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冬に高潮は起こる? 気候変動で被害が増える可能性も!

防災ニッポン

参考:東京(5年平均潮位)稚内(5年平均潮位)鹿児島(5年平均潮位)

東京、稚内、鹿児島の月別の平均潮位です。潮位は8月~9月にもっとも高くなり、冬にかけて下がっているのが分かります。

夏から秋にかけて潮位が高くなるのは、ほかの季節に比べて気圧が低いことや、海水温が高く海水が膨張するためです。

本来冬は、潮位が低いため高潮が起こりにくい季節ですが、爆弾低気圧の接近や通過によって潮位が異常に上昇し、高潮被害が発生するケースがあります。

冬の北海道で発生した高潮

北海道を中心に、冬の爆弾低気圧によって、過去に以下のような高潮災害が発生しています。

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爆弾低気圧とは、中心気圧が24時間でおよそ24hPa以上低下する低気圧のことです。以下の天気図をご覧ください。

参考:気象庁「日々の天気図 2021年2月」

2021年2月に北海道で高潮被害をもたらした際の天気図です。14日時点では中国大陸と太平洋に低気圧Aと低気圧Bがあります。翌日の2月15日には発達しながらそれぞれ日本海北部と紀伊半島沖まで進み、2月16日には二つの低気圧が合体して気圧は946hPaまで下がっています。

このように爆弾低気圧は日本付近で発達しながら東に進み、北海道あたりで最も発達するため、特に気圧が低くなり風も強く吹きやすい北海道で、高潮被害が多くなります。

今後は冬の高潮が増える可能性も

冬の高潮は北海道で多く発生していますが、今後は本州でも爆弾低気圧を原因とする冬の高潮被害が増える可能性があります。

冬の高潮は「潮位の上昇」「気圧の低下」「暴風」の3つの条件が重なると発生します。現在、地球温暖化によって世界的に海面水位が上昇しており、日本でも1980年頃から上昇傾向にあります。

20世紀末を基準とした21世紀末には、気温が4℃上昇した場合に0.71m、2℃上昇した場合に0.39mの海面水位上昇が予想されています。

また、低気圧の中心の東側では南から暖かい風が吹き、低気圧中心の西側では北からの冷たい風が吹いています。この暖かい空気と冷たい空気の温度差が大きいほど低気圧は発達します。地球温暖化が進んで極端に暖かい空気が入り込むと低気圧が発達し、大幅な気圧低下や暴風をもたらすことで高潮の可能性が高まります。

冬の高潮に備えるポイント

冬の高潮で特に注意したいポイントは寒さと期間の長さです。冬の高潮をもたらす爆弾低気圧は、通過前だと暖かい空気に覆われますが、通過すると寒気が流れ込んで真冬の気温になります。

このような状況下で道路冠水や床上浸水が発生し、さらに停電が発生すると、暖を取ることができずに凍死するリスクが高まります。

また、爆弾低気圧は北海道付近で減速・停滞したのち、数日以上にわたって暴風雨や暴風雪をもたらすことも多いため、被害が長期化しやすい点にも注意しなければなりません。

冬の高潮への備えは、ハザードマップで自宅や勤務先の高潮危険度をチェック、避難場所や避難経路を確認、災害が起こった時には迅速に避難ができるようにしておきましょう。また、毛布や防寒具など、寒さ対策も意識して防災用品を備えておくことも大切です。

爆弾低気圧による高潮は、津波のようにいきなり発生するものではありません。数日前から気象情報やニュースで注意喚起が行われるため、これらの情報をもとに正しく行動すれば備えることができます。

一方、冬の高潮のように事例が少ない災害だと「大したことがない」「これまでなかったから大丈夫」など安易に考えてしまいがちですが、気候変動によっていつ何が起こってもおかしくない状況にあります。自分は大丈夫という気持ちは持たず、気象情報や避難情報を確認して適切な避難行動を取るよう心がけましょう。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

<関連する記事はこちら>
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