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ショッピングモールでパラスポーツ。非日常の体験から得られる気づきとは?

パラサポWEB

会場の横には、上記の4つの未来の中から応援したい未来にシールを貼ることができる投票型パネルが設置された。中でじっくり体験する時間はなくとも、シールを貼って投票するだけでも意識付けはできる。そうした小さな一歩一歩が共生社会づくりに繋がっていくだろう。

1階で広がるこうした風景を、吹き抜けの2階から見つめる人もたくさんいた。ショッピングモールに買い物にくる、そんな何気ない日常から、誰もが活躍できるより良い未来・社会を感じ、考える。そんな光景がイベントのあちこちで広がっていた。

パラアスリートも感じた手応え

長野パラリンピックに出場したパラアスリート、加藤正さん(写真中央)。パラアイスホッケー体験にきた子どもたちを優しく指導していた

また今回のパラウェーブ広場は、長野パラリンピックに出場した加藤正さん、パラアイスホッケーチームの長野サンダーバーズに所属する新津和良さんと馬島誠さんら、県にゆかりのあるパラアスリートがパラスポーツ体験の講師として参加。パラアスリートが直接参加者に魅力や楽しさを伝えれば、参加者にとってもその日の出来事はより印象深いものになるだろう。参加したアスリートの方々からも多くのポジティブな声が聞こえてきた。

「冬季競技であるパラアイスホッケーも体験していただけたので、とても良かったです。3歳くらいの子でもちゃんと狙って打ってくれましたし、本人も親御さんも楽しそうだったので、とても良い体験だったのではないかと思います。パラスポーツは他にもいろいろな種類があるので今後は他の競技も人の目に触れるようなイベントができたらいいですね」(加藤正さん)

「イオンモールという多くの人が集まる場所でできただけでなく、ブースの見せ方も良かったですし、通る人も声をかければみんな興味を持って寄ってくれて本当に楽しかったです。自分が担当したパラアイスホッケー体験は氷が無い状態でどうやって体験していただくか? が課題でしたが、今回はゴールに入れるゲーム形式でお客さんも楽しんでくれました。そういうところからでいいんだ、というのは発見でしたね。今後も引き続き盛り上がっていってほしいです」(新津和良さん)

パラアイスホッケーの現役選手として活躍する新津さん

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「ここまで多くのパラスポーツとバリアフリーに向けた体験をまとめてショッピングモールでやるのは初めてでした。いろんな競技をやってもらう、見てもらうことは本当に大事ですし、広がっていく第一歩だと思いました。もっともっといろんな競技をやれたら良いですね。私自身ももっと協力していきたいと思いました」(馬島誠さん)

笑顔でブースを盛り上げていた馬島さん

また、長野県と協働でパラウェーブNAGANOに取り組む日本財団パラスポーツサポートセンターの職員の山本恵理さんも、来場者の反応を見て手応えを感じていたようだ。

「子どもたちにたくさん参加していただけました。最初はすごく恥ずかしがってた小さな子が、終わったら満面の笑顔で帰ってくるのを何回も見られてよかったです。今回長野県の方々とパラサポからの企画でやらせていただいたのですが、最初はぎこちなかったスタッフもこうやればいいんだ、というのが進めるうちにだんだんわかってきて、そこからたくさんの人が来てくれて多くの子どもの笑顔が作れたんじゃないかなと思います。とっても良いイベントでした」(山本恵理さん)

イベント中は様々なエリアに顔を出し、参加者と積極的にコミュニケーションをとっていた山本さん

共生社会への気づきをパラスポーツを通じて広めていく意義

当日は老若男女、多くの人が列を成して参加していた

最後に、今回のイベントの手応えについて笠原さんに伺った。

「親子連れ中心に年配の方から若い人まで積極的に参加してくれたことがとてもよかったです。パラスポーツ体験を楽しんでいただいたのはもちろん、途中のクイズなどで取り上げた点字ブロックや駐車場は、会場の外に出ればすぐ目の前にある世界です。そこの理解を少しでも広められたのは意義があったのではないでしょうか。これからも草の根活動にはなると思いますが、パラスポーツと掛け合わせて障がいや共生社会への理解が進む取り組みを幅広くやって行きたいですね」

また、長野県は2028年に全国障害者スポーツ大会の開催を予定している。そのためにも、パラスポーツの認知をさらに広めていきたいと笠原さんは語る。

「長野県は冬季オリンピック・パラリンピックを開催した経験があり、加藤正さんのように県にゆかりのあるアスリートもいます。パラスポーツの露出を増やし、例えば県民人口あたりのパラスポーツ体験率1位になったとすれば、その数字は必ず障がいや共生社会に対する理解も比例して高まっていくのではないでしょうか。パラウェーブNAGANOの取り組みがきっかけとなって、2028年の全国障害者スポーツ大会を見たりボランティアに行ったり、参加する人が一人でも増えてほしいと思っています」

障スポ(全国障害者スポーツ大会)は、まだまだ知らない人も多い。「国体(国民スポーツ大会)なら聞いたことあるけど、障スポって何?」 という人も多いという話は取材中に出てきたフレーズだ。しかし、今回のイベントのようにパラスポーツの面白さに触れ、共生社会に少しでも考えたことがあるし人が増えていけば、「そういえば今度大会あるよね?」といった会話が自然と出てくるようになるだろうし、より良い社会の実現にも近づき、大会が地域にもたらす価値もより大きいものになるはずだ。

多様な人々が心地よく暮らせる未来に向けて、パラスポーツの波を起こし続ける「パラウェーブNAGANO」。今後もさらに多くの人々に関心を持ってもらえる場づくりに期待したい。

text & photo by Yoshio Yoshida

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