一見楽しそうに見える学園生活部だけど……? 『がっこうぐらし!』第1巻(芳文社)

【画像】他にも多数!終末世界を楽しむマンガをチェック!(7枚)

仕事に忙殺される現代社会よりも、ある意味楽しそう?

 戦争や病、災害といったなんらかの理由により、文明が崩壊した後の世界を描いた作品は数々あります。SFのジャンルのひとつで「ポストアポカリプス」ともいい、現代社会を生きる私たちにとって、作中の文明崩壊後の終末世界は悲惨にも思えるかもしれません。

 ポストアポカリプス系のマンガには、文明崩壊の原因を追求したり、脅威となる存在とのバトルを繰り広げたりするハードなものがある一方で、不便を感じながらもどこか楽しそうな生活を描く「日常系」の作品もあります。

 今回は、旅や日常生活を通して登場人物が終末世界を満喫しているマンガを紹介します。

『世界の終わりに柴犬と』 文明崩壊後の世界を柴犬と旅する女子高生

『世界の終わりに柴犬と』(著:石原雄)は、タイトル通り文明が滅んだ後の世界を柴犬・ハルさんと、動物と会話できる能力を持つご主人の女子高生が旅をする物語です。

 哲学をはじめとする知識豊富な柴犬・ハルさんとマイペースなご主人のやりとりからは、全く悲壮感が漂っていません。むしろ、無人の世界を全力で楽しむご主人に、ハルさんが冷静にツッコミを入れるといったユニークな会話が作品の魅力のひとつです。

 そして作中には、ハルさん以外にも黒柴や白柴、シベリアンハスキーなど他の犬も登場します。柴犬の性格やしぐさといったあるあるネタも組み込まれているため、犬好きにはたまらないポストアポカリプス系作品といえるでしょう。

『がっこうぐらし!』 学校で寝泊まりすることを楽しむ

『がっこうぐらし!』(作画:千葉サドル/原作:海法紀光(ニトロプラス))は、舞台となる巡々丘学院高校で生活する「学園生活部」の日常を描いています。屋上菜園で野菜を育てたり、美味しい食事を楽しんだりと、学園で自由に生活する部員たちの日常はどこか楽しげです。

 序盤はちょっと変わった学園生活部の日常がメインですが、実は人間をゾンビに変えてしまう感染症のパンデミックにより、意図せずサバイバル生活を余儀なくされていたことが明らかになります。それでも、物資を求めて校外に行ったり、学校を後にして別の避難場所を探すことを「遠足」「卒業」と言い換えたりと、文明崩壊後の世界をあくまでも日常だと思い込もうとする学園生活部を描いた同作は、毛色こそ違えど「日常系」といえます。



あてもなく廃墟を旅するチトとユーリはどこか楽しげ 画像は『少女終末旅行』第1巻(新潮社)

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終末世界を生き抜く、ある意味でたくましいキャラクターたち

『少女終末旅行』 正反対な少女ふたりが崩壊した都市をさまよう

 文明崩壊後、廃墟となった都市を半装軌車のケッテンクラートで旅する少女ふたりの姿を描いた『少女終末旅行』(著:つくみず)。食料や燃料を求めて旅を続けるチトとユーリですが、自分たちの境遇を嘆く様子もなく、どこか楽しげです。

 冷静で器用なチト、自由奔放で楽観的なユーリという、正反対なふたりがどこかでお互いを信頼しているためか、殺伐とした雰囲気はありません。旅の途中で出会うさまざまな生存者とも、何かを奪い合ったりするどころか、助け合うシーンも多く見られます。

『少女終末旅行』は、ほのぼのとした日常系作品でありながらも、文明が崩壊した理由や都市に秘められた謎などの考察がネットで加熱しています。ふたりのほのぼの旅と謎に満ちた作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。

『花と奥たん』 美味しいご飯を作って夫を待ちわびる

 東京の中心部に巨大な花が突如出現し、都市機能が破壊された世界で行方不明となった夫の帰りを待ちわびる主人公・奥たんの日常をテーマにした『花と奥たん』(著:高橋しん)。終末的な世界観でありながらも、奥たんは夫がいつか帰ってくると信じて夕飯を作り続けます。

 終末世界であるため、奥たんは停電に悩まされ、食材も満足に購入できないことも珍しくありません。それでも、退避勧告を無視して、夫を待とうと決意した「残され主婦」たちで稲作をして食料難を乗り越えようとしたり、欲しい食材を求めて冒険を繰り広げたりする様子は、日常をどこか楽しんでいるようにも見えます。

 夫を待ちながら家事をする奥たんにとっては、崩壊している世界も日常の一部なのかもしれませんね。