映画『東京リベンジャーズ』ポスタービジュアル (C)和久井健/講談社 (C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

【画像】映画『東京リベンジャーズ』実写キャストのハマり具合を原作と比較しながら見る(8枚)

「ヤンキーもの」で重要なキャスティングを見事クリア

 主人公のフリーター・花垣武道(通称:タケミチ)が不良だった中学時代にタイムリープし、人生のリベンジに挑戦する『東京卍リベンジャーズ』(原作:和久井健)は、原作コミック、アニメ版とともに人気を博しています。さらに、2021年に公開された実写版映画『東京リベンジャーズ』は、興行収入44億6000万、観客動員数334万人を突破する大ヒットとなりました。これは『るろうに剣心 The Final』(43.5億)を上回る、21年の実写版作品No.1の成績です。

 2022年7月30日の「土曜プレミアム」で地上波初放送となるタイミングで、その成功の要因を振り返ります。

 まず、実写化において原作ファンが気になるのは、やはりキャスティングやストーリーの改変でしょう。あまりにかけ離れたキャラクターの見た目や、大幅なストーリーの変更は賛否を巻き起こすこともあります。

 その点、『東京リベンジャーズ』はタイムリープというSF要素を大きく取り扱ってはいますが、ベースは2020年公開の『今日から俺は!!』(原作:西森博之)や、2007年公開の『クローズZERO』(原作:高橋ヒロシ)などの過去の実写化ヒット作のように、日本が舞台の「ヤンキーもの」というある種王道的なジャンルのため、作りやすい作品だったと言えるでしょう。

 そして、前述の作品や『ルーキーズ』『ビーバップハイスクール』などの、過去の成功作を見てもわかる通り、ヤンキー映画で重要なのは若手俳優中心のキャスティングです。『東リベ』の実写版ではイムリープ先を中学時代から高校時代に改変し、キャスティングを無理のない範囲へと変更したことが、まず大きな成功要因だったと思います。

 主人公・タケミチを演じた北村匠海さんや、佐野万次郎(通称:マイキー)役の吉沢亮さん、龍宮寺堅(通称:ドラケン)役の山田裕貴さんら、メインキャラの再現度は絶妙で、原作ファンからも支持を集めました。また、見た目の再現度もさることながら、各キャストのエネルギッシュな演技と、迫力あるアクションシーンも圧巻です。

 特に、主演の北村さんは元々原作のファンだったそうで、「映画化するなら絶対自分がタケミチを演じたいと思っていました!」(公式ホームページより)とコメントしており、出来るだけ原作に寄せたヘアスタイルや、動ける身体作りなど、役作りの面からも作品へのリスペクトが感じられます。また、さわやかイケメンの鈴木伸之さんが、ゴリゴリなパンチパーマの悪役・キヨマサを憎たらしさ全開で演じており、意外なキャスティングながら体躯の威圧感含め、こちらも見事な原作再現度でした。

 実写化において、いちばん物議を醸しがちなキャスティングと演技面でハードルをクリアした時点で、ヒットは確実だったと言えるでしょう。

 さて、映画『東京リベンジャーズ』は、しっかりとしたハッピーエンドで1本の作品としてきれいに終わりましたが、ここまでの大ヒットとなれば、当然「続編」の企画も動いている可能性は高いです。『東京卍リベンジャーズ』は、2021年に実写版だけでなく、アニメや舞台など、さまざまなメディアミックス展開が同時期に集中していたことも、ヒットの背景にあると言えるでしょう。そして2023年1月より、アニメシリーズの続編「聖夜決戦編」の放送が決まっているので、実写版の続編にも期待が高まります。もし続編が作られるとなれば、どのような内容になるでしょうか。

※ここから先の記事は、原作のその後の展開について触れているので、実写版しかご覧になっていない方はご了承の上お読みください。



半間と稀咲は続編でもっと活躍してほしい?再現度が話題を呼んだキャストが並んだ『東京リベンジャーズ』ポスタービジュアル (C)和久井健/講談社 (C)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

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「続編」で「血のハロウィン」を描くのは難しい?

 まず、実写版『東京リベンジャーズ』は、いくつかのストーリー改変によって、続編のシナリオが想像しづらくなったように思います。実写版では、「東京卍会」と「愛美愛主 (めびうす)」の抗争が起きる、原作4巻辺りまでのストーリーがぎゅっとまとめられていました。

 約2時間の映画にするためのまとめ方としてはしょうがない部分ではありますが、カットされた部分はもちろん、原作と扱いが変わってしまったキャラもいます。原作では、林田春樹(通称:パーちん)が少年院に入ったことを材料として、マイキーと稀咲鉄太の取引が行われますが、実写版ではパーちんが少年院に入る展開がなくなったため、原作4~8巻にあたる「血のハロウィン編」への繋げ方が、不自然なものになってしまうのです。そのため、続編を製作するとなると、多少強引に「血のハロウィン編」に進めるか、オリジナルストーリーになるという可能性も捨て切れないでしょう。しかし、わざわざ稀咲や半間修二を登場させたのは、「血のハロウィン編」実写化を見越していたからとも考えられます。ビジュアルや演技の再現度はしっかりしていながら、実写版で出番が少なくなってしまった稀咲(演:間宮祥太朗)や、半間(演:清水尋也)は、続編で悪役としての本領を発揮できるのか、気になるところです。

 まだ制作されるかどうかも未定ではありますが、1作目の大ヒットがある以上、続編はアクション面や新キャスト含めスケールアップする可能性は高いです。今からどんな内容になるのか、楽しみになってしまいます。