映画『風の谷のナウシカ』のワンシーン (C) 1984 Studio Ghibli・H

【画像】原作だと見え方が違いすぎ! 美貌とカリスマ性にほれぼれするクシャナ殿下(5枚)

原作と映画の結末の違いに「衝撃を受けた」

 TVで再放送が決まるとSNSでトレンド入りするなど、いまだ人気の衰えを知らない映画『風の谷のナウシカ』。宮崎駿監督によって作り込まれた世界観や意匠の凝った設定は、国内のみならず海外からも評価が高い作品です。

 映画版では、宮崎駿監督が自ら手がけた原作マンガ全7巻のうち、2巻のなかばまでに相当する内容が描かれています。ところが、その設定は原作からかなり変更されたものになっています。映画と原作はどのように違うのでしょうか。

『風の谷のナウシカ』の映画版と原作マンガでは、全体のストーリーそのものに違いがあります。原作は、アニメ雑誌「アニメージュ」に連載されていたもので、『風の谷のナウシカ』の映画化は「スタジオジブリ」設立のきっかけにもなっています。

 映画版では、「トルメキア帝国」が「風の谷」に落ちてきた古代兵器「巨神兵」を回収するために谷への侵略を開始します。それが原因で、さまざまな騒動が起こるところから物語が始まります。作中ではトルメキア軍も「風の谷」の人びとも、蟲(むし)の脅威にさらされていました。物語の後半では、ナウシカが奇跡を起こして、敵のトルメキア軍とも和解、希望が残る最後となりました。

 一方、原作版では「トルメキア」と「土鬼(ドルク)」という大国が戦争をしており、主人公・ナウシカは「トルメキア」側として戦争に参加する……という設定から違いがありました。

 作中では戦争が激化するなか、ナウシカは腐海の真実と人類の行く末を知ることになります。最後はナウシカが真実を胸に秘めたまま、滅亡の道しかない汚染された土地で、人びとと生きていく選択をするという、切ない最後を迎えます。

 双方のストーリー展開を比較すると、映画版の方が最終的には平和的で分かりやすい全容になっています。また、映画版では「トルメキア」を「風の谷」への侵略者としてが、原作版では「風の谷」が「トルメキア」の同盟国のため、相反するポジションに変化しています。

 ほかにも、原作版では「風の谷」が世界の動きにほとんど関わっていない点も、映画版との大きな違いです。映画版と原作版の共通点といえば、「物語の世界観」と「ナウシカが登場する」くらいしか共通点がないように見えます。

 しかし、原作でナウシカが最後に「滅亡」という衝撃的な選択をしたのは、「新人類は争うことがないように」という宮崎駿監督の思いやメッセージが込められているのかも……と読み取ることもできます。『風の谷のナウシカ』の原作マンガを未読の方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。