『おそ松さん』第1話は伝説と化した……。 画像はBlu-ray『おそ松さん 第一松』(エイベックス・ピクチャーズ)

【画像】もはや「似てる」ように見えてくる? 血縁はない6人が「六つ子です」と開き直った実写版『おそ松さん』(3枚)

欠番になった伝説の『おそ松さん』第1話

 ギャグアニメのなかには、これでもかと他の作品の「パロディ」を盛り込んでくる作品も珍しくありません。『銀魂』や『ポプテピピック』などは、その筆頭といえるでしょう。

 成功すればSNS上で話題になる作風ではありますが、そこには大きなリスクも潜んでいます。「やりすぎたパロディ」によって、放送や配信が中止になってしまうことがあるのです。

 近年の代表例といえるのが、2015年に放送された『おそ松さん』の第1話「復活!おそ松くん」でしょう。そもそも原案となった赤塚不二夫先生の『おそ松くん』自体が攻めた表現の多い作品だったのですが、その遺伝子を継承したパロディのオンパレードが当時大きな注目を集めました。

 作中では成長した松野家の6つ子たちが、『うたの☆プリンスさまっ♪』を彷彿とさせるアイドル衣装でライブを繰り広げ、さらには『花より男子』のF4をもじった「F6」を名乗り出すというフルスロットルぶりです。ほかにも『弱虫ペダル』や『ハイキュー!!』、『進撃の巨人』や『ラブライブ!』など、ありとあらゆる話題作のパロディが詰め込まれていました。

 そんな衝撃のスタートダッシュによって人気シリーズへとのし上がっていった『おそ松さん』ですが、第1話は当然のように配信中止になっています。加えて当該エピソードは、Blu-rayおよびDVDの第1巻に収録されないことが発表されました。つまるところ事実上の永久欠番となり、いまだに各種配信サイトで視聴できません。

 あくまで公式は「おそ松さん製作委員会の判断により」としか説明していませんが、ネット上では「盛大に怒られたんだろwww」「第1話のパロディは『銀魂』以上だったもんな(笑)」といった声も上がっていました。

 また2019年に放送された『ぱすてるメモリーズ』も、パロディが原因でトラブルを引き起こしてしまったアニメのひとつです。同作は主人公が衰退したオタク文化を取り戻すべく異なる作品世界へ向かう物語となっており、『ローゼンメイデン』や『とっとこハム太郎』を始めとした名作のパロディが毎回盛り込まれていました。

 なかでも物議を醸してしまったのが、『ご注文はうさぎですか?』を彷彿とさせる第1話「うさぎ小屋本舗へようこそ、です」と、第2話「ご注文は?と言われても……」です。第1話に関しては本編内容の一部変更で済みましたが、問題は第2話でした。同話に関しては今なおソフト収録されず、ネット配信すら行われていません。

 作中には完全に『ご注文はうさぎですか?』を意識したであろう描写が数多く盛り込まれていたうえに、そっくりな背景描写まで飛び出し、放送時から「これ大丈夫か?」といった心配の声が上がっていました。第2話だけ欠番となっているところを見るに、まったく大丈夫ではなかったようです。



権利の壁に引っかかったのは、『イデオン』パロディだけじゃなかった? 画像は劇場版『SHIROBAKO』ビジュアル (C)2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

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「永久欠番」とまではいかなかったが?

 一方で、配信中止から何とか復活に漕ぎ着けたケースも、少なからず存在します。たとえば2014年に放送されたアニメ『SHIROBAKO』の第6話「イデポン宮森 発動篇」は、タイトルの通り『伝説巨神イデオン』のパロディが目白押しのエピソードでした。案の定、権利上の都合により一時ネット配信が停止されましたが、一部修正されただけで欠番にまでは至っていません。

 修正版では作中に流れたBGMや、戯曲「ゴドーを待ちながら」のセリフなどが変更されており、これが配信停止の理由だったのではないかと推測されています。しかし理由はハッキリしないため、ネット上では「イデオンっぽいBGMが変更されてる」「イデオンのなんちゃってBGMがダメだったのか」「ゴドーのセリフも変わってる」「これイデオンパロじゃなくてゴドーがアウトだったんじゃないか?」などと、議論を巻き起こしていました。

 そして数々のパロディネタで知られる『妖怪ウォッチ』にも、放送や配信の中止に追い込まれた過去が存在します。

 問題となったのは、2014年10月に放送された第1シーズンの第39話「妖怪U.S.O./妖怪ネタバレリーナ/給食のグルメ」です。同話ではピンク・レディーの名曲『UFO』や『スター・ウォーズ』、さらに『孤独のグルメ』などのパロディネタが展開されていました。

 ところが、これらが原因となったのか、地上波後に控えていたAT-Xでの放送が休止になります。加えて、ニコニコ動画やバンダイチャンネルを始めとしたサイトでの配信も、休止となりました。

 火種になりそうな描写は多数ありましたが、原因は『UFO』のパロディだったという説もあります。曲やダンスの振り付けが修正された上で、ネット配信が行われました。

 さまざまなリスクを背負いながらも、ギャグアニメの職人たちは視聴者を楽しませるためにギリギリを攻め続けています。その努力には頭が上がりません。