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究極の選択、愛と夢どちらをとるか?江戸川乱歩『パノラマ島奇談』レビュー

ホンシェルジュ

ホラーとミステリーが融合した怪作を生み出し続けた作家、江戸川乱歩。

数ある彼の著作の中でも人間の想像力の限界に挑んだ『パノラマ島奇談』は、そのスケールの壮大さやエロスとタナトスが結実した迫真の描写、酸鼻を極めた結末でもって読者の心を掴みました。

今回は『パノラマ島奇談』のあらすじや魅力を、ネタバレを交え考察していきます。

『パノラマ島奇談』の簡単なあらすじと登場人物紹介

主人公は三十路過ぎの売れない小説家・人見廣介

極度の夢想家の人見は俗世間のよしなごとに一切関心を持てず、理想の箱庭を思い描く日々を送っていました。

ある日人見は下宿に訪ねてきた友人から、学生時代の知己・菰田源三郎が亡くなった事実を知らされます。菰田源三郎はM県有数の資産家であり、数奇な偶然によるものか、双生児とあだ名されるほど人見に似ていました。

菰田の訃報を知った人見は、墓所に埋葬された菰田が息を吹き返した体を装ってなりすまし、「人見廣介」を葬る計画を立てます。

人見は遺書を残してフェリーから身を投げたのち、腐敗が進んだ菰田の死体を掘り起こして、隣接する父祖の墓に埋め直しました。その後は蘇生した菰田のふりをし、まんまと故人の妻・千代子と莫大な財産を手に入れるのに成功します。

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人見が菰田になりすましたのは、菰田家の資産を投じ、長年の野望を実現する為でした。

その野望とは即ち、人里離れた絶海の孤島に、自分の脳内を具現化した理想の楽園を築き上げること。

唯一の懸念は妻・千代子の動向。他の親族は金で黙らせることができても、菰田を深く愛して尽くす、千代子の真心を欺くのは並大抵のことではありません。

計画の障害となる千代子の殺害を企む人見。しかし美しく優しい千代子に惹かれていき、ジレンマに苦しみます。千代子の方も生き返ってから人が変わってしまった夫を怪しみ、夫婦間に溝ができました。

やがて人見は完成間際の島に千代子を連れ出します。そこで彼女が目にしたのは、凡愚の想像を絶する光景の数々でした。

著者江戸川 乱歩 出版日

ニートの妄想から生まれた人工楽園、パノラマ島の稀有壮大な魅力

『パノラマ島奇談』の最大の魅力として挙げられるのは、人見が図面を引いた島の特異な景観。

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