太平洋側よりの内陸に位置する宇都宮と、日本海側に位置する金沢の雷日数を月別で見てみましょう。
引用:気象庁「月別の雷日数」
宇都宮では夏に雷が集中し冬に雷がほとんど発生していませんが、日本海側に位置する金沢では冬に雷が多く発生しています。
冬の雷をもたらす雪雲は日本海で発生し、冷たい北風~西風で日本海側に運ばれます。しかし、雪雲の背が低いことから山地を超えることができず、太平洋側には雲が届かないため、冬の太平洋側ではほとんど雷が発生しません。
上記を踏まえて、1970年から2023年までの雷日数の変化を紹介します。
日本海側(金沢)では1月、8月とも雷日数が増加
広告の後にも続きます
まずは日本海側に位置する金沢における1月の雷日数の変化です。(以下、気象庁「過去の気象データ」を参考にグラフ作成)
1月は2000年を超えたあたりから雷日数が増えていることがわかります。
8月は2003年を超えたあたりから雷日数が増えており、2020年以降は急上昇しています。
日本海側(秋田)の8月の雷日数は2020年以降急上昇
次に日本海側に位置する秋田における1月の雷日数の変化です。
1月は2000年を超えたあたりから雷日数が増えています。
8月は大きな変化はありませんが、2020年以降は急上昇しています。
太平洋側(東京)でも8月の日数は増加
太平洋側に位置する東京における1月の雷日数の変化です。
1月はほとんど雷が発生していません。
8月は全体を通してゆるやかに雷日数が増えています。
このように夏は日本海側・太平洋側とも、冬は日本海側を中心に雷日数が増えています。日本海側で夏の雷と冬の雷がそれぞれ増えているため、年間で見ると太平洋側よりも日本海側の方が雷日数の増加率が大きくなります。
また、太平洋側も夏の雷日数が増加傾向にあるため注意が必要です。
雷の増加の背景には気温上昇が
雷の増加には、日本の平均気温の上昇が大きく影響しています。気温が上昇すると発達した積乱雲が生じやすくなるため、雷日数が増えます。以下の画像は日本の年平均気温偏差です。
夏に雷をもたらす積乱雲は太陽で地表が熱されて上昇気流が発生することで生じ、冬に雷をもたらす積乱雲は日本海の海水温度と季節風との温度差から生じる上昇流によって作られます。
また、夏の気温が高いことで冬になっても日本海の水温が十分に下がりきらず、その上に冷たい季節風が吹き、大気の状態が不安定になって冬の積乱雲の発達につながります。
今後も気温の上昇が続けば、雷のリスクは高くなるといえるでしょう。
雷に備えるためにできること
雷は積乱雲の位置次第でどこにでも落ちる可能性があります。特に高いところに落ちやすい特徴がありますが、以下のように開けた場所や高いところでは、できるだけ早く安全な場所に避難することが大切です。
・グラウンド
・ゴルフ場
・屋外プール
・堤防
・砂浜
・海上
・山道
・尾根
比較的安全な場所は、鉄筋コンクリートの建築物、自動車、バス、列車です。木造住宅も中は安全ですが、感電のリスクがあるため電気器具や天井・壁からは1m以上離れるよう気をつけましょう。
屋外にいる場合は電柱・煙突・鉄塔・建物などの高い建物のてっぺんを45度以上の角度で見上げる範囲で、その物体から4m以上離れたところで姿勢を低くして雷が落ち着くのを待ちます。
構造物がなければしゃがんで両耳をふさぎ、つま先立ちを!
周囲に構造物がない場合は地面にしゃがんで頭を下げて姿勢を低くし、両手で両耳をふさぎながら、両足のかかと同士をくっつけてつま先立ちをします。
耳をふさぐのは雷鳴から耳を守るため、つま先立ちをするのは足元からの電流を最小限に防ぐためです。
引用:NHK「雷しゃがみ」
また、雷注意報が出ているときや周囲に黒い雲がある場合、雷鳴が聞こえるような場合は早めに安全な場所に避難することも大切です。
リアルタイムの雷情報がわかる気象庁の雷ナウキャストも参考にしながら備えましょう。
〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。
<関連する記事はこちら>
野外レジャーに潜む災害リスク!海、山、川別押さえておきたいポイント