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週末の楽しいお出かけが学びと成長の機会に! インクルーシブなスポーツイベント

パラサポWEB

「車いすの運動が特に良かったです。私も子どもも触れる機会がなかったですし、子どもにとっても実際に乗ったことで車いすの方たちを身近に感じられるようになると思います。
また、桑野さんが最後に『今回を機会にして、これから車いすの方たちにぜひ声をかけてください』と話されていて、あ、私も声を気軽にかけていいんだと思いました。私一人では多分できなかったことですし、子どもを通して多くのことを学べたと思います」

取材を実施した7日以外のインクルーシブトレーニングでは、障がい当事者の子どもも参加したそう。障がいのあるなしや年齢の違いに関わらず、リラックスして身体を動かす経験から学び感じるものは、とても大きいように思えました。

一緒に理解を深めて、親子のコミュニケーションの場に

スポーツを通した親子の気づき・学びの場となったのは7日に実施された親子かけっこ教室もその一つ。「今回はできる・できないにかかわらず、親子一緒にチャレンジしてみようという形で実施しました。親御さんも一緒に参加して、今お子さんが何につまずいているのかということを知り、共通の理解を深めることで子どもとのコミュニケーションにもつながればいいですよね」と語ったのは、講師として参加した塚原直貴さん(陸上/北京2008オリンピック男子4×100mリレー銀メダリスト)です。

走る動きの基本を一つひとつレクチャー

今回のかけっこ教室は『姿勢』を大きなテーマとして行われましたが、そこには以下のような思いがあることを塚原さんは話してくれました。

「スポーツや運動でパフォーマンスを出せる正しい姿勢があるということを、基本動作である“走る”ことを通して学んでもらえればと思います。それは何も陸上やスポーツだけでなく、勉強や読書、普段の生活などでも姿勢を良くすることで体に負担がかからず、集中力が続きますよね。今回のイベントが、そうしたことを親御さんから子どもたちに話していただけるような機会になればと思います」

塚原さんの合図に合わせて、ようい、ドン!互いの走る様子を見て、言葉を交わす親子も

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一方で、パラスポーツのイベントで陸上教室を開催したのは今回が初めてだったという塚原さん。この日は障がいのある子の参加はなかったものの、参加があった際には車いすバスケットボール体験のナビゲーターを務めた根木さんに入ってもらいながら、障がいのある子も一緒に教室を行う予定でした。

『スポパラ!』のようなイベントを通じて体験するパラスポーツの可能性の大きさを、塚原さんも会場で感じていたようです

「車いすの方や障がいのある方も差がなく同じように“走る”という感覚を味わえるようなことができれば面白くなると根木さんともお話していたので、(これからも)もっとあらゆる人を巻き込んだイベントができればと思っています。
フラッとやって来て、苦手意識も抵抗感もなく楽しめるのが今回のようなイベントの魅力の一つ。特にパラスポーツはゲーム性があってすごく楽しいですし、逆に健常者も車いすを使って遊んでもいいと思うんですよ。また、自分自身を超えていくことが身近に捉えられるので、ボーダーレスに楽しめる生涯スポーツになり得ると思います。僕も魅力を感じた一人として今後も発信していきたいですね」

インクルーシブなイベントをもっと身近に

3日間、楽しみながら多くの親子が気づきを得る場になった『スポパラ!』。これまで紹介した以外にも、田中佑典さん(体操/ロンドン2012オリンピック団体総合銀メダリスト、リオ2016オリンピック団体総合金メダリスト)による子ども体操教室(8日)や、障がいのあるなしに関係なく自分がどんなスポーツに適性があるかを知ることができるDOSAスポーツ能力測定会(8、9日)、親子で一緒に「ふつう」と「ちがい」の世界を学ぶ「あすチャレ!ファミリーアカデミー」など、障がいのあるなしに関わらず参加できる・障がいについて楽しく知ることができるプログラムが行われました。

8日・9日に実施されたDOSAスポーツ能力測定会は、満席に。9日には、子どもにスポーツをさせてみたいのできっかけになればと、親御さんに連れられて車いすユーザーの子どもも参加しました

また、「HEROsトークショー」では、村田諒太さん(ボクシング/ロンドン2012オリンピックミドル級金メダリスト)、河合純一日本パラリンピック委員会委員長、塚原さん、田中さん、地元・静岡出身のボートレーサーである森下愛梨選手、「あすチャレ!ファミリーアカデミー」にも参加した山本恵理選手(パラ・パワーリフティング)と、日替わりで多くのアスリートが登壇。アスリートからこそ聞ける貴重なお話に、多くの人が耳を傾けていました。

7日のトークショーに登壇した村田諒太さん(写真左から2人目)は、「負けた後の気持ちの切り替え方」に関する質問に、「切り替えなくてもいいのではないでしょうか。お酒を飲んだり遊んだりして、その場では気が晴れたつもりになっても、やっぱり負けた悔しさはその競技でしか返せませんから、競技を頑張るしかないと思います」と回答。アスリートだからこそ語れることでありながら、スポーツ以外の場でも響く言葉でした

盛況だった3日間を振り返り、イベントを開催した浜名湖競艇企業団宣伝課課長補佐の白井幸倫さんは、「静岡県~愛知県東部地域住む多くの方にインクルーシブスポーツの更なる普及と将来のパラアスリートの輩出の一端を担えれば」と、今後もパラスポーツ関係団体と協力しながらさらに盛り上がるイベントとして発展・定着していくことを将来の展望として見据えます。インクルーシブトレーニングに参加していたお母さんも「住んでいる近くで子どもと一緒にこういう体験ができるのは嬉しいですね」と、今回の『スポパラ!』のようなイベントが定期的に開催されることを歓迎していました。

子どものころに経験したことを、大人になってもずっと覚えている人も多いでしょう。パラスポーツを体験し、アスリートと出会った経験は、子どもたちにとって週末の楽しい思い出に留まらない、豊かな価値観を自然と身につけるような貴重な機会になる可能性を秘めています。障がいのあるなしに関わらず楽しめるイベントがもっと増え、より多くの人にとってもっと身近になると、数字以上のインパクトが社会に生まれてくるのかもしれません。

text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)
edited by parasapo
photo by Haruo Wanibe

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