マグネットコーティングのテストに使用され高性能化が図られたガンダム3号機はグレー基調のカラーリングが特徴。画像は「MG 1/100 RX-78-3 G-3ガンダム Ver.2.0」(BANDAI SPIRITS)

【画像】初代ガンダムと全然違う! 「RX-78」のバリエーション機を見る(4枚)

超優秀な試作機のその後の運命

 モビルスーツ開発で遅れを取った地球連邦軍は、一年戦争での巻き返しのために発動した「V作戦」によって、その後のモビルスーツ発展史に大きな影響を与える機体、「RX-78」を完成させました。

 通常の兵器の試作機であれば、量産化を見越した生産性や整備性、機体としての扱い易さなども想定した形で開発されますが、「RX-78」はそうした制約を廃して、当時の持ちうる技術を総動員した、超ハイスペックな機体として完成します。そして、ジオン公国の主力機であるMS-06ザクIIを大きく凌駕する機体性能を発揮しました。

「RX-78」の型式番号を持つ試作機は、現在の設定では8機生産されたと言われており、それらはスペックの高さを活かして、地球連邦軍の新たなモビルスーツ開発のテストヘッドになったとも言われています。

 今回は、OVAなどで映像化された際に登場していない、RX-78の型式番号を持つバリエーション機について解説していきましょう。

 RX-78ガンダムのバリエーション機登場のきっかけは、1984年にバンダイ(現:BANDAI SPIRITS)から発売された「MSV(モビルスーツバリエーション)と呼ばれるプラモデルシリーズの解説に始まります。「MSV」シリーズとして発売された「RX-78-1 プロトタイプガンダム」の解説には、「ジャブロー内で生産されたRX-78の総数は8機」と記載されていました。その後、88年~91年にかけてバンダイから発売されたアンソロジーコミック「SDクラブ」にて、「M-MSV」と呼ばれる新たなモビルスーツのバリエーションを生み出す企画が始動。「M-MSV」にて、ガンダム4号機から7号機までのデザインが発表されることになりました。

 では、ここから1機ずつRX-78のバリエーションにを解説していきます。

RX-78-1プロトタイプガンダム

 8機生産されたガンダムのなかで、最初にロールアウトされた機体です。設計、開発を形にした機体であり、この機体をベースに稼働テストや各種データを収集し、実戦運用に向けた次の仕様を作り上げるための、まさにテスト用のプロトタイプとも言える機体になっています。

RX-78-2 ガンダム

 アムロ・レイが搭乗した機体。プロトタイプガンダムでのデータ収集をもとに、実戦向けに調整し、サイド7での実働テストが行われていましたが、地球連邦軍総司令部ジャブローへ輸送するためにホワイトベースがサイド7に入港した際にジオン公国との戦闘に巻き込まれて偶発的に実戦参加することになってしまいました。

 プロトタイプガンダムをもとに各部が調整され、出力の増強や外装形状変更などが行われているため、型式番号は2番目の仕様ということで「RX-78-2」となっています。

RX-78-3 G-3ガンダム

 マグネットコーティングを施し、運動性や追従性が向上した、RX-78の3つ目の仕様。もともとはアムロの乗った機体と同じ仕様で、サイド7で回収されて2号機の予備パーツとしてホワイトベースに搭載されていました。その後、ジャブローに送り届けられ、マグネットコーティング処理のテストヘッドとして使用。さらに熱核融合炉用のレーザー加速器も新型に置き換えることで、改良前の2倍の運動性能を獲得したとも言われています。

 アムロの機体もマグネットコーティングがなされており、実質的にはG-3に近い仕様になっていたと言えるでしょう。



大型のメガ粒子砲を運用するためのテスト機だったガンダム4号機は、5号機と共に運用された。画像は「MG 1/100 RX-78-4 ガンダム4号機」(BANDAI SPIRITS)

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「M-MSV」から生まれたさらなるガンダムたち

 続いて、「M-MSV」で設定された4号機から7号機までのRX-78を解説していきましょう。RX-78はその高い機体性能をフルに発揮すべく、さらなるモビルスーツの可能性を探るための実験的な機体としてさまざまな仕様変更が図られていくことになります。

RX-78-4 ガンダム4号機&RX-78-5 ガンダム5号機

 ガンダム4号機と5号機は、基本仕様を似せつつ2体を同時運用させるという特徴を持っています。

 ガンダム4号機は「モビルスーツ単体による高出力メガ粒子砲の運用」を前提に派生した仕様で、ジェネレーターもその仕様に合わせた高出力のタイプに換装されています。発射すれば敵艦隊を1発で壊滅することができる、専用のメガ・ビーム・ライフルを装備。当時はモビルスーツによる高出力メガ粒子砲の発射はまだまだ不安定なため、本体の他にサブジェネレーターを取り付けています。しかし、射撃後は機体のエネルギーを使い果たしてしまい、動けなくなってしまうという大きな欠点がありました。

 一緒に運用するガンダム5号機は、4号機と基本的には同じ仕様の機体ですが、運用目的が異なっています。艦隊への砲撃を行う4号機は、エネルギーのチャージに時間がかかってしまい、また射撃後はエネルギーを使い果たすことで動けなくなってしまいますが、ガンダム5号機はその行動をサポートすることに重きが置かれています。

 機体としての最大の違いは、空間制圧用の大型ガトリング砲を装備していることです。4号機がメガ粒子砲による砲撃任務を果たすために、5号機は機体性能を駆使して、作戦の邪魔になる敵機の排除を行うことはもちろん、行動不能になった4号機の回収までも踏まえた機体となっています。

RX-78-6 ガンダム6号機“マドロック”

 ガンダム6号機は、ガンダムのビーム・ライフルを使用した後の火力不足をどのように補うかを検討した特殊な仕様となっています。戦艦の主砲並と言われるガンダムのビーム・ライフルは、火力は大きいながらもエネルギーの再チャージまで時間を要してしまう欠点があり、それを固定武装で補うことで連続して戦闘を行えるのではないかと検討されました。

 ガンダム6号機は、両肩に低反動キャノン砲、腕部にはグレネードランチャーが追加されています。しかし、こうした実体弾の装備は重量が増えてしまうため、機動性や運動性の低下を招いてしまいます。そこで、脚部には可変スラスターを追加することで、ホバー移動を可能にするなど、陸上での戦闘を大きく意識し、RX-77-2ガンキャノンの要素も取り入れ、5号機までの機体とは違う重武装タイプとなったのが特徴です。

RX-78-7 ガンダム7号機

 ガンダム7号機は、「増加装甲&増加武装を運用することを前提とした機体」という仕様になっています。RX-78は、増加装甲&増加武装を追加したFA-78-1フルアーマーガンダムという増強案が存在しています。フルアーマーガンダムは、RX-78-2ガンダムを改良せずに機体の強化を図るものでしたが、ベースとなっている機体への負担も大きいというデメリットがありました。

 しかし、増加装甲や増加武装の追加を前提として、ジェネレーターやスラスターなどの機体の基本性能を向上させ、追加装備をした状態でモビルスーツとして完成させるという、それまでの発想にはない機体運用が考えられていました。ガンダム3号機で取り入れられたマグネットコーティングも採用し、機体の各部にはハードポイント(※)が設けられることで、増加装甲の取り付けの簡易化も図られています。

※乗り物において、何かを搭載する事を想定して補強されている箇所。

 そして、機体の最大の特徴となるのが、用意された2種類の増加装甲。ファーストアーマーと呼ばれる増加ユニットを取り付けた状態はFA-78-3フルアーマーガンダム7号機、セカンドアーマーを取り付けた状態はHFA-78-3重装フルアーマーガンダムと呼ばれています。

 フルアーマーガンダム7号機は増加装甲に加えて、長距離ビーム・キャノンを主武装に各部にミサイルポッドを装備。フルアーマーガンダムやヘビーガンダムといったモビルスーツに増加装甲を取り付ける「FSWS計画」の機体の後発だけあり、単体での武装が大きく強化されています。

 さらに、重装フルアーマーガンダム7号機には、巨大な推進ユニットとメガ・ビームキャノンを装備することで、攻撃力と防御力に加えて機動性の高さも追加。モビルスーツながらもモビルアーマーに匹敵する性能を持つほどになっています。

 生まれ出た時からオーバースペックと呼ばれるほど高性能だったからこそ、さらなる高みへと向かう形で進化へのテストヘッドとなっていったRX-78 ガンダム。ここで振り返った設定は、その後ゲームの題材などにも扱われムービーとして映像化もなされています。

 ちなみに、RX-78-8ガンダム8号機は、「ガンダムは8機存在する」と記述されていますが、現状デザインなどは発表されておらず、完全なる謎の機体。この機体もいつか新たなデザインが起こされ、映像化される日が来るかもしれません。