップ指数の低さからも分かるように、女子アスリートの地位を向上することは簡単なことではない。
「世界大会の移動は飛行機の座席が男子はビジネスクラスなのに、女子はなでしこジャパンがワールドカップで優勝した時でさえも、エコノミークラスだったといった差がありました。また、賃金格差も課題になっていますが、FIFAや他の国のリーグなど世界に目を向けると、その差をなくしていこうという動きがあります。日本の女子サッカーは世界の中でもトップクラスの競技力なので、同じような動きがあるべきだと思います。しかし、日本の文化を考えると、そんなことを言うのは女性らしくないなどといった空気があって、まだまだ当事者たちは声をあげづらいと思います」
この問題はサッカーやスポーツに限らず日本全体にある経営層に女性の数が圧倒的に少ないという問題が関係していると髙田さんは言う。
「サッカークラブに限らず日本全体を見たときに、経営で意思決定をする際に女性の目線が少ないという課題があります。ですから、WEリーグへの参入基準の中に意思決定者、役員クラスの中に必ず女性を1人入れること、というのをお願いしていますが、一般社会と同じでそう簡単なことではないようです。ただ選手たち自身はのびのびとプレーしていますし、男子の選手も女子選手を仲間として受け入れてくれています。ですから、もっとJリーグと交流を深めて、Jリーグ選手だけでなくJリーグのファンなど関連するすべての人に、女子サッカーを当たり前に受け入れていただけるようにすることが重要だと思っています」
こうした中、2020年からJFAとWEリーグが協力し、サッカー界・スポーツ界を牽引する女性役員・経営層の育成を目的として「女性リーダーシッププログラム」が開設された。またつい先日、“女子アスリートが安心・安全に競技ができる環境を整える”をテーマにしたグループワークショップを行うなど、女性が活躍できる社会を目指した試みも積極的に行われている。
WEリーグクラブスタッフ、WEリーグパートナー企業、他競技団体、WEリーグ事務局スタッフ等が“女子アスリートが安心・安全に競技ができる環境を整える”をテーマに話し合った第6回 WE ACTION MEETING「やはりサッカー界も女性が圧倒的に少ないので、少しでもスキルアップをする機会を設けることによって、関わってくれる女性たちが自信を持って仕事をしていただけるように、ということでやっています。また、WEリーグの理念に『一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する』という一文があるんですが、選手たち一人ひとりのキャリアにフォーカスして、多様な生き方をしている選手たちがいることを発信しようという企画も進行中です」
性別に関係なく、一人ひとりが生き生きと輝ける社会。WEリーグの選手たちが、そんな社会のロールモデルとなるよう、2024年もさまざまな活動を続けていくとのこと。ぜひその活動に注目したい。
パリ2024オリンピックの女子サッカーアジア最終予選が2月24日、28日の2日間にわたって行われる。24日の会場は朝鮮民主主義人民共和国だが、28日の会場は東京の国立競技場。ファンの応援はなによりも選手たちの力になる。髙田さんは「ぜひ、国立競技場に足を運んで、なでしこジャパンを応援してほしい」という。パリオリンピックの切符を掴む瞬間を目撃できるかもしれないこの機会、女子サッカーの目指す未来に思いを馳せながら、選手たちのプレーをご覧になってみてはいかがだろうか。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:WEリーグ