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【#4】文化放送アナウンサー西川あやのの読書コラム/バブルでない時代に生まれた悦びを感じるために

ホンシェルジュ

親を含む周囲のバブル世代から聞く話だけでは飽き足らず、その時代をテーマにしたドラマや本を手当たり次第楽しみました。自分なりのバブル時代研究です。色々観たり読んだりした中で、バブル時代に羨望以外の感情を持つようになったのがこの作品

 

アッコちゃんの時代
著者林 真理子 出版日

 

バブルの象徴のような女子大生“アッコちゃん“の半生と共に、その時代を鮮やかに写実的に描いている林真理子さんの小説です。小説……といっても登場人物にはそれぞれモデルがいて、当時週刊誌を賑わせた“地上げの帝王“や“有名レストランの御曹司“との恋愛模様も表されています。実在の名のまま登場する人物や飲食店も多く、煌びやかで、ある意味ではたがが外れているバブルという時代が確かにあって、今はその続きなのだと語りかけてくるようです。バブルがどんどんどんどん膨らんでゆく様子が、要所で描かれます。

今の日本は、金が地からいくらでも湧いてくるようだ。ふつうのサラリーマンも、余っている金があってマネーゲームに出る。(中略)ちょっとこまめに頭と体を動かせば、ふつうの人間でもたちまち大金を手にすることが出来るのだ。

 

株は上がりに上がり、日経平均は三万五千円近くになった。ニュースで史上最高のーーという言葉を聞くのは、もう慣れっこになっている。「史上最高の株価を記録しました」「史上最高の経常利益となっています」「史上最高の海外渡航者数となりました」

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何ということでしょう……。世界の証券会社や銀行からの視線が日本で渦巻くお金に注がれていたのが、よく分かります。バブル崩壊直後1991年生まれの私たちはただ歯噛みするしかないですね。それだけお金があるのなら、私だって常に元気でいられますよ……。「車を持たない・飲みに行かない」などと括られがちのゆとり世代も、お立ち台に自ら上がったりしちゃいますよきっと……。

 

当時の文化放送のおとぎ話も、こちらには度々漏れ伝わってきます。年2回あるボーナスの支給額は月収12ヶ月分を上回っていたとかなんとか?年末には車をより高いものに買い替えなくてはいけなかったとか?(諸説あります。)たっぷりある経費を余らせないために部署ごとに温泉旅行に行っていたとか?番組のケータリングは毎日とんかつや、うなぎだったとか?(諸説あります。)

人生の先輩方から当時の話を聞いたり、このようなバブル時代を表象した作品を享受して思うのが、とにかく皆さん、元気なのですよね。”24時間戦えますか”のリゲインのキャッチコピーに表れているように、仕事でも遊びでも、とにかく燃え続けている。サラリーマンだって多忙を極め、残業代を稼いだから。みんなで働いて、みんなで稼いで、みんなで遊ぶ。このパワフルさに心から感服します。時代の変化をただ羨んでいるのとはまた違う感情が湧いてくるのです。それと同時に、何か常に焦っている印象もある。モーレツに自分の仕事をしながら夜遊びのことも考えなくてはならない。次の有給休暇で行く海外旅行のことも考えなくてはならない……。

 

金銭的に自由でありながらも、実はみんなで同じところを目指さなくてはならない窮屈さがあったのではないかと思います。豊すぎると自分の選択能力が下がる心配もあって…私がもしバブル時代を生きたら、情報と人に溺れてしまいそう。

今の時代は、自分のステータスの中で楽しめる選択肢がきちんと用意されています。みんなで同じディスコに集わなくても、それぞれが楽しみたいサブスクリプションサービスを選べば良い。週3日だけ働く人もいれば、休み無く副業している人もいる。それぞれの収入の中で、時間の中で、満たされる幸せの形がある。これは別の意味で豊かなのかもしれません。人には人のバブルがあるということです。

ずっと元気でいる難しさを知ったここ最近では、バブル時代を謳歌した皆さんを労りたい。今の時代をそれぞれのやり方で一緒に楽しみたい。

まあ…もう一度だけ、プラザ合意してくれても良いのですけどね。

 

このコラムは、毎月更新予定です。

info:ホンシェルジュTwitter

writer Twitter:西川あやの

related radio program:西川あやの おいでよ!クリエイティ部

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2022年11月11日

提供元: ホンシェルジュ

 
   

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