「枕」はただの寝具ではなく、古くは「魂蔵(たまくら)」「真座(まくら)」と呼ばれ、魂を収める場所、神霊が座る場所として大切に扱わなければならないものでした。
【前編】では、「枕を大切にしないと現れる」枕小僧・枕返しなどと呼ばれる怪異の逸話が数多く残されていることをご紹介しました。
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この【後編】では、その枕を用いた鬼婆による凶悪で残忍な犯罪伝説についてご紹介します。
浅茅ヶ原の鬼婆 伝説
「浅茅ヶ原の鬼婆(あさぢがはらのおにばば)」とは、現在の東京都台東区花川戸に伝わる伝説です。
昔々、江戸時代のこと。武蔵国花川戸のあたりには「浅茅ヶ原」と呼ばれる、荒れ果てた土地がありそこには一軒のあばら家があり、老婆と美しい若い娘が二人で住んでいました。
浅茅ヶ原には陸奥国や下総国を結ぶ小道があったのですが周囲にはなにもない荒地で、そこを通りがかる旅人たちは、あばら家を訪れて老婆に一晩止めてくれないかと頼み込んでいたそうです。
快く旅人を泊めてあげる親切な老婆と娘に、旅人はすっかり気を許してくつろぎ、旅の疲れもあって深い眠りにつきました。その姿を陰から見ていた老婆は、残忍な鬼婆の本性を表します。
鬼婆は、寝床にあった石の枕で旅人の頭をかち割って惨殺してしまうのです。(天井から縄をつけた大きな石を頭めがけて落としたという説も)