バトルだけじゃなく、恋愛でもどんでん返し!

 明快な物語の多い少年マンガでさえも、恋愛は一筋縄ではいかないもの。だからこそ面白くもあり、感情移入して読んでしまうのです。TVアニメにもなった往年の「週刊少年ジャンプ」の名作から、本命ヒロインを「捨てた」主人公と、選ばれなかったヒロイン3組を紹介します。

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ナルトに告白するも、受け入れられなかったサクラ。画像はTVアニメ『NARUTO-ナルト- 疾風伝』ビジュアル (C)岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ

『NARUTO』ナルト&サクラ

『NARUTO』の主人公・うずまきナルトは落ちこぼれで、親を持たず、他人からも疎んじられ、それでも認めてもらおうと虚勢を張り続けた少年です。その生き方が、名家に生まれても才能がなく、親から疎まれてきた少女=日向(ひゅうが)ヒナタを惹きつける良縁ともなりました。

 一方で、人は自分にはないものを持つ相手に憧れを抱くもの。ナルト自身もそうでした。普通の家庭に育ち、成績優秀、見た目も綺麗。そんな憧れの女の子こそ春野(はるの)サクラです。そのサクラから好きだと言われた時、ナルトはなびきませんでした。彼女が苦しい本心を押し殺して、本当に好きな相手であるサスケを諦めようとしていると分かっていたからです。

「まっすぐ自分の忍道(生き様)は曲げねぇ」これはナルト自身の言葉です。ナルトがサクラを選ばなかったのは、まさに自分が好きだったサクラ自身の気持ちを曲げさせないためだったのです。



最初に悟空と出会ったときのブルマは、まさか悟空が超優良株だとは思いもしなかった? 画像は「ドラゴンボール GLITTER&GLAMOURS BULMA III ブルマ ピンクカラーver.」(バンプレスト)

『ドラゴンボール』悟空&ブルマ

 今も続く長大なバトルストーリー『ドラゴンボール』の始まりは、どんな願いもひとつだけ叶える7つの不思議な玉(ドラゴンボール)を探す冒険からでした。そのひとつ、四星球を持つ主人公の少年=孫悟空(そんごくう)と、それを探しにやってきた天才美少女発明家=ブルマの出会い───絵に描いたようなボーイ・ミーツ・ガールを予感させる幕開けでした。

 それだけに、ふたりが別々の相手……悟空とチチ、ブルマとベジータがとくっついた時は、少なからぬ驚きがありました。ですが、そもそもブルマは、ドラゴンボールに素敵な彼氏を願うつもりでいた人です。小さな子供だった悟空は、彼女にとって最初から恋愛対象外でした。

 一方で純朴な少年だった悟空は、冒険の途中で出会った少女=チチと、なりゆきで結婚の約束をしつつも、その場で別れます。そして7年越しの再会で、その日のうちに電撃結婚までたどり着く衝撃のカップル誕生でした。

 ブルマが最初に盗賊の青年=ヤムチャをボーイフレンドにしたものの、その後、彼の浮気癖で破局したのとは、実に対照的な展開と言えるでしょう。結局のところ悟空とブルマの関係は、子供世代まで深い付き合いを持つ、良き友人のままで留まりました。出会いこそ運命的でも、お互いに恋愛の上では初めから対象外だったということですね。



本来だったら両思いで結ばれるはずが……ライバルのゆきめがあまりにも強すぎた? 『地獄先生ぬ~べ~』DVD第6巻(東映アニメーション)

『地獄先生ぬ~べ~』ぬ~べ~&律子先生

 教え子たちを妖怪の魔の手から守るだけでなく、過ちを自覚するまで見守る頼もしい地獄先生…それが、ぬ~べ~こと鵺野鳴介(ぬえのめいすけ)です。ぬ~べ~はスケベで、金遣いが荒く、表立って褒められるところが見当たりません。そのため当初は同僚である想い人の律子先生にも嫌われていました。

 けれども物語が進むにつれて、律子先生もぬ~べ~の魅力に気づき、やがてふたりは両思い……となる前に、怒涛の勢いで現れて読者の人気と共に、ぬ~べ~をかっさらっていったのが雪女「ゆきめ」です。ぬ~べ~は妖怪との恋愛に否定的だったのですが、ゆきめからの猛プッシュにほだされます。おまけに劇的な離別と再会のドラマまで加わって、すっかりぬ~べ~の心はゆきめのもの。

 恋心を自覚した律子先生も張り合うものの、時すでに遅し。妖怪との共存という作品のテーマの強さや、ぬ~べ~の良さを理解するまでの初速の遅さも響いて、彼の結婚を笑顔で祝うビターエンドとなったのでした。

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3作品を振り返ってみると、恋愛には「好き」という気持ちはもちろんですが、きっかけやタイミングといった要素も重要なようです。作品内に描写されている、小さな積み重ねを見逃さないようにしていると、人間関係が動き出す瞬間を掴まえられるかもしれません。