ミハイルと仲間のひとりが、酸素カートリッジを探すため、艦内の浸水した区画を素潜りで巡るシーンは象徴的だ。息が切れるまでというタイムリミットの短さと、その一部始終をカットせずにワンショットで撮っていく長さ。ここに《時間》の2つのスケールが交わる。
ミハイルが手放した《時計》は、やがて息子のミーシャが引き継ぐことになろう。その針が1秒ごとに刻む小さな《時間》と、“時計の継承”という物語の大きな《時間》。ここでもミクロとマクロの対比さながらのスケール交錯が起き、世界はもはや《時間》の統制から解放されたかのようだ。だからもう、不可能は何もない。万策尽きたミハイルの前に、息子のミーシャは幻となって泳ぎ着く。海の男たちは永遠となる。映画の流儀で、彼らを追悼する。
文=広岡歩 制作=キネマ旬報社
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「潜水艦クルスクの生存者たち」
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●Blu-ray:5,280円(税込)
【映像特典】
「潜水艦クルスクの乗組員たち」キャストインタビュー&メイキング映像/「潜水艦クルスクの心臓部」監督・撮影監督インタビュー&特撮メイキング映像/劇場予告編
●2018年/ルクセンブルク/本編117分
●監督:トマス・ヴィンターベア
●脚本:ロバート・ロダット
●出演:マティアス・スーナールツ、レア・セドゥ、マックス・フォン・シドー、コリン・ファース
●発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング
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