ファミコンソフト『スクウェアのトム・ソーヤ』には、敵からの攻撃に「リセット」が存在した

【画像】『ドラクエ』がリセットを強いる瞬間は?(5枚)

プレイヤーを驚かせた、ゲーム側からの「リセット」の数々

 かつてはゲーム機の物理ボタンで、今は相当する内部機能によって行われる「リセット」。プレイ中の進行を初期化してやり直したり、エラー状態から復帰したりするために、タイトル画面へ戻す手段として使われています。

 こうしたリセットの使い道は、主にプレイヤーの意志で行うもの。しかし、時にはプレイヤーの判断ではなく、状況的にリセットを強いられる場合もありました。事故や他人の介入もそのひとつですが、「リセット」というシステムそのものに干渉するゲームも存在したのです。

 ゲームプレイを無に帰す、リセットという行為。それは、ラスボスが繰り出す大ダメージよりも恐ろしい攻撃と言えるでしょう。果たしてどんなゲームが、いかなるシチュエーションでリセットを強いるのか。衝撃的な3本のゲームを紹介します。なお、一部ゲームのネタバレ要素を含むので、その点ご注意ください。

敵の攻撃が、まさかの「リセット」

「リセット」を、なんと攻撃の手段として繰り出してくるゲームがありました。そのゲームの名は、『スクウェアのトム・ソーヤ』。そのタイトルからも分かる通り、当時のスクウェア(現スクウェア・エニックス)がリリースしたファミコンソフトです。

 タイトルに会社名が入ったのは、一足先に発売された『トム・ソーヤーの冒険』(販売はセタ)と区別するためと言われていますが、このタイトルよりも衝撃的だったのが「リセット攻撃」の存在です。

 この攻撃を繰り出す敵は「ふこうむし」。本作はターン制のRPGで、互いに攻撃を繰り出し合って勝敗が決まります。しかし「ふこうむし」は、「おそ~かな やめよかな…」と喋るだけ。何もしてこないため「拍子抜けだな」と思った頃に、衝撃的な展開に突入します。

「ふこうむしは ボタンを おした! それは リセットボタン だった!」といったメッセージが出た瞬間、画面は暗転。驚きに固まっていると、TVはタイトル画面を映し出します。そう、文字通り「リセット」されたのです。

 どれだけこちらが成長しても、リセットされたら手も足も出せません。もちろんオートセーブなどはないので、最後にセーブした地点まで巻き戻されてしまいます。ゲーム史全体を通しても、これほど強力な攻撃は類を見ないことでしょう。

 ただし、「ふこうむし」は通常のエンカウントでは遭遇せず、一定の手順を踏まないと会えません。そのため、全く出会わずにクリアする人もいますし、偶発的に一度出会っても、それ以降の回避は容易。「ふこうむし」のせいでクリアできない、という事態には陥らないので、存在は強烈でも大きな問題にはなりませんでした、



『ドラクエ』で誘惑に負けると、「リセット」するしかない状況に陥る

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エンディングのために、リセットを強いられる? これは呪いか。それとも罰か。

キャラクターの人生、プレイヤーの歩みすら「リセット」される恐怖

 直接リセットを行うわけではありませんが、プレイヤーにその行為を半ば強いるゲームもあります。その代表作として真っ先に思い浮かぶのが、『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』です。

 PlayStation 3/Xbox 360向けに登場した本作は、プラットフォームによって主人公の立場が変化(兄/父)するなど、個性的な要素の多いゲームでした。そのひとつに、周回プレイを前提としたゲーム構成が挙げられます。

 ラスボスを倒すと、最初のエンディングを迎えます。その後、周回プレイを開始し、一定の条件を満たすことで複数のエンディングへ到達できるようになり、そのなかでも最も最後に辿(たど)り着くエンディングの直前に、ある選択肢が突きつけられます。

 その選択とは、主人公・ニーアの存在と引きかえにすれば、命を落としかけている仲間・カイネを救えるというもの。ここでニーアが失う「存在」とは、命だけに限らず、彼がこの世界にいた痕跡の全て。人々の記憶からも消え去り、存在自体が抹消されるという、絶望的な代償を求められます。

 この代償は、ゲームの世界だけに留まらず、現実世界にも影響を及ぼします。それは、ニーアが生きてきた証ともいえる「セーブデータ」の消去。プレイしてきたセーブデータの消去に同意することで、最後のエンディングにたどり着けるのです。

 セーブデータの消去は振りなどでなく、容赦なく本当に消えてしまいます。単なるリセットに留まらず、プレイデータそのもののリセットを求めてくる、恐るべき選択と言えるでしょう。そして多くのプレイヤーが、その痛みを乗り越え、最後のエンディングにたどり着きました。その後、もう会えないニーアに想いを馳せながら。

 ちなみに、本作のバージョンアップ版が2021年4月に発売。こちらの作品では、セーブデータを消去した後の物語も綴られています。その内容が気になる方は、『ニーア レプリカント ver.1.22474487139…』をプレイしてみましょう。

 なお、続編にあたる『ニーア オートマタ』にもセーブデータが削除される仕組みがあります。シリーズを通して、作中のキャラクターとプレイヤーが共に痛みを分け合う展開があるので、今後遊ぶ方はお覚悟を。

あの国民的RPGが、リセットを強いてくるなんて!?

 リセットするしかない──ゲームを遊んでいると、そんな状況に追い込まれることもあります。この時、リセットするのはプレイヤー自身ですが、リセット以外の選択肢がない状況を提示するのは、ゲーム側の展開によるものです。

 そうした「リセットボタンを押させる」シチュエーションのなかでも特に印象深いのが、国民的RPGとして名を馳せる人気シリーズの原点を飾った初代『ドラゴンクエスト』(以下、ドラクエ)。本作には、ある条件下でリセットを迫られる場面が訪れます。

 それは、ラスボスである「竜王」の提案を受けた時。「味方になれば世界の半分をやろう」という申し出に頷くと、世界は闇に暗転し、一切の身動きが取れなくなります。もちろんこれは、竜王が仕掛けた策略。世界の半分……つまり闇の世界を与えられるというバッドエンドです。

 このエンディングを迎えると、コントローラの操作を一切受け付けなくなり、勇者は手も足も出せません。HPがゼロになった時ですら、(所持金こそ半分になりますが)そのまま王様の元で復活できるので、死よりも恐ろしい状況に追い込まれています。

 こうなると、プレイヤーに残された手段はリセットのみ。しかも、竜王に教えてもらった「ふっかつのじゅもん」を入力すると、レベルは1に、所持金も武具もない状態に巻き戻されるため、ステータス面も全てリセット状態。選択肢ひとつで全てを失う……『ドラクエ』が用意した罠、恐るべしです。

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 一方的にリセットしたり、リセットを強いてくるゲームを紹介しましたが、このテーマに適したタイトルを厳選したところ、『スクウェアのトム・ソーヤ』はスクウェア、『ドラクエ』はエニックス、そして『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』はスクウェア・エニックスと、どの作品も現在は1社に合併されたスクウェア・エニックスの作品でした。

 中身重視でタイトルを選出したので、スクウェア・エニックス作品のみになったのは完全に偶然の産物。とはいえ、当時も今もRPGの新たな形を模索し続けてきた同社の姿勢が、こうした刺激的な要素の導入にも繋がったのかもしれません。そう考えると、この結果はある種の必然なのでしょう。さすがスクウェア・エニックス、の一言で締めさせていただきます。