『それいけ!アンパンマン だいすきキャラクターシリーズ/バタコさん バタコさんとおかしの国』DVD(バップ)

【知ってる?】バタコさんの誕生日と由来

パワー・コントロール・条件計算、全てが完璧

「アンパンマン、新しい顔よ!」と、ピンチに陥ったアンパンマンのもとへバタコさんが駆けつけ、新しい顔を豪快にスローイング。国民的アニメ『それいけ!アンパンマン』でお馴染みのシーンです。

 この描写についてたびたび議論となるのが、「バタコさんの身体能力が高すぎないか?」ということです。誰もが、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。この記事では、そんなバタコさんの能力や、顔を投げ始めるまでの変遷も含め、ご紹介します。

投げるスピードは時速144キロ!?

 一見しただけでもバタコさんのすごさは分かりますが、具体的な計算のためには、まず、「アンパンマンの顔の大きさ」が必要です。しかし、実は公式サイトに、顔に関しては「実際の大きさは私たちはまったく想像もつきません」と書かれています。

 アンパンマンの顔の大きさ、重さには諸説ありますが、「空想科学読本」シリーズで知られる柳田理科雄さんは、画面上の描写からサイズ感を算出し、その計算を行っていました。計算によると、アンパンマンの顔の直径は約76cm、重さは実に112kg。彼の顔は普通のアンパンとは違う、横から見ても真ん丸な、完全な球体であるため、あんこもぎっしりでこれくらい重くても納得です。800人分のお腹を満たせるとのことでした。

 そして、バタコさんがそんなアンパンマンの顔を投げ出す時の角度、到達時間を元に計算すると、そのスピードはなんと時速144km。112kgもの物体を、プロ野球選手のストレートと同じくらいのスピードで投げているのです。

コントロール・条件計算も尋常じゃない

 そしてバタコさんのスゴさは、肩の強さだけではありません。コントロールも抜群なのです。バタコさんが顔を投げるとき、大抵は数10メートル、場合によってはそれ以上の距離があるように見えます。古い顔に的中させるだけでも、相当なコントロールが必要になるでしょう。

 さらにすごいポイントは、新しい顔が古い顔とぶつかったとき、古い顔はまっすぐに押し出されて、新しい顔はその場にとどまって入れ替わっているということ。ビリヤードやカーリングをイメージすればわかりますが、もしも芯を捉えていなかったら、ふたつの顔は斜めに弾かれてしまい、顔の交換は成立しません。つまりバタコさんは、数10メートル離れた位置から、寸分の狂いもなく中心をとらえてぶつけている(「向心衝突」)のです。



バタコさんが初めて顔を投げたエピソードが収録された「それいけ!アンパンマン ぴかぴかコレクション アンパンマンとSLマン」(バップ)

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そもそもバタコさんが投げ始めたのはいつから?

条件も考慮に入れて計算している?

 ただ、現実には、アンパンのように柔らかいものをぶつけあった場合、衝突後も新しい顔は勢いが残り、古い顔を追うように飛んでいってしまいます。これは、柔らかいがゆえに、衝突時の「変形」によって、運動エネルギーがうまく伝わらないためです。もしかすると、作中では、胴体との摩擦やジョイントによって、上手くカバーしているのかもしれません。

 ともかく、ここで言いたいのは、「衝突後の顔の運動」が双方の顔の硬さによって変わってくるということです。そして、アンパンマンが顔を交換する必要がある場面は、顔が濡れていたり、食べられていたりと、毎回条件が異なっていますが、アンパンとして不完全な状態の場合です。

 バタコさんは、この条件の変化も計算に入れた上で、毎回うまく入れ替えができるように、ぶつける位置を芯からわずかにズラして対応しているのではないでしょうか。毎回顔には「横回転」がかかっているように見えますし、フォームもオーバスローやサイドスロー、またはサッカーのスローイングのような投げ方のときもありますが、どれも見事成功しています。毎回投げた顔が上手く収まるように、変化を加えているのであれば恐るべき技術です。

投げ始めたのはいつから?

 バタコさんの投球技術は謎が多すぎますが、バタコさんがこれほどの投擲技術を得たのは、いつからなのでしょうか? 実は、初めてバタコさんが顔を投げて交換を行ったのは、1990年の64話のA「アンパンマンとカレンダーマン」から。空飛ぶカレンダーに乗ったバタコさんが、おなじみの「アンパンマン、新しい顔よ!」という掛け声とともに、スローイングを行いました。

 それ以前の放送では、ジャムおじさんやおむすびまんが投げるパターン、あるいはバタコさんとジャムおじさんがふたりで顔を持って交換するパターン、他のキャラがアンパンマンの側まで顔を届けて本人が手作業で交換するパターンなどはありましたが、バタコさんは顔を投げていません。

 ちなみに、64話では、初めて顔を投げたにもかかわらず、アンパンマンの顔は寸分の狂いもなく入れ替わりました。最初から、バタコさんは高い技術を持っていたようです。これほどの能力がありながら、アンパンマンの顔交換がバタコさんの仕事として定着するまでは、意外と時間がかかっていました。

 ちなみに、公式サイトのQ&Aコーナーに、「アンパンマンワールドに人間はいません。ジャムおじさんとバタコさんも人間の姿をしていますが、妖精なんです。」と書かれていることは有名です。人間離れした能力を持つバタコさんは、そもそも人間ではありません。バタコさんですらサポートに徹しているという時点で、アンパンマンワールドの住民は、身体能力、運動センスの水準が比べ物にならないほど高いのでしょう。ちなみに犬のチーズもたまに、顔を投げて見事交換に成功しています。