一年戦争末期に投入されたジオングは、予定通り完成すると40mサイズだった。画像は「MG 1/100 MSN-02 パーフェクトジオング」(BANDAI SPIRITS)

【画像】デカすぎ! 巨大化していったモビルスーツを見る(5枚)

モビルスーツの万能化が巨大化を招いた

 ガンダムシリーズの舞台となる宇宙世紀では、モビルスーツ(以下、MS)の大きさが変化していったのをご存知でしょうか? 『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争では18mサイズだったのが、『機動戦士Zガンダム』の中盤くらいから大きさが変わり始め、『機動戦士ガンダムZZ』や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では22mサイズが基本になっています。これは、戦場におけるMSの重要度や戦い方の変化と大きな関係性がありました。その変化を、MSの進化と合わせて追っていきましょう。

そもそも、なぜMSは18mなのか?

 MSの基本サイズと言えば、「18m」と思うガンダムファンは多いでしょう。そもそも、なぜモビルスーツは18mなのかと言えば、積載や輸送の問題が大きいと考えられます。

 現用の空母では、積載できる戦闘機の大きさに限界があります。翼長などが規定を越える場合は、折りたたむなどして積載できるサイズに収めるよう設計がなされてもいます。この考え方は、宇宙用の艦船にあっても当然だと言えるでしょう。モビルスーツは移動能力が低いため、運用される宙域まで母艦となる宇宙用艦船で運ばなければなりません。つまり、18mというサイズは、母艦の積載できるサイズに合わせた大きさだったと考えられます。

 こうした18mを基準としたMSのサイズを最初に越えたのは、水陸両用MSのゾックでした。ただ、ゾックの場合は宇宙での運用を考えていなかったため、地上での特殊な例だったと考えられます。

 そういう意味で、基準を超えて大型化されたMSはジオングになります。実際に運用されたジオングは未完成のために脚部がありませんでしたが、脚部が付けられた完成状態は40m近かったと言われています。では、なぜジオングは大型化されたのでしょうか?

 その理由は、攻撃力と機動性の向上に加え、サイコミュ・システムの搭載にあります。ニュータイプが発する感応波で武装を遠隔操作するサイコミュ・システムは、一年戦闘当時は小型化が難しく、それを搭載したニュータイプ専用MSのジオングは必然的に大型化することになりました。さらに、サイコミュによって同時に使用するメガ粒子砲を多数搭載し、それを稼働させるには大きな電力が必要なため、必然的に発電機が大きくなり、さらにその大型化した機体を運用するにはより大きな推進力が必要になります。このさまざまな要望をまとめることが、MSを大型化させる要因になっていくわけです。



ガンダムも万能化を目指して巨大化。vガンダムはその代表と言えるだろう。画像は「MG1/100 RX-93 vガンダム」(BANDAI SPIRITS)

(広告の後にも続きます)

大型化をたどるMSの進化

『機動戦士Zガンダム』の舞台となるグリプス戦争では、一年戦争とはMSの重要度が大きく変わっていました。一年戦争では、量産型機を小隊や中隊単位で運用する戦いが一般的でしたが、戦いの規模が小さくなったグリプス戦争では、そうした集団運用よりも、1機のモビルスーツに多用途性を求めることになります。

 その結果誕生したのがMS形態に変形する可変モビルアーマーや、MSから変形して機動性や移動性能の向上などをはかる可変MSです。この時期になると、母艦となる艦船も一年戦争時代から設計が変化し、大型化したMSの運用も前提とした設計になっていったと考えられます。そして、グリプス戦争の後半では、変形せずに機動性と火力を両立させることを目的としたジ・Oのような機体や、サイコミュを搭載したキュベレイといった機体も登場しはじめます。

 艦隊規模の戦いではなく、単体のMS同士の戦いが陣営の趨(すう)勢を決めるような戦いでは、MSの火力の増強と機動性の向上という要素がさらに重要視されていきました。そして、引き続きの戦いとなる第一次ネオ・ジオン戦争では、人工的なニュータイプである強化人間を戦場に大量投入することでより有利に戦おうとする結果、サイコミュ・システムを内蔵したMSが数多く登場。その状況に対応すべく、「ガンダム」も巨大化の道を歩み始め、ZZガンダムのような大火力を重視した機体が登場するようになります。

 このようにMSの大型化に拍車が掛かっていく流れは、まさにMSの恐竜的進化をたどります。恐竜的進化とは、身体をどんどん大きくしていった結果、莫大なエネルギー料が必要となるながれで、MSの大型化はここで1度終わりを告げることになります。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で描かれた第二次ネオ・ジオン戦争では、大火力を駆使する戦い方は鳴りを潜め、艦隊とMSが連動する戦いへと退化しました。しかし、サザビーやvガンダムといった、サイコ・フレームを活かしたニュータイプ用のMSの小型化は難しく、全高20m以上というサイズ感となっていました。その流れは、『機動戦士ガンダムUC』におけるラプラス事件頃まで継続することになります。

 しかし、MSの大型化はまだ留まることはありませんでした。MSの大型進は、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』で最終局面を迎えます。大火力化、サイコミュ兵器導入に加えて、MSの機動性の向上に力が入れられた結果、艦船などを大気圏内で浮かすことができた「ミノフスキー・クラフト」の技術を応用したミノフスキー・フライト・システムを搭載。MSが大気圏内を自在に飛行するという領域に達しましたが、まだミノフスキー・フライト・システムの小型化には限界があり、全高こそvガンダムとは変わらないものの、機体のボリューム感は過去最大のサイズとなっていきました。

 そして、そうした大型化に伴い、エネルギー効率の悪化や整備施設や資材の大型化などという整備性や運用性の悪さなどの弊害も限界に達することになります。大型化はここに来てまさに袋小路へと達したと言えるでしょう。

 こうしたMSの大型化は運用効率の悪さがが、MSは小型化を目指す次代が到来します。そして、それから約20年の年月を経て、『機動戦士ガンダムF91』の時代にはMSは15mサイズに小型化され、運用性が見直されることになりました。

 MSの大型化は、MSに兵器としての万能性を求めるがゆえに起こった爆発的な進化の結果であり、その欲張りな考え方の限界が、MSの小型化という新たな時代を呼び寄せることになったと言えるでしょう。