一回戦負けでメダルなしに終わった世界選手権から3ヵ月。ナショナルトレーニングセンターと新たに入会したジムでトレーニングに励み、背中など上半身を中心に筋力アップに成功。東京パラリンピックでは81kg以下級、73㎏以下級だった選手らに負けないパワーを手に入れた。
世界選手権を兼ねた「バーミンガム2023IBSAワールドゲームズ」では初戦敗退。「この階級の大きな人たちへの対応がまだできていない」と語っていたphoto by TEAM A
「嫌がっていたプロテインを飲んでいるのを見て、食事への意識も変わったと感じた」(強化委員長の佐藤伸一郎氏)
「体が大きくなり、服が入らなくなったと話してくれた」(日本代表の遠藤義安監督)
そう周囲も話すほどの変化だった。
「もともと瀬戸の技術は高く、ストイック。(上位選手に)フィジカルでイーブンになれば勝てると考えていた」とは佐藤氏。世界選手権の後、今回同様に重要な大会だったグランプリ(バクー大会)の出場を見送り、フィジカル強化に専念させた。
瀬戸はフィジカルを鍛えて今大会に臨んだ広告の後にも続きます
決勝戦では10月のアジアパラ(中国・杭州)で敗れたカザフスタン選手に開始約40秒で大内刈りを仕掛けて技あり。狙いがうまくハマって「自分でもちょっとびっくりするくらいの感覚でした」と瀬戸。最後は相手のダイビングによる反則で優勝を決めた。
優勝した瀬戸はブーケを手に笑みをたたえたここからがスタート
表彰式では、約1年半ぶりに君が代を流し、「だいぶ久しぶりだったので、言葉にならない感じでした。やっぱりあれが一番いいですね」としみじみ語った瀬戸。
残るグランプリは3大会。パリの出場権は、2024年6月の世界ランキングで決まる。
「(この2年間)悪い風続きだったので、ここをきっかけにひっくり返していきたいと思います」
自国開催のグランプリで表彰台の中央に上がったようやく立ったパリへのスタートライン。この先、どんな向かい風が吹こうとも、まっすぐ、そして力強くパリへの道を突き進むだけだ。
text by Asuka Senaga
photo by X-1