実写化はまだだが、アニメ化されている『MASTERキートン File8』DVD(バップ)

【画像】なぜ? 実写化されそうでされない人気マンガ(10枚)

国内では実写化不可能な作品も?

 近年、映像技術の発展もあり、新旧の「映像化不可能」と言われてきたマンガ作品が国内外で次々と実写化されています。そんななか、実写化の実績もある漫画家の人気作であり、ファンタジー、SF要素も少ないのに、未だ実写化されていないマンガもあるようです。今回は実写化を難しくしている要因を考察しながら、実写化されそうでされないマンガをご紹介していきます。

『MASTERキートン』

『MASTERキートン』(著:浦沢直樹・勝鹿北星・長崎尚志)は、1988年から1994年までビッグコミックオリジナルにて連載されました。主人公は平賀=キートン・太一。名門オックスフォード大学を卒業後、イギリス陸軍特殊空挺部隊SASに入隊しサバイバル教官となり、考古学研究をしながらロイズ保険組合の調査員をしているという、凄まじい経歴の持ち主で、そんな彼の世界各地での冒険を描きます。続編『MASTERキートン Reマスター』も話題になるなど、今も根強い人気を誇る作品ですが、未だ実写化はされていません。

 浦沢先生といえば、1989年に『YAWARA!』が実写映画化されたほか、3部作で公開された『20世紀少年』の実写映画が大ヒット、テニスマンガ『Happy!』も2006年に2回ドラマ放送され、高視聴率を記録しています。また、傑作と名高い『MONSTER』も、2013年にアメリカで実写ドラマ化される予定であることが報道されました。人気ドラマを連発する有料放送局HBOが主導し、製作に映画『ヘルボーイ』や『シェイプ・オブ・ウォーター』で知られるギレルモ・デル・トロ監督が携わっているといわれています。こちらはいつ公開になるのか分かりませんが、ファンの間で長く話題となってきました。

 そんななか、『MASTERキートン』はシビアな社会情勢を描いている点や、日本人以外の登場人物が多い点に実写化の難しさがあると考えられます。ロケは外国中心になるので、日本人(日系人)を主演にしつつ、『MONSTER』のように海外で実写化するなら、可能性があるかもしれません。ファンの間でも、「キートン役は高橋一生か堺雅人がいいな」「Netflixの資本で世界を股にかけてドラマ化してほしい」など、いつか実写化される期待の声も見られます。

『おやすみプンプン』

 人気マンガ『おやすみプンプン』(著:浅野いにお)は、どこにでもいそうな少年・プンプンの波乱万丈な半生を描いた作品です。登場人物や背景が高い画力で描かれるなか、主人公であるプンプンとその親族のみが落書きのようなタッチの「ヒヨコ」として表現されているのが大きな特徴で、エキセントリックな発言や奇行に走るキャラクターの登場など、シュールな世界観で注目を集めました。

 浅野先生の作品は、2010年公開の『ソラニン』、2021年公開の『うみべの女の子』が実写映画になっていますが、どちらも『おやすみプンプン』と同様に現代日本が舞台であり、主人公に起こる出来事と周囲の人間模様が描かれる物語です。そう考えると、『おやすみプンプン』の実写化もありえるのでは……と思えてきますが、やはり主人公のプンプンがヒヨコの姿をしているという、特徴的な部分をどう映像化するのかが問題になってきます。

 また、少年期に起こる衝撃的な事件や、多くの読者をうめかせた鬱展開を表現するのも難しいでしょう。小学生から大人になるまでの長い期間を描くため、キャスティングにも苦労することが予想されます。一部のファンの間では、プンプンが一目ぼれする転校生・田中愛子に関して「実写化するなら、小松菜奈ちゃんか山田杏奈ちゃんでお願いします」という希望や、「一年くらいじっくり実写ドラマで観たい」「実写とアニメ混ぜてやってくれたら面白そう」という意見もありますが、はたして実現するでしょうか。

『BLUE GIANT』

「第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞」を受賞した『BLUE GIANT』(著:石塚真一)は、ジャズに魅せられて独学でテナーサックスを始め、やがてプロ奏者を目指すようになる青年・宮本大の成長を描いた物語です。2023年2月17日に劇場アニメ公開で、注目されています。石塚先生原作の『岳』が実写化された過去もあるため、「『BLUE GIANT』の実写化もありえるのでは?」とファンの間で話題になりました。

 ジャズを題材にした作品といえば、アニメ化ののちに実写化もされた『坂道のアポロン』(著:小玉ユキ)の前例もあるので、可能性は十分にあるでしょう。ただ、音楽が主題になっている以上、熱いライブシーンや実際の演奏を感じることができるというのが映像化の醍醐味ですが、その一方で臨場感や「音」そのものが高いハードルになってしまいます。

 しかし、劇場アニメ『BLUE GIANT』では、世界的ジャズピアニストの上原ひろみさんが音楽とピアノ演奏を担当することが発表され、サックス演奏に馬場智章さん、ドラム演奏に石若駿さん(アニメ『坂道のアポロン』にも参加)と、映像化に向けて気鋭のプレイヤーが勢揃いしています。これだけの布陣を揃えられれば、実写化の製作も可能かもしれません。ファンの間では、主人公・大役に、たびたび番組などで高いサックスの腕前を披露している、眞栄田郷敦さんが支持されているようです。