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ラグビー選手、負け確定残り2分のパフォーマンスが変わった理由

パラサポWEB

キムタカさん:幸い、僕たちのファンの方々は、とても好意的で、Sports Caresの活動を知ってドナー登録をしましたというメッセージをいただくことも多く、すごく嬉しいです。いろいろなところで記事にもなっていますが、ラグビーを始めたのに再生不良性貧血でできなくなってしまった謙智(けんち)くんという少年がいるんですが、彼のご両親に会ったとき、偽善でもなんでもいいからドナー登録をしてほしい、息子を助けてほしいとおっしゃっていたんです。それくらいドナーを必要としているってことなんですよね。その言葉がずっと耳に残っていて、だから僕らの心の芯にあるのは、ドナーを必要としている人たちで、まわりの声は気にしないことにしました。

たけひろさん:社会貢献活動っていうと、する側が尽くすといったイメージが強いですが、必ずしもそうである必要はないと思います。たとえば毎年11月に東京の代々木公園で「東京雪祭」というイベントが開催されています。献血や骨髄バンクへの登録の促進を目的としたイベントなんですが、実際行ってみると、人工的に作られた雪山でスノーボードコンテストを行ったりしている楽しいお祭りなんです。主催者側の目的はもちろん献血や骨髄バンクの認知度を上げるためなんですが、“楽しい”が前面に出ていて、こういうやり方もあるんだと驚きました。偽善だとか世の中のためになるならないとか、そんな大げさなことじゃなくて、楽しいからとか、アスリートがやっていて面白そうだから、カッコいいから自分もやってみようかな、そんな社会貢献があってもいいと思うんです。

――骨髄バンクとコラボレーションしたオリジナルシリコンバンドも、社会貢献を身近にするためのアイデアなんでしょうか?

たけひろさん:はい、献血に行きましょうとか、ドナー登録しましょうと言うよりは、応援している選手と一緒のものだからとか、おしゃれだから身につけようというところから始めてもらって、そこから社会貢献に一歩踏み出してもらえれば嬉しいなという思いもありました。そんな風に、もっと社会貢献へのハードルが下がるといいなと思いますね。

「誰かのために何かをしたい」アスリートもサポート

――Sports Caresではおふたりが実際に社会貢献活動をする他に、アスリートから社会貢献に関する相談を受けて、具体的な活動に結びつけるといったことをしているそうですね?

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キムタカさん:実は、Sports Caresの趣旨としては、そちらの活動の方がメインとも言えます。何かしたいけど方法が分からないとか、ひとりじゃできないというアスリートたちがいたら、じゃあみんなでやればいいんじゃない? と提案しています。僕らが出会った「A-map」というプログラムにはサッカーや相撲、テニスなどいろんな競技の現役選手や引退した選手が参加していたんですが、みんな誰かのために何かをしたいという気持ちを持っていました。

――皆さん、その競技ではヒーローだったりするわけですから、ヒーローがたくさん集まれば、賛同してくれるファンも多そうですよね。

たけひろさん:はい、すでにラグビー以外の競技の選手からも相談を受けていますし、一緒に活動したいと言ってくれているアスリートもいます。そうした社会的に影響力のある選手が参加してくれれば、社会貢献についての知識が広まっていってくれると期待しています。

自分の想像力が、誰かの命を救うこともある

――やはり活動を広めるということも大切ですか?

キムタカさん:先程の再生不良性貧血の謙智くんのご両親もそうですし、『てんかん』についての理解を深める啓蒙活動をしている方とか、マイノリティの方などにお会いすると、皆さん共通して言うのが、「まずは知ってほしい」ということです。ですから僕は皆さんにSports Caresの活動に賛同してほしいとか、募金をしてほしいとか具体的なことはあまり求めていません。唯一伝えたいのは「知ってほしい」ということです。例えばネットを見ていると、「そのワンクリックが長期療養をしている子どもの治療に役立ちます」とかっていう広告があるじゃないですか。自分にとっては簡単な1クリックでも、それをとても大きく感じる人、それを喉から手が出るほど待っている人がいるということを知ってほしい。僕らが30~40分の時間を使って献血に行くだけで、その結果、泣くほど喜ぶ人がいるということをイメージしてほしい。自分の小さな一歩が、誰かにとっては大きな一歩なんだ、自分の想像力が誰かの命を救うこともあるってことを知ってもらえたら、僕らは嬉しいです。


たけひろさんが使っている靴紐とSports Caresオリジナルのシリコンバンドに共通しているのはオレンジ色。実は、骨髄バンクに登録した人がドナー候補に選定されると、オレンジ色の封筒に入った通知が届くのだそうだ。オレンジ色にそんな意味があることを、私は恥ずかしながら今回の取材をするまで知らなかった。Sports Caresのインスタグラムには、オレンジ色のシリコンバンドの画像とともに「Sports Cares×骨髄バンクのオリジナルシリコンバンド。誰かのためにパワーがみなぎるようにと“HERO is YOU”のメッセージを刻んでいます!みんなで誰かのヒーローになりましょう」と書かれている。まずは知ることから、ヒーローへの一歩を踏み出してみてはどうだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
写真提供:一般社団法人Sports Cares

PROFILE 木村貴大
1993年生まれ・福岡県出身。筑波大学を卒業後、豊田自動織機シャトルズ(現・豊田自動織機シャトルズ愛知)に加入。その後、サンウルブズ、コカ・コーラレッドスパークスなどを経て、2021年ジャパンラグビーリーグワンのサントリーサンゴリアス(現・東京サントリーサンゴリアス)に入団。2022年9月、一般社団法人Sports Caresを設立、代表理事に就任。

PROFILE 木村勇大
1992年生まれ・大阪府出身。近畿大学を卒業後、ジャパンラグビーリーグワンの日野レッドドルフィンズに所属。2022年9月、一般社団法人Sports Caresを設立、代表理事に就任。

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