『秘密戦隊ゴレンジャー』は、戦隊メンバーの色分けで後の作品に影響を与えた。画像は「秘密戦隊ゴレンジャー Vol.1」DVD(東映ビデオ)

【画像】「色」の通例を崩した、「戦隊」と「プリキュア」の最新作、メンバーの色を比較!(4枚)

シリーズ当初は「色」の区別が明確ではなかった

 同じ作品内にヒーローが複数いると、誰にでも見分けがつくようにすることが必要となります。一般的にはデザインで違いを見せるのものですが、「色」で見分けるやり方が集団ヒーローものでは定番。そこで代表的な集団ヒーローものの「スーパー戦隊シリーズ」と「プリキュア」を例に、色のイメージについて考えてみましょう。

 色で各ヒーローの個性を描くという方式は、一般的にはスーパー戦隊シリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977年)が草分けだと考えられます。一応、『仮面の忍者 赤影』(1967年)や、同時期の『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1975年)など、色によるヒーローの個性分けは他にもいくつもありますが、その後に与えた影響の大きさを考えると『ゴレンジャー』から始まった戦隊が色分けヒーローの元祖といっても差し支えないでしょう。

 しかし、戦隊の色で個性を出すという方式は、当初から確立していたものではありません。第3作『バトルフィーバーJ』(1979年)では、色ではなくデザイン(国)で各ヒーローの個性を出していました。それが色中心にシフトしたのは、第4作『電子戦隊デンジマン』(1980年)からとなります。

 この色の個性もシリーズが進むにつれて変化していきました。当初は悪人の色だった「黒」や、撮影の都合で敬遠していた「白」を取り入れるなど、『ゴレンジャー』で使った赤、青、黄、桃、緑の5色を基本として、作品によって使う色を変えていきます。

 時には『未来戦隊タイムレンジャー』(2000年)の追加戦士タイムファイヤーのように、赤の戦士をあえてふたりにしたり、『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002年)の電光石火ゴウライジャーのように、色のかぶった他のチームを登場させたりと、マンネリにならないよう定期的に変化を加えていました。

 一方のプリキュアも、最初からチームを色分けしていたわけではありません。それは第1作『ふたりはプリキュア』(2004年)でキュアブラック、キュアホワイトと、名前に黒と白という色を付けていますが、作品自体が当初はバディものとしてスタートしているからです。

 このプリキュアが色分けされたのは、チームものとしてスタートした第4作『Yes!プリキュア5』(2007年)からでした。しかし製作の東映アニメーションとしては、過去に『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(1992~1997年)、『おジャ魔女どれみ』シリーズ(1999~2003年)といった女子向けヒロインの人気シリーズがあるので、その延長線上にあるものと考えられます。



2019年放送の『スター☆トゥインクルプリキュア』では、「紫」のキュアセレーネがメンバーとして登場する。画像は「スター☆トゥインクルプリキュア vol.2 Blu-ray」(ポニーキャニオン)

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男女で人気に差がある「上級色」とは?

 気づかないことかもしれませんが、戦隊とプリキュア、両シリーズの色に対するアプローチを並べてみると、意外なことがわかります。それは「男女の色の好み」かもしれません。

 戦隊をベースにプリキュアの色の使い方を見ると一目瞭然ですが、「紫」の扱いがまるで違います。戦隊で紫が登場したのは『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007年)のゲキバイオレッドが初めてでした。そのほか、レギュラーで加わったことがあるのは『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年)のリュウコマンダー(リュウバイオレット)のみです。

 一方のプリキュアは、『Yes!プリキュア5GoGo!』(2008年)の追加戦士であるミルキィローズ以降、ほぼすべてのチームメンバーに「紫」が入っていました。

 ここで戦隊とプリキュアの「色」による立ち位置をあらためて確認してみましょう。

 戦隊は基本的に中心が「赤」です。『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)や『電磁戦隊メガレンジャー』(1997年)のようにチームリーダーが別の色になっても、センターは主人公である赤。それを各色がサポートします。桃はゲストでの例外はあっても基本は女性専用色です。人気の色は青で、赤と同様にすべての作品で登場していました。続いて出演回数で見ると黄、桃と続き、少し離れて緑、その僅差に黒といった感じです。

 プリキュアの中心は「桃」です。チームリーダーを集めたチームをピンクチームと公式で言っているくらいで、キュアブラックも黒ではなく桃の扱いになっていました。続いての人気色は黄で、4人以上のチームでは必ずメンバーにいます。その他の色は僅差で青、続いて紫、赤、緑、白という採用数になっていました。

 キャラ設定があるので一概にはまとめられませんが、プリキュアでも赤の戦士は情熱的な面が強く、熱血の赤といったイメージです。ゆえに作品の中心に起きやすい。どちらかというと男性のイメージが強いのかもしれません。その逆に桃は女性のイメージが強いのでしょう。

 青と黄は男性も女性も好きな色です。戦隊の女性戦士でもよく使われる色なので納得するところでしょう。こういった具合に男女での色の好みはそれほど変わらないように思えますが、「紫」だけは意見が分かれるようです。確かに女性は紫を着こなせる人が多くいる感じですが、男性の場合は下品に見えがちな色かもしれません。紫は使う人を選ぶ上級色と言う人もいます。

 余談ですが、2021年の戦隊とプリキュアで、前述していた話を否定するような事態が起こりました。それは戦隊とプリキュアともにリーダーの色が「白」になったこと。これに対して両方のスタッフとも、「これまで変えなかったことに手をつけたい」と思ったそうです。シリーズも長年続くと、マンネリと言われても規定路線を崩したくないものですからね。