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Bリーグ選手が試合でピンクのバッシュを履き続ける理由とは?

パラサポWEB

こうした草の根的な活動を始めて5年が経ち、今年は6回目のシーズンを迎える。その間にさまざまな変化があったという。

「僕はもともと、バッシュが大好きで派手な色のものを履くことがあったので、ファンの方々も最初は『また派手な色のバッシュを履いてるな~』とか『ピンクのバッシュ可愛い』といった反応がほとんどでした。でも、最近は、10月がピンクリボン月間だということを初めて知ったとか、乳がん検診の大切さを改めて知ったという声も聞くようになりました」

さらに、この活動をきっかけに乳がん検診を受けたところ自身が乳がんであることが分かった、あるいは家族に検診を勧めたところ乳がんを早期発見できたという人から、感謝のメールが届くこともあるそうだ。

「ピンクリボン活動を知らず、あのまま検診をしていなかったら、早期発見できずに悪化していたかもしれない。検診を受けるきっかけを作ってくれて感謝していますという連絡をもらったこともあります。病気になってつらいのに、わざわざメッセージを送ってくださった方には、なんと返事をしたらいいのか分からない時もあるんですが、それでも『早期発見できました、ありがとう』と言っていただけると、この活動をしていて良かったと実感しますし、これからも1人でも多くの人に伝えて早期発見につながったらいいなと思います」

10月にピンクのバッシュを履くということは、乳がん検診の重要性を広めるだけでなく、実はすでに乳がん検診を定期的に受けている人たちにも役だっているそうだ。なぜなら、ザック選手がピンクのバッシュを履いているのを見て「ピンクリボン月間だから、検診を受けなくちゃ」と、リマインドになっているからだ。

おすすめは乳がん検診デート

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ピンクリボン活動発祥の地、アメリカでは10月になると、各地でセミナーやシンポジウムなどさまざまなイベントが行われるという。その結果、アメリカの1989年から2020年における乳がんによる死亡率は、トータルで43%も低下したという。一方日本では全体の患者数は欧米に比べて少ないものの、患者数や死亡率は年々増加している。

厚生労働省 第82回がん対策推進協議会資料「がん年齢調整死亡率の国際比較」より

これにはさまざまな要因があるが、ひとつには諸外国に比べて乳がん検診の受診率が未だに多くないということがある。

「アメリカでは10月は乳がん検診に行こうというのが、当たり前になってきています。たとえば、ショッピングモールの一角に乳がん検診用の車両が駐められ、場所によっては無料で検診できたりします。日本でも、わざわざ病院に行くのではなく、そういう気楽に行ける場所などで検診ができるようになるといいですよね。たとえば、女性が一人で悩むのではなく、男性のパートナーが、一緒に行こうよと誘って映画デートをして、その帰りに検診に寄るというように、検診をデートプランに組み込むくらい普通のことになるといいんじゃないでしょうか。それに乳がんは女性だけでなく、男性もなる可能性がありますから、誰もが他人事じゃなくて、みんなが気軽に乳がん検診について話したり、検診を受けたりできたらいいなと思います」

ザック選手は2021年8月に元バスケットボール選手の石原愛子さんと結婚した。母親やお姉さんに加え、大切なパートナーができたことで、ますますピンクリボン活動の大切さを感じているという。家族はもちろん、ファンやその家族のためにも、これからもずっとピンクリボン活動を続けていきたいと話してくれた。

まずは知ることから。自分自身と大切な人を守ろう

ザック選手のパートナーである愛子さんも、当初はピンクリボン活動に関する知識はほとんどなかったそうだ。それでもザック選手を通して、その重要性を知ると「とっても素敵な活動だね」と、応援し協力してくれるようになったという。

「知らないことは、悪いことではないですよね。誰だって最初は知らないですし、それが当たり前です。でも早期発見の重要性、だから検診を受けた方がいいということ、どこでどんな検診を受けられるのかといったことを知るのはいいことですし、それを広めることで、多くの命が救われるのだとしたら、より多くの人に知ってもらえるように、これからも活動をしたいと思っています。スポーツ選手は、多くの人に注目され応援してもらえる舞台に立たせてもらっているわけですから、それを活かさなきゃいけないと思うんです」

そういうザック選手にとって、ピンクリボン活動は「やらなくてはいけないこと」ではなく、プロスポーツ選手である自分を支えてくれている関係者やファンに対する恩返しでもあるのだそうだ。今年のBリーグは10月5日に開幕する。ちょうどピンクリボン月間中なので、早速ピンクのバスケットボールシューズ履いてプレーするザック選手を見ることができそうだ。見てくれる人が元気になるようなプレーをしたいと意気込みを語ってくれたザック選手の今シーズンの活躍と、その足下に注目したい。

ザック選手の所属するアルバルク東京では、ザック選手の活動もきっかけとなり、運営会社の女性健康診断メニューには乳がん検診が追加されたそうだ。この記事を読んでいる人の中に、もしも未だに乳がん検診を受けたことがない、あるいは身近な人が受けていないという人がいたら、ぜひインターネットで「ピンクリボン」と検索して、その重要性を知ってほしい。ザック選手が言うように、まずは知ることが自身の、そして大切な人の命を救う第一歩につながるからだ。検診を受けることへの不安や、もしもがんだと診断されたら怖いという人もいるかもしれない。しかし、検診を受け早期発見をすることこそが、その怖さを回避できる方法なのだから。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Kazuhisa Yoshinaga

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