「好きを見つける」←好きではない理由とは (望月哲門さん提供)
【マンガ】「好き」を見つけて苦しんだ 好きなものとの向き合い方に「励まされる」「やる気出てきた」 本編を読む
「好き」はみつけるものではなく選ぶもの?
テレビやネットなどで「好きなことを見つけて仕事にしよう」といった言葉をよく耳にします。しかし、漫画家の望月哲門さんはその言葉が好きではありませんでした。理由は過去に経験した苦しんだ思い出にあって……。
望月哲門さん(@Tetsuto1319)によるエッセイマンガ『好きなことは「見つける」よりも「選ぶ」。』がTwitter(現:X)上で公開されました。いいね数は5,000を超えており、読者からは「やる気が出ました」「捉え方や見る角度を変えるって大事ですね」「いつも同じように悩んでいたので楽になれました」などの声があがっています。
作者の望月哲門さんにお話を聞きました。
ーー今作『好きなことは「見つける」よりも「選ぶ」。』が生まれたきっかけや、理由を教えてください。
2作だけですが過去にエッセイマンガがSNSでバズったことがありました。エッセイマンガを描くことに手応えがあったので、もっと描きためて書籍を出せたらなと思うようになりました。
そこで今年から10年ぶりに東京から札幌の実家に戻り、ひっそりとTwitter(現:X)でエッセイマンガを自主的に連載しはじめました。今回のマンガは自主連載の1本目でした。マンガで描いた当時の自分を今振り返ると「ちょっとお前、せっぱ詰まりすぎだって」とは言いたくなります(笑)。
「好きなことを見つけよう」という言葉や風潮には、「誰しもが実は何かを持っているんだ」と思わせるような魔力があります。でも人間って「ない」ものをあたかも「ある」と思い込みすぎるとしんどくなります。
「根拠のない自信」という言葉がありますが、あれは実はもっと腹の底の方から出てくるものだからまた別物だと思うのです。自分が苦しんだことは「現代病」みたいなもので、共通の体験をした人や渦中の人も多いだろうと踏んで描いてみました。
ーー自分の現状や将来について悩んでいる多くの人に響く内容でした。今作を描くうえでこだわったポイントや、お気に入りのシーンなどはありますか?
今回のエッセイマンガのなかで「強い好き」や「小さな好き」という概念が出てくるのですが、それらを積み木で表現したところが自分で気に入っているポイントです。
構想段階では、この積み木は頭にまったく浮かんでいませんでした。作業していくなかで「好き」を植物で表現するコンセプトを思いついたのですが(種から芽を出し、大きな木にして実を付けて……みたいな)、絶妙にしっくり来ませんでした。
そんななか、家で甥っ子の積み木遊びに付き合わされていたときに、「あ、これだ」とひらめきました。こうやって自分の生活のなかから実感のこもったアイデアを持ってこられたときはうれしいです。
「好き」を見つけたことでとても苦しくて…… (望月哲門さん提供)
ーー会社員を経て漫画家になった望月哲門さんが、今現在の創作活動において、会社員時代やそのほかの経験が活きていると感じることはありますか?
自分は大学4年生のとき、就活から早々に逃げ出して「このまままずはマンガ家のアシスタントになろう」と思っていたのですが、結局なし崩し的に会社員になり、そのまま2年ほど勤めました。
その2年間は人生で1番しんどかった時期でもあるので、決していい思い出とはいえないのですが、その分「サラリーマンとして働くこと」とか「マンガを描くこと」について改めて考えるキッカケになったと思います。この時期にした体験や感じたこと、そして考えたことが創作の指標になっています。
実際、今回の作品もそのおかげで生まれました。それに結局、世の中には「会社員」がたくさんいて、その人たちがマンガを読んでいます。読者との共通言語を増やすという意味でもマンガ家志望の人はみんな会社勤めを経験した方が良いと思っている派です。
あとは営業職をやっていたので、請求書をちゃんと作れることやビジネス上でのメールの書き方や立ち回りの仕方がある程度分かるということは地味ながら本当に役に立っています(笑)。
ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。
徹夜で描いている途中でだんだん自信がなくなっていき、「こんなマンガ伝わらないかも」と半泣きで仕上げたので、全部の感想が本当にうれしかったです。
基本的にはすべての感想を一字一句読んでいるので、たくさんコメントや引用リポストをしてもらえると大変励みになります。あとは自分と同じように何かしら「つくる仕事」をしている方が多く読んでくれていたのが印象的でした。
ーー望月哲門さんを応援しているファンの方へひと言お願いします!
これからもSNSで連載していくので、また読んでください。いいエッセイマンガを描けるようにがんばります!