ドジなヒーロー・キン肉マンの正体は王子!? 著:ゆでたまご『キン肉マン』第1巻(集英社)

【画像】え、こんなに高い? 人気超人たちの「超人強度」は?(4枚)

少なくとも腕力の強さではない

 超人格闘マンガ『キン肉マン』には「超人強度」という超人の強さを表す数値が存在します。主人公のキン肉マンは、95万パワーですが、ピンチになると眠っていた「火事場のクソ力」が発動し、最大7000万パワーの超人強度となって、強敵に打ち勝てます。

 その一方で、キン肉マンの仲間であるロビンマスクは、95万パワー(異説もあります)でありながら、1億パワーのキン肉マンマリポーサを倒します。約105倍もパワーが異なるなら、普通は勝ち目がないと思いますが、パワーが弱い側が勝つことも多々あるのです。

 超人強度は通常は、生まれた時から変わらないともされていますが、100万パワーのウォーズマンのように、ベアークローをふたつ装備して200万パワー、その状態で2倍のジャンプをして400万パワー、3倍の回転を加えたスクリュードライバーを放って1200万パワーと、行動次第でパワーを増大させることも可能です(きっとベアークローをふたつ装備したことがスイッチで、体の負担を顧みずに超人強度をブーストするモードになるのでしょう)。

 バッファローマンも、ひとり超人を倒すと1万パワーを得られる契約をサタンとして、1000人を倒して1000万パワーとなりました(900人を倒した時点で1000万パワーとなり、そこでカンストして、後100人を倒したのでしょう)。

 一方で、超人強度は「下げるとスピードが上がる」設定も存在します。バッファローマンは0パワーにすると光速となり、姿が消せるとのことです(……?)。火事場のクソ力を奪われたキン肉マンが、基本の95万パワーで放ったキン肉ドライバーはむしろ速度が落ちていたので、必ずスピードアップするわけでもないようですが。

 この超人強度とは、どんなパワーなのでしょうか。確実に言えるのは「筋力の強さや、耐久力の高さではない」ことです。

 人間の場合、格闘技素人のパンチ力が60~80kg、ヘビー級ボクサーだと300kgにも達するそうです。小学生や成人女性の平均パンチ力は、成人男性の半分らしいですから、2倍でそれだけの差があります。筋力が5倍も違ったら、一瞬で倒されてしまうでしょう。

 つまり筋力量の違いではありません。95万パワーのテリーマンは、4800万パワーのマックス・ラジアルに力で打ち勝っています。ですから、超人強度の正体として考えられるのは「超人が持つ超常能力の総量」。つまりRPGにおけるMPみたいなものということです。

 例えば、キン肉マンがキン肉バスター、テリーマンがキン肉ドライバーを相手にかけ、空中で合体してマットに落下する必殺技が「マッスル・ドッキング」です。この技は単独でキン肉バスターやキン肉ドライバーをかけた時の10倍の破壊力があるそうです。

 技が合体することで、超人3人分の重みがかかるキン肉ドライバー側の威力が上がるのはわかりますが、テリーマンの首に跨っているキン肉マンがかけたキン肉バスターの威力まで、10倍になるのです。

 つまり、超人が放つ必殺技の威力は、物理的な衝撃だけではなく、超能力のような要因が加味されているのではないでしょうか。技自体の威力というよりは、技を放つ際に込められた攻撃的意志力が、攻撃魔法のような威力を発し、ダメージを与える主体になっているということです。だから、一見、物理的な威力がなさそうなポーズの必殺技でも、大ダメージを与えることがあると考えられます。

 実際、キン肉マンの必殺技「マッスル・スパーク」は、究極の峰打ち技であり「相手は倒すが命は奪わない」技ですから、技をかける側の意志が効果に反映されています。

 一方、アシュラマンは「同じ超人強度でも、鍛え方が違う! 精根が違う! 理想が違う! 決意が違う!」とオリジナル悪魔超人の超人強度を誇っています。つまり「超人強度は、生まれながらに総量は変わらないが、鍛えられる」ものだということです。

 そう考えると、超人強度の強弱とは「意志力の総量」みたいなものではないでしょうか。超人強度が高ければ、基本的には技に込められる攻撃的意志も多くなり、ダメージを増やしやすい。でも、自身の意志を鍛え、技を磨いてその精度を増していなければ「漠然とパワーを浪費しているだけ。スタミナを大量に消費しつつも、効果は上がらない」のでしょう。

 アイドル正義超人の多くが95万パワー前後ですが、それでも数倍から数十倍の超人強度を持つ強敵に技が通じるのは「少ない超人強度でも、必殺技が決まった瞬間に、一点にそれを効率よく集中し、相手の超人強度の核を打ち砕く」ようなことをしているからだと考えられます。それを裏付ける、研ぎ澄まされた意志と、技の精度があるということです。

 必殺技を放つ時はその鍛えた超人強度を「友情パワー」(友情で結びついた相手の声援で、超人強度を鍛える意志が強まるのでしょう)や「火事場のクソ力」(潜在能力を解放することで、超人強度自体を高められるのでしょう)で、さらに強化しているわけです。

 だからこそ、オメガマン・アリステラとキン肉マン・スーパーフェニックスの対決のように「強い決意を持って、高い超人強度を鍛えて使いこなすアリステラ」相手に、少ない超人強度のフェニックスが挑むような戦いは、厳しいのでしょう。

 「常時、高い超人強度で技の威力を高めてくるアリステラ」に対し、「少ない超人強度を、ワンチャンに集中して一発逆転を狙わねばならない」というハンデがあるからです。

 また、超人強度を下げてスピードを増せたとしても、超人強度が攻撃的意志力の総量だとするなら、技に超人強度の威力が乗らないことになりますから、攻撃には使いにくいということだと想像できます。