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パラアスリートが高校生にもたらす、新時代のキャリアパーソンとして生きるヒントとは

パラサポWEB

大人ですら戸惑うほどに変化の激しい社会。その中で成長し生きていく子どもたちに、希望をもって自立的に生きていってほしい。学校で行われる「キャリア教育」は、そうした先生方の想いのもと、自己理解を深めたり、勤労観や職業観を育んだりとさまざまな取組が各校で実践されています。

障がいのあるアスリートとの出会いも、そのひとつです。自分の進路や将来を現実的に考え始める高校生にとって、大きな困難と直面しながらも、自らの人生と向き合い歩んできたパラアスリートの生き方は、とても力強く希望を与えるものになるのではないでしょうか。ある高校の授業を取材しました。
※本記事は2023年10月取材時の内容を元に掲載しています。

パラアスリートが「インクルーシブ教育実践推進校」を訪問

2023年10月のある日、パラトライアスロン秦由加子選手が、神奈川県立霧が丘高等学校を訪れました。学校生活において「すべての子どもが共に学び、育つ」ことをめざし、「インクルーシブ教育実践推進校」として共生社会の実現をめざした実践的な取り組みを日々行っています。

全校生徒約1,000名の神奈川県立霧が丘高等学校

特に当事者の声を聞く機会を意識的に持っており、これまでには発達障がいや視覚障がい、LGBTQといった当事者の方から共生社会について語る講演会を実施してきているそう。今回は高校2年生約350名を対象に、秦選手のお話を聞く「あすチャレ!メッセンジャー」の講演が行われました。

秦選手は、パラトライアスロンでリオ2016パラリンピック、東京2020パラリンピックに出場。世界的に活躍している現役アスリートの生の声を聞ける貴重な機会とあって、講演前から秦選手のポスターが学校内に貼られ、生徒たちの関心も高まっていました。

秦選手の明るくはきはきとした声が、会場に響きます

全力で競技に挑むパラアスリートの強さが心に響く

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まずは、パラスポーツについて理解を深めます。秦選手が語る、これまで知らなかったパラトライアスロンの世界の話に、生徒たちも惹き込まれていきます。

パラトライアスロンとは、スイム(水泳)、バイク(自転車)、ランを一人の選手が順番に行っていく競技です。障がいの種類や程度によってクラスが分かれており、車いすの選手、肢体不自由で立位の選手、視覚障がいの選手と分かれてそのタイムを競い合います。スイムからバイク、バイクからランニングへの転換(トランジション)もタイムに含まれるため、用具の着脱や乗り換えもスピーディーに行わなければなりません。秦選手の説明と共に、パラトライアスロンの魅力を伝える動画が上映されると、高校生たちは熱心に見入っています。「こんなにたくさんの人が参加している競技だと知らなかった」と、その盛り上がりに驚いていました。

競技のパワフルな様子のみならず、高校生たちの前に立って話をする秦選手は、堂々としていてとてもエネルギッシュ。厳しい練習や大きな大会でのプレッシャーに打ち勝ちながら結果を出し続けてきたアスリートとしての自信が伝わってきます。高校生の目に映るその存在は、目標に向かってやるべきことを強い意志でやり遂げていく、まさに自立した大人として手本となる姿。そんな秦選手ですが、脚を切断した当初は義足で日常生活を過ごすのもつらく、自信がなかったと話します。

右足に義足を履いて生徒たちに語りかける秦選手

中学生の日常が一変した、「脚の切断」という選択を聞いて

秦選手が脚を切断したのは13歳のとき。部活動のバスケットボールに力を注ぐ日常生活を送っていたある日、脚に違和感を感じて病院に行ったことをきっかけに、骨肉腫という病気が見つかりました。骨肉腫とは、骨に発生する悪性腫瘍(がん)の一つで、10代で発症することが多い病気。命を守るために脚を切断するかどうか、選択を突然迫られることになった秦選手は、「命があることが最優先」と、中学生ながらに脚の切断を決めました。

ある日突然訪れた急激な変化。10代で脚を切断した秦選手の話に、講演を聞いている高校生たちも、自然と自分の身を重ね合わせます。自分が同じような立場だったらどう考えるだろう。自分の家族や友人が同じようになったらどう接しただろう。「脚を切断するという決断をできたことがすごいと思った」という感想からは、新しい視点で人生を考え始めたことが伺えます。

決断に迷いはなかったものの、脚を切断した後は精神的にもつらい日々が続きました。義足をつけての学校生活では、周囲の視線が気になってしまい、義足を恥ずかしいとさえ思ってしまうように。特につらかったのは体育の授業や運動会。これまでのように体を動かせないことに対して、悲しみがこみあげてきたと言います。自分の生活や目標としていたことが突如一変してしまった、これほど大きな変化を13歳の少女が受け止め、受け入れるには、時間がかかるのも無理はありません。

つらい日々からの再起。義足を隠さず堂々と戦う姿から学ぶもの

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