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世代交代が加速!? 「2023ジャパンパラ水泳競技大会」を沸かせた男子S9のスイマーたち

パラサポWEB

2位で現役を終えた山田は悔しさではなく喜びをにじませた。

「岡島選手が自己ベストでシンプルにすごくよかったと思います。僕がもうちょっと速く泳いでれば、もうちょっと出たかもしれないと思うと申し訳ないけど、僕としてはやれることを全てやった結果です」と淡々と語り、「もう泳ぎたくないなって思うほど、全てを出し切った。水泳人生を悔いなく終われてよかったです」と続けた。

岡島の勝利は、これまで道を拓いてきた山田に対する、最高のはなむけになったに違いない。

「あとは任せた!」ラストレースを終えた山田(左)に涙はなかった

もうひとりの新鋭・川渕も「S9クラスで結果を出したい」

忘れてはならない存在が、前回のジャパンパラで、山田、岡島と50m自由形の表彰台に上がった川渕大耀(かわぶち・たいよう)。左足を切断しており、多くのパラリンピアンを輩出する宮前ドルフィンを主な拠点として練習に励む15歳だ。

今大会は、4種目に出場。山田の引退を知る前に出場種目を決めてしまったといい、50m自由形はエントリーしなかった。

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だが、プールサイドでそのレースを見て大いに刺激された。「緊張感のあるレースで岡島選手が山田選手を差して勝った。鳥肌が立ちました。僕も出たかったな」と苦笑い。

川渕は長身で腕も長く、美しいフォームが持ち味だ

その川渕は初日、400m自由形で4分22秒51のアジア記録を樹立。世界ランキング7位相当の記録とあって、来年のパリパラリンピック出場が期待される自己ベスト更新だ。

「もとは山田選手と同じ50m自由形で世界を目指していたのですが、世界の選手を見て400mは手がない選手より足がない選手の方が有利だと感じ400mに挑戦することにしました。萩野公介ら健常者のメダリストのストロークやキックや作戦を参考にして練習をしています」

自己ベストを出すたびに声をかけてくれたという山田については、「S9というすごくレベルの高い世界で戦っていた」と敬意を表し、「次は自分が世界と戦って結果を出し、周りの選手に影響を与えられる存在になりたいです」と話し、日本におけるS9クラスの第一人者を引き継いでいく覚悟を見せた。

最終種目の100mバタフライは岡島との新鋭対決に。結果は、自己ベストをマークした岡島に敗れたものの、一喜一憂せずに前を向く。「次は勝てるようにがんばりたい」と語り、今大会で感じた悔しさを来月のアジアパラで晴らすつもりだ。

伸び盛りの岡島は100mバタフライでも自己ベストを更新した

パリパラリンピックの前哨戦でもあった8月の世界選手権(イギリス・マンチェスター)ではベテラン勢がメダルを獲得したものの、若手の存在感に欠けた日本代表。パラ水泳をけん引してきた山田の引退レースを通じて、明るい兆しが見て取れた。

32歳で引退した山田。当時選手団最年少の13歳でアテネ大会に出場してから5度日本代表としてパラリンピックの舞台に立った

text by Asuka Senaga
photo by X-1

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