スイーツ界のわらしべ長者!?

ホーム下の開発が決まったのはおおむね2年前。JRの仕事はエキナカスペースを生み出すところまで。実際にどんなショッピングゾーンをつくるかは、新宿の駅ビルに実績を持つルミネに任せます。

イイトルミネはネーミングで分かるように、食に特化したエキナカ。約950平方メートルに28店舗が並びます。

テナント紹介は本サイトの専門外なので、おもしろそうな話を聞けた3店舗だけ取り上げます。

入り口に近いクッキー店、元々は神奈川県茅ヶ崎市に店がありました。縁あって横浜の駅ビルに臨時店を出したら大評判。ルミネの担当者から、「ぜひ新宿のエキナカにも」と持ち掛けられました。とんとん拍子の東京進出に、筆者は思わず「スイーツ界のわらしべ長者」とつぶやいたのですが……。

最近、ブームともいわれる立ち食いずし。目の前で板前が握るスタイルは、訪日外国人に喜ばれそうです。イイトルミネのすし店は、駅ビルの店舗で実績。新商品の持ち帰り「海鮮ばらちらし」は、味とともにSNS映えする見た目重視です。


映える「海鮮ばらちらし」。店の運営は宮崎牛で一世を風びした飲食チェーンです

3店舗目はタイ料理店。エスニックな味わいは本場ゆずりですが、テナントは純粋な日本の会社。店ではタイ人留学生が働きます。日本で学ぶタイからの学生を経済的に支えて、日タイ交流促進に貢献します。


日タイ交流に力を入れるエスニック料理店のオープンキッチン。現地直輸入のスパイスが食欲をそそります

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エキナカで食事する意味

JR東日本がエキナカに力を入れる意味。コロナやリモートワーク普及で鉄道利用客は減少、本業の鉄道事業は苦戦を強いられます。

しかし、会社は安定的に収入を挙げなければならない。それは社員のため、株主のため、それとも……。

JR東日本に限らずJRグループ各社、特に本州3社は都市圏や新幹線の売り上げで地方ローカル線を維持してきました。しかし今、そうしたビジネスモデルが崩れつつあるのはご存じの通りです。

ルミネ担当者の話では、現状は未定ながら新幹線や在来線で輸送した地域産品を販売する可能性もありとのこと。イイトルミネで食事したり買い物することで、ローカル線の走る地域を支援する。それが鉄道会社がエキナカを開発する、鉄道ファン目線での意義といえるのかもしれません。


ルミネイストの表玄関に当たる新宿駅東口の駅ビル「ルミネエスト新宿」。1964年5月に新宿ステーションビルとして開業した名門です

記事:上里夏生