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映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 —「水深ゼロメートル から」

キネマ旬報WEB

必死でもがく女子高生たちの普遍的で生々しい心の叫び

たとえスクールカースト一軍に属していようが、水泳部の部長だろうが、思春期真っ只中に身を置く女子高校生たちの心の奥底に堆積する不安や悩みは、決して尽きることがない。それはまるで、水のないプールの底一面に積もり、掃いても掃いても一向になくならない、グラウンドの砂の粒のようでもある。練習に打ち込む野球部員たちの掛け声と、蟬の鳴き声が響き渡る夏の青空の下、浮き彫りになるのは、第二次性徴を経た男女の性差に対する戸惑いや、「女は可愛くなければ認めてもらえない」との思い込みがもたらす、メイクへの過度な依存心。そして、理不尽な社会のルールを押し付けてくる大人への反発心だ。生理の日に教師から水泳を強要された経験に傷つき、「私たちは、どんなに頑張ったって女やん。女としか評価されんよ」と、人生に投げやりになっていた主人公が、無力感に苛まれながらも、必死でもがく仲間を目の当たりにし、自らも「JKなめんな!」と宣戦布告する。そんな彼女たちに、恵みの雨が降り注ぐ——。

 

「カラオケ行こ!」「リンダ リンダリンダ」の山下敦弘監督が、2019年に開催された第44回四国地区高等学校演劇研究大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した徳島市立高等学校の同名舞台劇を、原作者・中田夢花の脚本で映画化した青春群像劇「水深ゼロメートル
から」は、2022年に公開されスマッシュヒットを記録した「アルプススタンドのはしの方」に続く、高校演劇 リブートプロジェクト第2弾。原作執筆当時は高校3年生だった中田が、「滋賀県で実際にあった事件を下敷きに、スマホで書き、顧問の先生と相談しながら何度も何度も練り直した」というシナリオには、普遍的で生々しい女子高校生たちのアツい心の叫びが収載されている。

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文=渡邊玲子 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2024年5月号より転載)


「水深ゼロメートル から」

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