5月13日、横浜市山下公園周辺特設会場で開催された「ワールドトライアスロンパラシリーズ横浜大会」。
エリートパラは昨年に続き、雨模様の中で行われた。スタートは予定より10分遅れ、朝7時に。海外の有力選手の参加する中、車いす(PTWC)の木村潤平が初優勝、東京2020パラリンピック銀メダルの宇田秀生(PTS4)が4位、同大会銅メダルの米岡聡(PTⅥ)は3位だった。
復帰2戦目で実感した競い合える喜び
東京2020パラリンピックの金メダリスト、銀メダリストが来日した女子PTS2クラスは、同日本代表の秦由加子が出場した。女子で唯一の日本勢。昨年は欠場し、沿道から同じクラスの仲間であり、ライバルのアメリカ選手に声援を送っていたが、今年は選手としてレースに戻ってきた。

右大腿切断の秦は、東京大会直後の2021年11月に右脚を手術し、しばらくの間、競技から遠ざかっていた。
スイムを得意とし、東京大会でも真っ先に水から上がった秦だったが、この日は2選手にスイムで先行された。レース後、「ついていきたかったが、けっこう先を行かれていて追いつかなかった」と振り返った秦。
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「私の強みであるスイムで間を開けられ、バイクで周回を重ねる度にトップの選手と差をつけられた。世界の選手は強いなと感じた」と悔しそうに続けた。
最終順位は6人中5位。トップのヘイリー・ダンス(アメリカ)から14分遅れのフィニッシュ。それでも、フィニッシュ直前に見せた充実感に満ちた笑顔が強く印象に残った。
「久々にレースをしているのが、すごく楽しくて」
そう報道エリアで話しながら、思わず涙をこぼした秦。
「(レースに出られなかった期間、)一人で練習をしていると、ライバルがいないので、自分がどれくらい強くなっているのか、どれくらい練習の成果が出ているのかなかなか(現状が)わからない。健常者の中で練習をしていると常に後ろから追いかけるというような練習なので、バイクに乗りながら『レースって本当に楽しいな』と思いました」
約1年半前、秦は右足の大腿骨を3㎝短くし、筋肉で(内側から筋肉を引っ張ってきて)先端を覆う手術をした。ランで生じる右足先端の痛みに悩んでいたためだ。レース復帰までには日数を要したが、「手術をやってよかったかどうかは、自分次第と思っている」とパリを走る自身をイメージして前を向く。

前例のない手術は、パリ2024パラリンピックで結果を残したい気持ちはもちろん「一生、長くスポーツを続けていくためにも可能性があれば……」と決断して臨んだ。「走れなくなっても悔いなし」と選択した道だったというが、「足の状況はすごく回復してきている」と話す。