スイスだけでなく、世界の車いすレースを引っ張る存在となったフグは、今ではパラプレジックセンターで治療とリハビリを受けている患者の憧れの存在でもある。だからといって、施設ではスポーツだけに力を入れているわけではない。
フライは言う。
「車いすユーザーにスポーツをすすめているのは、全員にパラリンピックに出場できるアスリートになってもらうためではありません。スポーツを通じて体力をつけて、あきらめずにチャレンジする精神を養えば、自立した日常生活を送るための助けになります。すると、自らに誇りを持てるようになる。障がい者こそスポーツをやるべきなんです」
パラプレジックセンターが目指すのは、患者一人ひとりの「クオリティ・オブ・ライフの向上」だ。クオリティ・オブ・ライフは日本語では「生活の質」や「人生の質」と訳されることが多い。健常者と障がい者がともに生きる共生社会をつくるために、まずは障がい者のクオリティ・オブ・ライフを上げる。それが大切なのだという。パラスポーツの世界で圧倒的な強さを見せる3人のスイス選手も、そのロール・モデルとなっている。
フグはフライに憧れ、アスリートとしての道を歩み始めた。今では彼より若い世代の車いすアスリートが、フグに憧れている。アスリートに必要なことについて、フライはこう話す。
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「結果を出すために必要なのは才能ではありません。どれだけ情熱があり、チャレンジを続けるかです」
スイス代表選手の車いすレースでの圧倒的な強さの背景には、その情熱をサポートするパラプレジックセンターがある。そして、それを支えるのは190万人の有料会員で、それがスイスの車いすアスリートの強さにつながっている。
editing by TEAM A
text by KANPARA PRESS(Yukifumi Nishioka)
key visual by Takao Ochi