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アスリートのために「夢を諦めない場所」をつくった三条市。半農半バスケで地域を活性化

パラサポWEB

柴山氏は、移住アスリートが農業に従事することによる地域活性化を考えたわけだが、それを担うアスリート自身にも大きな恩恵があると語る。

「農業の価値は、米や野菜の農産物を生産することにあるんですが、もうひとつ“人づくりの価値”があるだろうと考えました。農業は収穫できれば大きな喜びに繋がりますが、良いことばかりじゃありません。台風がきて作物が全滅したりなど、辛いこともあります。それを乗り越えることによってレジリエンス、回復力がつくでしょう。また、農業は独りよがりでは絶対にできないものです。天候に左右はされますが、収穫というゴールが決まっているのでみんなで力を結集する、他人と協調する、助け合う力が身につくんです。それも農業の“人づくり”という価値のひとつの側面ではないかと思いました」

柴山氏は、スポーツによる地域活性は地域のためだけでなく、それを担うアスリートの人間形成にも役立つとの信念のもと、2015年にNPOを立ち上げ、2018年に移住アスリートを募集し、2019年にまず男子の3人制バスケットボールのプロリーグに参入を果たした。氏の構想を聞いていると、農業の共通スキルは競技のスキル、メンバーシップなどにも大きな影響を与えそうな気がしてくる。

“里山親子稲刈り体験イベント”を開催。里山の良さ、農作業の大切さについて多くの人に学んでもらうことも大事な役目

「農業がバスケットボールに関わってくる部分は多いと思います。たとえば、チームではリーダーではないけれども、農作業のある部分ではリーダーになれる。そんな風に自然発生的に、その場その場でリーダーが出てくれば良いと私は考えているんです。一人ひとりに、チームにいるときとは別に役割がきちんとある。それをお互いに認め合うことができれば、(競技の内外含め)ヒエラルキーも固まらないし、自由な発想でものが言えるチームになります。そうやってみんながそれぞれの能力を伸ばしていくことができれば、現役を終えたのち、新たに自分の人生を作っていくにあたって大きな力になるのではないでしょうか」

放っておけば獣しか棲まない場所になってしまう……。その危機感からアスリートの移住をすすめ、地域の活性化に取り組んできた柴山氏の言葉はとても熱い。その熱意が若い移住者を呼び込み、地域を変えつつある。地方の過疎化に悩む自治体や、地域活性化を課題としている人々にとって、柴山氏の発想と行動力には学ぶところが多いのではないだろうか。後編では、この三条ビーターズの選手をはじめ、チームを経済的に支える営業スタッフや、身体面を見るトレーナーなど、一人ひとりの思いに迫ってみたい。

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text by Reiko Sadaie(Parasapo Lab)
写真提供:三条ビーターズ

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