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【あの頃のロマンポルノ】神代辰巳監督の「濡れた欲情特出し21人」

キネマ旬報WEB

 日活ロマンポルノは生誕50年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。(これまでの掲載記事はコチラから)

 今回は、斎藤正治氏による『神代辰巳監督の「濡れた欲情特出し21人」』の記事を、「キネマ旬報」 1974年2月上旬号より転載いたします。

 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく!

密室的世界から解きはなたれた性の行方は……

地誌劇を演じる根なし草の芸人

 神代辰巳は密室に閉じ込めた性を、一転解きはなして、またしても彼独自の新らしい世界を描き出した。

 「四畳半襖の裏張り」では、日付けと時間を解体する方法で、密室から世界を透視した。あの長い情事に、歴史を対応させたのだった。私は性で歴史を取込んだと批評した。そこにはまぎれもなく神代の大正があったとほめた。

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 「濡れた欲情・特出し21人」は、時間とともに風景、あるいは地図までも恣意的に解体してしまっていた。こうして神代はこんどは自分の勝手な地誌を描いたといえる。

 釜ケ崎でスケコマシの若者が酔っぱらったところが写されると、つぎのシーンは京都のストリップ小屋(ヌード・ショウ劇場というより懐かしいストリップ劇場と呼んだ方がこの映画にはふさわしい)の情景になる。ストリッパーたちのマイクロバスの移動のつぎはスケコマシの財布を拾う場面だ。どこともわからぬ田舎の町で「はみだし劇場」が演じられると、スケコマシに捨てられた夕子が男を追っかける。浅草ロック座が写されると、突然信州の山々の遠景が浮かび上がる。

 「それも今は昔の話」「今は昔」「今は今」のタイトルに分節された構成のなかで、風景と人とが飛びかうのである。この脈絡のない不連続が奔放にスクリーンに写し出されて、最後は主役夕子の生きざまに収斂していく。分節のタイトルからは編年記ものと錯覚されがちだが、それほど厳密な意味は持っていない。不思議な構造の作品である。「四畳半襖の裏張り」に続いて時間の秩序を失い、さらに空間的地図を無視したところで、神代は確固として自分の方法を確立した。

 はみだし劇場の外波山文明が大きな役割で登場していることにも、この方法と深くかかわっている。新宿をはみ出して放浪するこのアングラ劇場は、軒下でも道路でも劇場にしてしまう。いわゆる街頭劇である。どこでも劇場にしてしまうということは、逆に既成の劇場を無視する思想である。演じた道路や商店の軒下が彼らの劇場だ。固定してそこにあり続ける例えば俳優座劇場や、新宿文化劇場には目もくれず、外波山らは、任意の土地に任意の劇場を“構築”する。いってみれば地誌的演劇を方法としているということになる。密室から一転して、「特出し21人」をつくった神代の方法も、映像秩序を無視して、自分の地図を描いている。はじめに神代は自分の地誌を編んだといったゆえんだ。

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