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バスケW杯がもたらした誇りと自信。沖縄が目指す明るい未来とは

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一方、沖縄市の中心市街地であるコザゲート通りではW杯開催期間中の8月26日、27日、9月2日、3日の週末4日間にかけて『KOZA FES 2023〜Welcome to Okinawa City〜』が開催された。

W杯開催を通して、沖縄の文化、伝統芸術、食文化なども紹介される機会が創出された

当日は歩行者天国となり、W杯のパブリックビューイングをはじめ沖縄出身の人気アーティストが出演する音楽ライブ、琉球舞踊や沖縄民謡などを披露する文化ステージ、エイサー、3×3バスケットボール、ダンスなどのイベントが開催されたほか、沖縄県内の美味しい食べ物を堪能できるキッチンカーが並ぶなど、沖縄の文化、伝統芸能、音楽、グルメとバスケットボールW杯が融合。取材班が訪れた27日もお昼過ぎには年配の方から子ども、外国人まで多くの人出でにぎわっており、バスケットボールW杯という単体イベントで終わるのではなく、街全体を巻き込んだ大きな“お祭り”として盛り上がっていた。

大会開催までの道のりを振り返る沖縄市経済文化部観光スポーツ振興課の宮里さん

バスケットボールW杯に合わせた市の経済効果、活性化に関する事業を担当した沖縄市経済文化部観光スポーツ振興課の宮里大八さんが、大会開催までの道のりを振り返った。

「最初に大会1000日前イベントを開催し、その後、定期的1年前、1カ月前など様々なイベントを通して、大会本番を迎えました。はじめはなかなか熱量がどうなるかという感じだったのですが(笑)、今は街なかのシティドレッシングや今回のフェスなど多くの方々が楽しんでいただいており、沖縄アリーナの熱気が街なかにもどんどん浸透しているのかなと思っています」(宮里さん)

行政と商店街で共通のゴールを目指し取り組んできた日々を感慨深く振り返る桃原さん

予期せぬ新型コロナウイルス感染拡大により思うような活動ができない時期もあった。しかし、「沖縄アリーナ、W杯を地域活性化につなげていくのは行政としてのもともとの命題でもありました」と同課の桃原勇介さん。イベントだけではなく、バスケットボールを絡めた商店街や店舗のスタンプラリー、市内の各地域をつなぐシャトルバスの経路を整備するなど、W杯を契機とした地域活性化事業をコツコツと作りあげてきたという。その一つの集大成とも言えるのが、この『KOZA FES 2023』だった。

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「感慨深いですね。昨年から行政と商店街で協議を重ね、ぶつかりながらも、共通のゴールを目指し、試行錯誤しながら準備をしてきました。今日(27日)が盛り上がることで来週までにはもっと話題になるでしょうし、行政と地域がタイアップして作りあげたことで行政や地域の自信になり、今後、このプライドとノウハウがつながっていけばうれしい、また外から見ても『沖縄市はすごく盛り上がっているな』と見てもらえるよう取り組んできました」(桃原さん)

W杯をきっかけにもたらされるレガシーへ期待を寄せる

W杯の経済効果がどれほどのものか具体的に分かるのは大会が終わってからになるが、大会をきっかけとした地域発展・活性化の動き、それによってもたらされるレガシーは着実に沖縄市に浸透し、根付いていく――そんな手応えが2人の表情からも感じられた。

「大会によって街がこれだけ元気になるということもそうですし、やはりW杯を受け入れることができたという一つの誇り、シビックプライドが生まれるきっかけになるのが今回の大会だと思います。そして今後、他の世界的なイベントも受け入れることができるという経験値を高めるきっかけにもなったと思いますね。私自身もW杯の事業に関わった当事者として自分の経験をどんどん伝えていきたい。また、大会に参加することでこんな楽しいことがあった、色々な文化交流ができたという経験を高めることもできたと思いますので、子どもからお年寄りも含めてより多くの人たちみんなで作りあげたレガシーとして、また次のイベントにつなげていきたいです」(宮里さん)

共生社会の実現を進めるきっかけに

56カ国の人々が暮らす沖縄市も、バスケットボールW杯開催を機に多様性、共生社会に対する意識・理解が向上したのではないかと宮里さんは話す

もちろん、より良く発展していく街、社会は多様な人々が自分らしく生き生きと過ごせるものではなくてはならない。沖縄は古くから独自の文化を形成しており、また、米軍統治下の歴史があったことからも様々な文化や価値観をもつ人たちが暮らしている社会だ。それでもなお、沖縄市はバスケットボールW杯をきっかけに、外国人の受け入れ・おもてなしやバリアフリーなどに関して行政と地域が協力して講座や議論を重ねてきたという。

「今大会はバリアフリー、ユニバーサルデザイン、様々な食や文化に配慮したイベントとして行政、地域が一緒になって議論、検討してきました。いろいろな国からたくさんの方が来ることが想定されるので、例えば食文化の違いやヴィーガンに配慮したメニューを提供するフードエリアを設定するなどしてきました。これらの意識がまた今後にも届いて行けば、これからの共生社会のさらなる実現を視野に入れた動きにもつながっていくのではと思います。今大会はそのきっかけになったのではと思っています」(桃原さん)

 

「沖縄市の商店街では、『ウェルカムんちゅになろう! インバウンド対応 おもてなし講座』が開催されました。同講座では、『語学編』『接客編』としてインバウンドへの対応について学ぶ内容となっていました。また、障がいのある人に向けては、例えば車いすの方が街なかや商店街を通る際に段差のある場所はみんなでサポートするなど、どの店舗のスタッフも実践しています。やさしい街を目指して、地域の方々も取り組み始めていますね」(宮里さん)

宮里さんの説明によれば現在、沖縄市ではその国のルーツを持つ人も含めて56カ国ほどの人々が生活しているという。今大会を契機に、行政と街が一体となってアイデアを出し合い進めていった沖縄市の取り組みは、経済効果だけではなく、誰もが住みやすい街、共生社会の実現という観点からも地域を活性化させていくだろうし、今後、他都道府県の自治体が大きな国際イベントを実施する際のモデルケースともなるのではないだろうか。

FIBAバスケットボールワールドカップ2023沖縄グループステージのサテライト会場となった沖縄市「沖縄こどもの国」のステージでは、沖縄市ジュニアオーケストラメンバーの子どもたちが沖縄グループ出場8カ国の国歌を演奏した

そして、リゾート観光だけにとどまらないスポーツの街、また、あらゆる人々が住みよいダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の街として将来、沖縄は多面的な魅力を日本全国はもとより世界各国へとますます発信していくだろう。バスケットボールW杯をきっかけに新たな航路へと舵を切って進み始めた沖縄の未来は、きっと今よりももっと輝くものになるはずだ。

text by Atsuhiro Morinaga(Adventurous)
photo by Tomoaki Kudaka

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