6年ぶり全面刷新! ホンダ新型「N-BOX」は“見た目以上”に進化!? 「クラス超え」の安定感がスゴい! 先代からの進化点は?

6年ぶりに全面刷新したホンダ新型「N-BOX」に試乗しました。どのような仕上がりなのでしょうか。

先代踏襲でもしっかり改良! 見た目以上の進化に驚き

 日本の新しい“国民車”をつくるという壮大な目標を掲げ、販売台数トップの座に君臨し続けることで見事にそれを証明しているホンダ「N-BOX」。
 
 初代は2011年の激しい燃費競争のなかにあって、あえてパッケージ重視で登場。2017年に登場した2代目は、先進安全運転支援システムをいち早く標準装備とするなど、常に軽自動車を越える存在として進化してきたのがN-BOXでした。

 3代目となった新型N-BOXのグランドコンセプトは、「HAPPY Rhythm BOX」。私、家族、友人や仲間たち、日本中のみんなが「幸せな生活リズム」をつくるための1台を目指したといいます。

 安心して堂々と運転できること、みんながのびのびと過ごせること、子どもから大人まで、誰でも気軽に使えるやさしい機能性、新型ではこの3点に目を向けられました。

 先行して公開された内外装を見たときには、ひと目でN-BOXとわかるシルエットはそのままに、ベーシックとカスタムそれぞれの個性が際立ち、より魅力的になった内外装や、生活者目線を大切にしたからこそ気づいた改善点や、アイディアが盛りだくさんの使い勝手に感心し、試乗する機会を心待ちにしていました。

 そしていよいよ、クローズドコースではありましたが、自然吸気モデルとターボモデルの新旧モデルを比較しながら、試乗することができました。

 走ったのは高速道路のように速度域の高いオーバルコースと、市街地を模した信号や立体交差などがあるコース、マンホールや踏切などの段差を感じられる周回路で、路面も実際の道路とほとんど変わりない状態です。

 まずは自然吸気モデルから乗ってみます。

 筆者(まるも亜希子)のほかに、開発担当者と編集者、カメラマンも同乗し、大人4人フル乗車での発進となりましたが、アクセルの踏みはじめからなめらかで、軽やかなのにしっかりとした接地感のある加速フィールに、この後の期待が高まります。

 新型ではプラットフォーム、パワートレインやシャシの基本的な要素は先代のものを継承しており、目に見えるところでの進化は大きくないように思えました。

 ですが、開発担当者が「キャリーオーバーだからこそ、細部まで煮詰めることができたんです」というように、驚くべきポイントが山盛りだったのです。

 まず、先代と大きく変わっていたのは走行中の静かさと、不快な振動のない乗り心地の良さがあります。

 自然吸気エンジンは使用回転数が高めになるので、先代ではどうしても耳につくエンジンノイズや、路面からのロードノイズ、エンジンの振動が伝わるようなこもり音などが響いてしまっていたのですが、新型はそれがどこか遠くの方で小さく鳴っているような感覚で、後席の人とも声を張り上げることなく、普通に会話が続けられます。

 この静かさが、高速域でも維持されていることに感心。これはそもそもの骨格から高剛性なハイテン材の配置を適正化したことに始まり、ルーフライニング(天張り)の基本材料構成を変更して全体的なボディパネルの共振を吸収するようにしたほか、フロアカーペットにも遮音層フィルムを追加し、空気を通さないように遮断したことが効果を上げているとのこと。

 このために工場にも掛け合い、作り方を変更したというから驚きます。

 さらにフロント、リアともにサスペンションの締結部分を適正化し、突き上げや硬さ、収束性、路面のざらつきなどの小さい入力のすべてをブラッシュアップしたという通り、乗り心地もハッキリと違いがわかるほど向上していると感じました。

 とくに、先代では「ドッタンバタン」と大きな音と振動に見舞われたマンホールの段差が、新型では「コトン」くらいまで抑えられていたのには乗員全員で感心したほどでした。

 市街地風のコースで感じたのは、低速からなんの引っかかりもなく、なめらかでダイレクト感の高いステアリングフィールです。

 交差点を曲がったあとやUターンをした直後なども、ヘンな違和感のある戻り方をしないところや、カーブでも切った感覚そのままに弧を描いてくれるところなど、ものすごく気持ちのいい操作感なのです。

 思わず「ステアリングのモーター、変えましたか?」と質問してしまったほどですが、実はモーターは変えずに制御を変更したとのこと。

 先代のステアリングでは、モーターの電流値でステアリングの切れ角を予測する制御を採用していましたが、新型では舵角センサーを取り入れ、ドライバーがどれくらいステアリングを切っているのかによって、重さやパワーなどのアシスト量を変えるという、ダイレクト制御に変更。

 これが、まるで手のひらに吸い付くようなステアリングフィールの正体でした。

 そしてオーバルコースに入り、高速道路のように100km/hから120km/hくらいまでスピードを出してみると、カーブのじわりと荷重移動していくような気持ちよさに加えて、直進安定性の高さが先代以上に進化していて驚きました。

 もう、ステアリングから手を離しても真っ直ぐを維持してくれるのではないかと思うくらい、ビシッと安定して進んでくれます。

 自然吸気モデルはタイヤが14インチですが、これほどの安心感があるとは予想以上。コース上には少しバンクがついたカーブがあるのですが、その出口でもまったく浮ついた挙動を見せませんでした。

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ターボモデルはどう進化した?

 続いてターボモデルに乗り換えます。

 運転席に座ってあらためて感じるのは、視界の広さとスッキリ感。ダッシュボードが水平基調となり、シンプルな形状に整えられたこともあって、真正面はもちろん斜め前の見やすさもアップした印象です。

 助手席側の死角をなくすために小さなミラーが付いているのはN-BOXの伝統で、その「ピタ駐ミラー」も進化。どこが映っているのかが直感的に分かりやすくなって、運転に不慣れな人でも安心して運転できるような配慮が感じられました。

 ターボモデルの加速フィールはもはや、目を閉じて乗っていたら4気筒エンジンの乗用車だといわれても信じるのではないかというほど、余裕のあるトルクと全域でのなめらかさ、音を含めた質感の高さまで、さらに突き抜けたレベルになっていました。

 市街地風のコースはもちろん、高速域でも回転数を抑えて走れるので、室内の静粛性も先程試乗した自然吸気モデルよりもっと静かです。

 乗り心地や直進安定性、カーブの気持ちよさも格段にアップ。

 これは、ターボモデルのみに施されたルーフライニングとボディの間に入れた遮音材や、ダンパー減衰力の変更、タイヤが15インチになったことも含めて、高速道路を多用したり長距離を走ることが多い人にも満足度の高いレベルを目指した結果です。

 速度を上げていくにつれて、もっと重心が低いクルマを運転しているような感覚になってくるのも、新型N-BOXターボの魅力。

 旧型はアライメント(タイヤの取り付け位置・角度など)がややトーアウト気味(クルマを上から見た際に進行方向に対して逆ハの字)だったところを、新型ではドライバーが乗った状態でほぼトーゼロになるように調整しており、ほんのわずかな差ではあるものの、そうした走行フィーリング向上につながっているのではということでした。

 さらに、自然吸気モデルでも気づいていましたが、アイドリングストップからの再始動がまったく違和感なく、なめらかなことにも感心しました。

 これこそが、先代からメカニズムを継承したことでやり遂げられた、さまざまな「雑味をとる」という進化のわかりやすい部分だといいます。

 このほかにも、減速した直後に強い加速を必要とするようなシーンで、ドライバーが意図しない前後Gが発生してモタついたように感じる部分なども改良し、すべての動作が一筆書きのようにつながった走りができるようになりました。

 これまでホンダは、どちらかというと飛び道具的な斬新な機能を採用したり、何かしら目で見ても新しい、わかりやすいものを提案することを得意としてきたメーカーですが、今回はそうではなく、先代では成し得なかった小さな穴を1つ1つ、丁寧にふさいでいくような地道なブラッシュアップをやってきたのだと感じました。

 ライバルと乗り比べても違いはわかりますが、今回ばかりは先代のオーナーさんが新型に乗ったときに、いちばん違いを実感するような出来栄えではないでしょうか。

 そういう意味で、N-BOX史上もっとも、見た目以上に乗った時の驚きが大きいのが新型N-BOXではないかと感じます。