東京2020パラリンピックに出場し、個人戦のエペで6位に入賞した車いすフェンシングの選手。そのSNSをのぞくと、本格的なアート作品や遊びごころあふれる写真コラージュがいっぱい。どんな思いで作品づくりに取り組んでいるのか、語ってもらいました。
櫻井 杏理(さくらい・あんり)|車いすフェンシング
車いすフェンシングで東京2020パラリンピックに出場。パリ2024パラリンピック出場を目指して本場イギリス・ロンドンに渡り、練習に励む日々を送る。相棒はInstagramにも度々登場する愛犬のブロッサム。
――繊細な模様を何重にも連ねて描く曼荼羅アートをはじめ、大小さまざまな作品をSNSにアップされていますね。曼荼羅(まんだら)アートはいつごろから描くようになったのですか?
櫻井杏理選手(以下、櫻井):2020年、コロナ禍のロックダウンの時期からですね。2019年からイギリス・ロンドンに拠点を構えて、いまは練習場近くのマンションで一人暮らしをしているのですが、イギリスのロックダウンって本当に厳しくて、練習以外では外出できなかったんですよ。さすがにヒマ過ぎたので何かしようと思って、パンをつくってみたり、大人のレゴやプラモデルに挑戦したり、写経をしてみたりもしたのですが、その中の一つとして描いてみた曼荼羅アートにハマった感じです。
気の向くままに描いているという曼荼羅アート。「集中力を養うというよりは、ここにどう集中力を持っていくかという練習にはなったかもしれません」――ボーイッシュでさっぱりとした印象とは異なり、作品は緻密かつ繊細に描かれていて、そのギャップも魅力的です。もともと絵を描くのは得意?
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櫻井:そうですね。幼いころからひたすら字を書いたり、絵を描いたり、何かをつくったりするのが好きで、書道教室や絵画教室にも通っていたんですよ。いまも、スケッチブックにパッとひらめいたことをささっと描いたりしています。
――コロナ禍に描いた作品を見ると、仏さまの後ろに曼荼羅アートが描かれていたりして、何か心理状態を表していそうな……。
櫻井:出ちゃってますよね(笑)。当時は、東京パラリンピックが開催されるかわからず、先が見えない状態の中、悶々と過ごしていましたから。写経や曼荼羅アートのように、長時間作業をすることで、時間をつぶせますし、集中することで気持ちを落ち着かせることもできたのかなと思います。
パリ大会への意気込みを込めて、だるまとエッフェル塔が描かれている。「背景の大きな曼荼羅は、思いのままに描き続けた結果、あんなに大きくなりました(笑)」――下書きとかするんですか?
櫻井:だいたいが思いつきです。でも、完成までに数日かかるような大きなサイズの作品のときは、テレビを見ながら、鉛筆でここら辺にこれを描いて、とざっくり構成を考えます。曼荼羅アートって、油性ペンで描くのでやり直しがきかないんですよ。だから、いざ油性ペンを使い始めた瞬間に集中のスイッチが入る感じです。
――それって、競技にも通じそうですよね?