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日高光啓(SKY-HI)「会社の成長の可能性を閉ざす」 音楽業界の“CDビジネス依存”への危機感とBMSGの改革

Real Sound

 そのヒューマンリソースというコストをプロモーションのためのディスカッションに割けたと言うメリットがあります。

ーー『Masterplan』には、CD+映像(DVDやBlu-ray)のほか、CD+バンドルグッズA,Bなどの形態が発売予定です。「CDの特典を取りやめ、特典に値するグッズを販売する」と記述がありましたが、その「特典」の代わりの第一段階が今回のような「バンドルグッズ」という認識でよろしいでしょうか?

日高:そうですね、将来的にはパッケージそのものをグッズとして手元におきたいものにしたいのですが、日本ではその歴史がない分この規模でやろうと思うと大変です。でも、この規模でやることに意味があると思うのでまだまだがんばります。

ーーCDに付加価値をつけないことで、売り上げが低下するのではないかという懸念があると思います。貴社はもちろん、CDショップやレコード会社など他社への影響も多々出てくるかと思いますが、そういった関連会社への配慮やフォローとしてどんなことが考えられるのでしょうか?

日高:レコード会社には、作品のリリースに紐づけたグッズ販売の際に肖像利用のロイヤリティとしてパーセンテージをお支払いします。自分の頭の中の算盤では(笑)、どちらもプラスになるはずです。

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 都内大手CDショップさんからは直接メールを頂いたのですが、彼らにとってもこの先に成長がないであろうCDの販売に依存することは会社の成長の可能性を閉ざすこと、ゆっくりと終焉に向かうこととイコールになるわけで、健康的ではないビジネスモデルに対して同じ課題を抱えていた同じ立場の方々です。

 強い同意を頂いただけでなく、オフィスまで足を運んでいただき、今後の音楽業界やビジネスに関しての意見交換会を行いましたが、とても有意義なものになりましたし、改めて善い方向に向かえているのだと勇気をもらいました。

ーーCDの大量投棄は韓国のボーイズ/ガールズグループにおいても問題とされており、CDの代わりにミュージックカードやカード型スマートアルバムなどで代替する動きもあります。BMSGとしても、音源をパッケージでリリースすること自体が今後は減少していくと想定していますか?

日高:模索はし続けますが、タイタニック号の舵を取ることはそう簡単なことではありません。

 ただそれをしないと氷山にぶつかって死んでしまうこともまた明らかなわけですから、あの手この手で新しく楽しいリリースを模索していきます。そういったことのためのトライはとても楽しいですし、勝算は強く感じています。

ーーCDの大量買いのほか、一部のファンがサブスクやYouTubeで過剰に再生数を稼いでランキングに影響を与えるチャートハックも話題になります。そういったファンによる行き過ぎたアーティストの支援に関して、日高さんはどのように捉えていますか? また、それらをアーティスト側はどう対策すべきだと思いますか?

日高:やり方……聴かずに“回す”と言う言葉などには違和感を覚えますが、原則として、一回聴いても素敵だけど100回聴いたらもっと素敵、と言うものを作ることに躍起になっている、ハイハットの鳴っている数まで覚えて欲しいくらい(言い過ぎました)精魂を込めている身としては、単純に回数多く聴くことを制限する対策は取れません。

 チャート側とリレーションシップを取ってよりフラットな換算を模索したり、善性を訴えたり、浮かぶことはたくさんありますが、日本人にもっともっと“音楽”を好きになってもらう活動をすることを心がける、これが唯一にして最大の行為だと思います。そしてだからこそ、ファンが熱狂的になりやすいタイプのアーティストこそ、知識とアウトプット両面で音楽的に面白みと説得力のあるものを出す責任があるとも感じます。

ーー旧来のCDビジネスに違和感を覚える反面、日高さん自身もその環境の中で長年活動されてきたかと思います。CDビジネスの良い面も、悪い面も見てきた日高さんは、それに依存しないマネタイズ方法としてどんなことを考えられているのでしょうか? 

日高:前提として、世界の経済は拡大していくわけですよね。スキームや媒体は変われど、経済活動自体は成長していくわけです。

 その中でアイドル、アーティストといった職業は究極のto Cで、その影響力を正しく使えば、どの時代であってもマネタイズする方法はたくさん浮かびます。

 事実として、BE:FIRSTもBMSG全体も、CDの原盤利用による利益は全体の5~10%ほどでしょうか。現代でも少なくともファンクラブやグッズの方が利率は良いですし、B-Townというオンラインサロンに有益なビジネスドキュメンタリーをあげている(およびそう努力している……汗)ので、その収益は本当に大きいです。

 絶対に音楽ビジネスの未来にとって必要なコンテンツにするので、皆さん是非B-Town Architectに入ってください(笑)!

 また余談ですが、元々紀元前には経済より先に音楽が生まれていたと思うので、経済活動がなくなっても音楽は残ります。大昔でも、いい歌を歌える人が対価として魚をもらえたりしたんじゃないでしょうか。

■「芸能の当たり前」より「社会の常識」を追うことが必要

ーー環境問題に関する観点のほか、やりがい搾取と言われる業界の体質改善、アーティストやクリエイターへの適正なギャラの支払いなど、「持続可能な音楽業界」を目指す上で改善しなければならないことは多々あると思います。対アーティストやクリエイター、もしくは一般の制作スタッフという観点において、今後改善しなければならないと思うことはどんなところですか?

日高:一般社会においても、コンプライアンス、ガバナンス、常識といったものは日進月歩ですよね。

 その認識を強く持つこと、「芸能の当たり前」より「社会の常識」を追うこと、また社会自体の改善に関してコンシャスネスを持つことが必要だと思います。本当に大変なことだとは認識していますが!

ーーBE:FIRSTの最新ツアーに170万もの応募があったことも明かしています。直近ではドーム公演も成功させましたが、その影響力の大きさが今回の発表にも繋がっているかと思います。日高さんが今、BE:FIRSTに対して感じることはどんなことでしょうか?

日高:感謝も愛情もたくさんあって、とても一つの設問では答えきれません(笑)。

 そうですね、もちろん、自信にもなりました。自分がBE:FIRSTを通して表現していることも、彼らと一緒に作り上げているものも、世界との向き合い方も、10年前には本当に誰にも必要とされていない(厳密にはその中でも応援し続けてくれていた自分のファンに救われてはいましたが)ものでしたが、絶対に必要なものだと言い続けて、ついに本当に必要とされる日が来たのです。

 ただ、これだけの影響力を持ってしまった以上の責任も感じます。なので、今日は皆に専門家を呼んで金融リテラシー講座を行いました(笑)。社会に対してコンシャスでいれるように様々なトライをしていますが、そのどれにも前向きに取り組んでくれる彼らのポジティブさと好奇心に、改めて救われる日々です。色々と言いましたが、本当に愛しています。無償の愛です。

ーー2024年、まずはBE:FIRST『Masterplan』が第一歩かと思います。貴社の社会への関わり方が大きく変わる年になる予感がするのですが、これから先は具体的にどんな取り組みをされる予定ですか? また、BMSGは今後どんな意志を持って社会貢献に取り組んでいきたいと考えられていますか?

日高:そこに関してはまだ発表のできていないことに関してはTo Be Announcedという形にさせてください。

 ただ、「音楽家は音楽だけしていれば」「アイドルは夢だけ見せていれば」「芸能人は常識知らずでも」いい時代でないことは確かです。社会に対しての影響力を善い方向に使っていくことには真剣に向き合っていきたいですし、向き合っていきます。

※1:https://bmsg.tokyo/topic/240213/

(文=泉夏音)

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