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日本サッカー協会と東京藝大がコラボ!スポーツ×アートが生むセンサリールームとは

パラサポWEB

「貸出を始めた当初は、大きな作品もレンタルしてもらえるように送りやすいパッケージを作ろうとか足りない機能を付加していこうという話にもなったのですが、おそらくそういうことではないんだろうなと。それで、もう一度原点に帰ろうということで、2023年度は視点を変えてセンサリールームプロジェクトに取り組むことにしたんです」(新妻さん)

ただ刺激を遮断するのではなく、心地いい空間を作る

日比野さんとも関わりの深い新潟県十日町市莇平集落で合宿生活を送り、地元の人たちと交流を深めながら「迎え入れる」を探す受講生も

2023年度は、それまでの活動で見えてきた“迎え入れる気持ち”、“迎え入れる形”に着目してフィールドワークを実施。受講生一人ひとりが様々な場所を訪れ、「迎え入れられている」、「心地がいい」と感じることを徹底的に探し出した後に、それぞれが理想とする架空の町“センサリーシティ”のマップを作成したそう。

「DOORは、単なるセンサリールーム開発チームではないので、自分事としてどう活かしていくのか、どうやって福祉の世界に還元していけるのかというところがやっぱり大事。そこで今年は、社会全体、地球全体を心地のいい場所にすることを意識した授業を展開しました」(日比野さん)

受講生の一人が制作したマイセンサリーシティのマップ。模造紙サイズの大きな紙に、心地いいと感じた「迎え入れる」がぎっしりと詰まっている

「マップを作成した後、街全体を再現することは難しいけれども、感覚を再現することはできるということで、それぞれマップの中から要素を1つ選んで、自分が感じたセンサリーを1分の1で作ったんです。それがこれなんですよ」(新妻さん)

写真左上:作品『かぜ と たわむれる』。風の動きを眼と耳と肌で感じることをゴミ袋を被ることで表現 写真右上:東京藝術大学DOOR特任助手の新妻葉子さん 写真左下:作品『トンネルめがね』筒の端から覗き込むことで、トンネルの中に差し込む光の心地よさなどを体感できる 写真右下:作品『つい・・・もてあそぶ。』布の中には様々な植物の種が詰められていて感触や音、重さなどの違いを感じられる

今回、DOORが出展した芸術未来研究場展(会期終了/東京藝術大学大学美術館、2023年11月10日〜26日)にお邪魔し、これまでのセンサリールームプロジェクトの内容と共に、2023年の受講生が制作したユニークな作品を体験。一般的なセンサリールームは静かで落ち着く空間ですが、そこに心地いいと感じる道具や機能が加わることで、万が一、興奮をしてしまったり居心地が悪いと感じたりしたときでも、スムーズに情報を遮断して意識を逸らすことができることを実感しました。

スポーツ×アートが生み出すものとは?

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ところで、現代の日本を代表する美術家の一人でもある日比野さんは、なぜJFA社会貢献委員会の委員長を務めているのでしょうか。アートとスポーツはまるで違うもののように感じますが、どちらも身体表現であり大差がないと日比野さんは語ります。

「足元にボールがあればサッカーになって、手元に筆があれば絵になるというだけで、アートもスポーツも根本は一緒で『表現』の一つ。道具を使わないマラソンランナーだって、東京マラソンに参加したり、自分が走る姿を家族や沿道の人に見てもらったりするのは自己表現だと思うんです。そういった捉え方で、美術館にあるアートだけでなく、スポーツや街の中にも『表現の場』を広げていけば、センサリーな空間が増えて居心地のいい地球になるんじゃないかと考えています」(日比野さん)

東京藝術大学でもダイバーシティ&インクルージョンな環境づくりを行うなど、多様な社会を目指して精力的に活動する日比野さん。多様な人々が集まる東京藝術大学には、元々、個性や文化が受け入れられやすいという特性があるそうで、「一人ひとりの違いを尊重するという考え方を基盤にすれば、多様性ある社会を築くこともそれほど難しくないはずです」ともおっしゃっていました。

それぞれが持つ個性や文化を尊重する東京藝術大学と、アートの力を借りて新しい応援スタイルを取り入れるJFA。センサリールームを通して見えてきたのは、多様な社会を実現しようとする両者の柔軟かつまっすぐな姿勢でした。スポーツ×アート。このような強力なタッグによって、今後、より自分に合ったスタイルでスポーツやスポーツ観戦を楽しめるようになるのではないでしょうか。

text by Uiko Kurihara(Parasapo Lab)
photo by Yoshio Yoshida
写真・資料提供:Diversity on the Arts Project

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