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【あの頃のロマンポルノ】神代辰巳監督の「濡れた欲情特出し21人」

キネマ旬報WEB

 はみだし劇場の役割はそういう方法論で共通するにとどまってはいないと思われる。

 自分を徹底した河原乞食に変身させて演じる大道芸のふてぶてしい即興性が(といっても戯曲は正確にあると思う)スケコマシを演じる男の厚顔さや、彼女たちのオープン(股開き)の演技と生き方に、強く通底するものを持っていて、神代はそれを見てとって、はみだし劇場を起用したのであろう。こうして「昔」から「今」へのキレギレに綴った断片が、トータルとして、持出し嬢とその周辺の世界をみごとに描き出すことになった。

 ここに登場してくる人物たちの生理と感性だけで生きている、その圧倒的なみずみずしさには目をみはるのである。「一条さゆり・濡れた欲情」には、モデルに裁判がらみの悲壮感・使命感があって気になったが、この作品の人物は、伊佐山ひろ子や白川和子のような人たちばかりである。

 純真さと無知と楽天性で、出世する幻想を抱いて、そのくせあっけらかんと生きていて、みじんも暗くない。その辺りの形象化は神代の喜劇的な演出と、はみだし劇場に仮託した土着的なバーバリズムが救済している。ストリッパーたちは日本中どこでも舞台にできる芸人、現代の巫女なのであった。神代は地誌劇を演じる根なし草の芸人を彼女たちにイメージしたのであろう。

 女たちを取巻く男たちの描き方も優れている。スケコマシの芳介は、落とすまでは情事の最中でも喋り通す若者であり、だめなヤクザの久作は、ちょっとしたミスで指を切り落したかと思うと、逆に簡単に恩義ある劇場夫婦を殺傷してしまう。そういう男が活写されている。挿入歌も例によって効果的だが、片桐夕子、芹明香の主役二人がなかなかだ。片桐の放尿シーンは映画史に残る場面だと思うが如何。

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文・斎藤正治
「キネマ旬報」1974年2月上旬号より転載

濡れた欲情 特出し21人』 【Blu-ray】

監督: 神代辰巳 脚本:神代辰巳 鴨田好史

価格:4,620円(消費税込み)

発売:日活株式会社 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング

 

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