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「防災士」ってどういう資格? 取得のメリットや活用方法を解説

防災ニッポン

防災士資格はどのように活用できるのでしょうか。防災士資格の活用方法を紹介します。

防災士は就職に有利な資格ではない

防災士は就職で有利になる資格ではありません。仮に防災関連の仕事に就職や転職をしたいという理由で防災士を取得しても、資格で採用が決まることや資格手当が出るようなことはないでしょう。

ただし、仕事によっては防災士という肩書があることで信用度が高まったり、企業の防災担当に抜擢されるようなケースがあります。あくまでも、暮らしに役立つ資格の一つであると認識した上で資格の取得を検討しましょう。

地域・企業の防災で活用できる

防災士の資格は地域・企業の防災活動において活用できます。災害発生時は、行政機関自体も被災して対応に追われるケースがあるため、適切な避難の指示が受けられなかったり、救助や対応が遅れたりすることもあります。

このような場合に、企業や地域の防災リーダーとしての活躍が期待されるのが防災士です。災害が起こった際、適切に行動を取れるように指示を出したり、避難経路の確保を行ったりします。

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また、平常時においても、地域の防災リーダーとして、企業や地域の人々に防災の啓発を行い、自分が所属するコミュニティの防災意識を高めていくことも役割の一つです。

中には防災士が主体となって防災訓練や防災教育を行っている企業や地域もあります。

防災士資格の取得で得られる知識

防災士資格を取得する過程で防災士養成研修を受けるため、研修を通して家庭や地域での防災について幅広い知識を習得することができます。

また、地震や津波、気象災害のメカニズム、備蓄や住宅の耐震化、ハザードマップの使い方などの知識も得られるでしょう。日常で防災について学ぶ機会が少ない方にとって、資格取得を通して幅広い知識を得られることが大きなメリットです。

「防災について知りたい」「防災の基礎知識を習得したい」という方には防災士資格の取得をおすすめします。

防災士資格を取得するまでの流れ

写真:PIXTA

防災士資格を取得するまでの流れは以下の4ステップです。

1. 防災士養成研修講座を受講する
2. 防災士資格取得試験に合格する
3. 救急救命講習を受講し、修了書を取得する
4. 防災士認証登録申請をする

ステップごとに詳しく紹介します。

防災士養成研修講座を受講する

防災士になるためには、日本防災士機構が認定した研究機関が実施する「防災士研修講座」を受講し「研修履修証明」を取得する必要があります。

研修講座は日本防災士機構が定めたガイドラインに沿ったカリキュラムで構成されており、防災や災害対応の専門家を講師として、集合研修の形式で行います。

集合研修では防災士教本に示している21項目のうち12項目以上を履修する必要があるため、最低でも2日間以上の日程で受講しなければなりません。また、集合研修で履修しなかった講目については各研修機関が定めたレポートの提出が必要です。

講座内容は以下の6章から成り立っています。

・第1章 災害発生のしくみ
・第2章 災害に関する情報
・第3章 公的機関や企業等の災害対策
・第4章 自助
・第5章 共助
・第6章 防災士制度

研修は「都道府県」「市町村」「大学等教育機関」「民間法人」などで受けることができます。都道府県によって研修機関の数は異なるため、日本防災士機構のサイトでチェックしてください。

なお、自治体が主催している防災士養成講座については、「自主防災組織の推薦を得ること」など、参加する上でさまざまな条件が定められているケースがあります。

防災士資格取得試験に合格する

集合研修最終日、同じ会場で「防災士資格取得試験」が実施されます。

試験はマークシートの3択式で30問出題され、記述式や論文式などはありません。試験時間は50分で、80%(24問)以上の正解で合格となります。

試験問題は全て研修時に配布される防災士教本の中から出題されるため、教本をしっかり読んで学習しておくことが合格するためのポイントになります。

なお、過去の試験問題は公開されておらず、試験問題の持ち帰りはできません。

防災士の合格率

2022年度の防災士資格取得試験合格率は91%です。2019年4月から、合格基準が70%から80%に引き上げられました。それにより難易度が高くなっていますが、10人のうち約9人は合格するため、しっかり勉強すれば合格できる確率は高いでしょう。

試験に落ちた場合について

防災士資格取得試験を受験して不合格だった場合、無料で再受験ができます。試験の日程などについては、受講した研究機関や日本防災士機構に確認してください。

救急救命講習を受講する

防災士の試験に合格したら「救急救命講習」を受講し、その修了証を取得しなければなりません。
救急救命講習は近所の消防署、自治体、日本赤十字社等の公的機関が主催して行われています。
救急救命講習は心肺蘇生法やAEDを含む3時間以上の内容です。

救急救命講習受講修了証の有効期限は発行日から5年以内で、かつ、その講習の発行者が定めた有効期限内のもののみ有効です。失効している場合は再受講が必要です。

防災士の資格を取得するためには「救急救命講習」受講の有効期限内である必要があるため、受講してから期間が経過している場合は注意しましょう。

医師や救急救命士は改めて受講する必要はありませんが、看護師などは、有効期限内に救急救命講習を修了していない場合、改めて受講する必要があります。

また、職場で救急救命講習を受けていても、それが防災士の資格認定基準を満たしているとは限りません。実施内容がわかる資料や修了証の写しを用意し、日本防災士機構に確認しましょう。

防災士認証登録申請

防災士研修講座の受講、防災士資格取得試験の合格、救急救命講習の受講の3つがクリアできたら、日本防災士機構に「防災士認証登録申請」をすることができます。

申請に必要なものは以下の3点です。

① 写真2枚(タテ3cm×ヨコ2.4cm)
② 救急救命講習の修了証の両面コピー
③ 防災士認証登録申請書

日本防災士機構により防災士資格認証登録が行われ、「防災士認証状」と「防災士証(カード)」が交付されます。

防災士の受験資格・費用

最後に防災士の受験資格や費用を紹介します。

防災士の受験資格について

防災士の試験は受験資格なしで誰でも取得できます。年齢制限も設けていませんが、研修内容が成人を想定していることや社会的な役割から考えて、中学生以上が望ましいといえます。しかし、小学生が大人と一緒に受験して合格した例もあります。

国籍も問いませんが、研修・試験・救急救命講習が日本語で行われることから、日本語の理解が必要です。

また、防災士の資格には有効期限がなく更新もありません。

防災士の資格取得にかかる費用

防災士の資格取得にあたって防災士養成研修講座を除いた費用は以下の通りです。

・防災士教本:4,000円
・防災士資格取得試験受験料:3,000円
・防災士認証登録料:5,000円

合計12,000円が必要となります。

防災士養成研修講座の費用については研修の実施機関によって異なりますが、民間の研修機関の場合だと約50,000円です。

防災士資格の取得にあたって、防災・災害対応・応急手当ての実績がある以下の方を対象に特例制度を設けており、資格取得の要件が一部免除されることで一般受講者と受講料に違いがあります。

・警察官(巡査部長以上、退職者を含む)
・消防吏員(退職者を含む)
・消防団員(分団長以上、退職者を含む)
・自衛官(3曹以上、退職者を含む)
・赤十字救急法救急員資格認定者(有効期限内の認定証が必要)

また、自治体によっては防災士の育成に力を入れているところもあり、防災士の資格取得にかかる費用を一部負担や全額負担しているケースもあります。

助成を受けるためには条件があるため、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。

まとめ

今回は防災士資格の概要や資格取得の流れ、メリットなどを解説しました。防災士は企業や地域の防災リーダーを目指す人や、防災の知識を増やしたい方向けの資格です。

防災士を目指す過程で防災について幅広い分野を学習し、基礎知識を身につけることができます。ここで得た知識が万が一のときに役立つ可能性も大いにあるでしょう。

自分や大切な家族を守るためにも、防災士の資格取得を検討してみてください。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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