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川﨑麻世、生き別れた父、離婚……華やかな芸能人生の影「普通で平和な家庭にあこがれる。ずっと怯えて生活していたから」

SmartFLASH

「『たのきんトリオ』の登場が大きかったですね。彼らが爆発的に人気が出て『このままアイドルにしがみついていてもダメだ。次のステップに進もう』と決心したんです。ミュージカルの出演経験も多かったですし、(本格的ミュージカル俳優は)僕の目標でもありました。だけど、劇団四季では力量不足を痛感しました。僕が今までやってきたダンスとはレベルが違いました。それに、『CATS』の舞台は演出のため前方に向かって下がっているんです。(普通に)体を回転させると前に倒れてしまう。体力的にも大変でしたね。やめたくなったか? 筋肉痛になりながらも、休日前夜は六本木に飲みに行って発散しました(笑)」

『CATS』の舞台をまっとうした川﨑は「次はブロードウェイに挑戦だ」と単身渡米し、ミュージカル『スターライトエクスプレス』のオーディションを受けた。

「オーディションを受ける皆さんの歌声に圧倒され、『こんなに上手なのになぜ舞台に立てていないんだ』と戸惑いました。それでも必死にアピールしたら、演出家から『ロンドンでやるオーディションでもう一度、君を観たい』と言われました」

 半年後、川﨑は稽古場から電車とバスを乗り継いで2時間の場所にアパートを借り、自炊をしながら2カ月に及ぶオーディションに参加。合格し、稽古に入った。1987、1988年の日本とオーストラリアの公演に、初の日本人キャストとして参加した。ここで、新たな出会いがあった。

「五代目坂東玉三郎さんが舞台を観てくださっていて、劇場でお会いしたんです。それがご縁で、帰国するとすぐに坂東さんが演出された漫画が原作の『ガラスの仮面』の舞台に立たせていただきました」

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 こうしてキャリアを重ね、舞台、映画、テレビドラマなどで存在感を増していった川﨑は30歳になっていた。

「そのときなぜか、僕が1歳半のときに離婚した父に『会わなければ』という思いが湧き起こったんです。僕自身が結婚生活に苦しんでいたせいかもしれません」

 川﨑は舞台を観に来てくれたことがある父方の叔母に連絡を取り、父の住所を聞いた。そこは病院だった。末期がんで入院していたのである。

「すでに言葉は話せない状況でした。ベッドに横たわっている父を抱きしめると、涙があふれて止まりませんでした。父も僕に会いたかったのかな。そうだったら、嬉しいですね。そして『僕の子供たちにはこんな悲しい思いをさせたくない。子供たちのために頑張ろう』と思い直したんです。

 去年、僕は離婚しましたが、2人の子供はすでに成人したので、まあ、役目は果たせたのかな」

 それから何年もたったある日、京都の撮影所でベテランスタッフが声をかけてきた。

「昔、君にそっくりの役者さんにとてもお世話になったんだよ。安住譲さんという名前なんだけど」

 川﨑は「私の父です」と胸を張った。

 今年、デビューして48年になる。

「あっという間でしたね。理想と考えている役者像は年々違っているんですけど、変わらないのは追い求めても届かないということ。まるでクルクルと回るおもちゃの回し車をこぐハムスターのようです。大好きな舞台も『昨日はうまくできたのに、今日はなんでできないんだ』の繰り返し。役者の間では『舞台は2日目に魔物がいる』と言われているんです。初日は緊張しているのでトラブルはありませんが、2日目には失敗することが多いんです。怖いですよね」

 そして川﨑は、61歳という年齢を感じさせないルックスゆえの悩みも打ち明けた。

「このまま若いルックスでいいのか、年齢に合わせたイメージにしたほうがいいのか悩みました。まわりの方に聞くと、『年齢相応の役は今後もできます。だけど60歳を過ぎて若い役ができる俳優はあまりいません』と言われることが多くて、『なるほどな』と納得しているこのごろです。ありのままの姿で演じることも大切だと気づかされました。だから、これからも『川﨑麻世』を保ち続けます」

 鮨も残り一貫になった。将来、新しいパートナーと過ごすことを考えているか聞いた。

「リラックスできる、普通の平和な家庭にはあこがれますね。自分の人生を振り返ると、ずっと何かに怯えていた生活だった気がしますから」

 川﨑は取材中にたびたび「熟成」という言葉を使った。

「舞台は初日から日々、熟成させることで千穐楽を感動していただけますから」

 今後は、どんな熟成を見せてくれるのか楽しみだ。

かわさきまよ
1963年3月1日生まれ 大阪府出身 1975年、『プリン&キャッシーのテレビ!テレビ!』(よみうりテレビ)の素人参加コーナーでグランドチャンピオンになり芸能界入り。1976年、バラエティ番組『カックラキン大放送!!』(日本テレビ)に出演。1977年、『怪人二十面相』(フジテレビ)でドラマ初主演。同年7月に『ラブ・ショック』で歌手デビュー。第10回新宿音楽祭、第7回東京音楽祭国内大会など各音楽祭で新人賞受賞。劇団四季ミュージカル『CATS』(1984年)が話題になり、『スターライトエクスプレス』(1987~1988年)では日本、オーストラリア公演に初の日本人キャストとして参加した

【秀徳本店 恵】
住所/東京都中央区築地6-26-7宮崎ビル1F
営業時間/11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~22:30(L.O.21:30)
定休日/無休

写真・野澤亘伸
スタイリスト・慶田盛麻実
衣装協力・Losguapos

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