「アニメ『キャプテン翼』 DVD SET 小学生編 上巻」(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

【画像】くっ! ガッツがたりない! ファミコンでも名作だった『キャプテン翼』(5枚)

子供たちが真似をした「必殺シュート」

 39年前の今日、1983年10月13日は、TVアニメ『キャプテン翼』の放送が始まった日です。それまで主流だったスポコン作品とは全く異なる、明るく爽やかな作風の『キャプテン翼』は、主人公の大空翼くんを始めとするキャラクターたちと彼らが繰り出す必殺シュートが子供たちの心をガッチリとらえ、サッカーをする少年たちが公園にあふれかえるほどの大人気作品となりました。

 友だちと「翼くん!」「岬くん!」と叫びながらツインシュートを撃とうとして、互いの足を蹴っ飛ばした思い出を持っている方も多いでしょう。筆者も何度やらかしたのかは数え切れなません。実際のところは本当にツインシュートができるかどうかは関係なく、あのカッコいい翼くんや岬くんになり切ってみたかった、子供の純粋な憧れがそうさせていたのでしょう。放課後に公園で友だちと一緒にボールを追いかけた記憶は、大切な思い出です。

 さて、『キャプテン翼』と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり翼くんをはじめとする魅力的なキャラクターたちです。明るく爽やか、それでいて勝負に対しては真剣そのものの翼くん。他人を思いやる優しい性格で、転校を繰り返しながらもサッカーを通じてすぐに周囲に溶け込む岬くん。自分よりもはるかに上手いチームメイトのなかで、ガッツと根性で生き抜く石崎くん。ペナルティエリア外のシュートは必ず止める天才ゴールキーパー若林くん。必殺の「タイガーショット」で翼くんを苦しめたライバルの日向くんなど、数え上げればキリがありません。

 必殺シュートに関しても、立花兄弟のスカイラブハリケーン、松山くんのイーグルショット、早田くんのカミソリシュートなど印象的なシュートがいくらでも思い出せます。どのシュートも真似をした記憶がありますが、筆者は体が小さかったので、スカイラブハリケーンのときは大体上にいたことをよく覚えています。

 翼くんのオーバーヘッドキックは一度挑戦して無理だと諦めましたが、運動神経のいい同級生が失敗して骨折したと聞いています。あの頃の『キャプ翼』人気を考えると、結構な数の子供たちがやらかしていてもおかしくはないでしょう。



翼のライバルたちも魅力的に描かれる、アニメ「キャプテン翼 DVD SET ~中学生編」(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

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海外での人気のほか、意外な「功績」も

 多くの子供たちを虜(とりこ)にした『キャプテン翼』ですが、ひとつの作品としての評価を遥かに超えた、数多くの偉業を成し遂げたタイトルとしても燦然とした輝きを放っています。

『キャプテン翼』は海外でも放送され高い人気を獲得しており、著名なサッカー選手にもファンが存在しています。元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手は翼くんたちが所属した南葛SCや日向くんの東邦学園などさまざまなユニフォームを所有しており、着用した姿をインスタグラムで公開しています。

 その他にも、ジダンやベンゼマ、ガットゥーゾなど数多くの名選手が『キャプ翼』のファンであることを公言しています。2022年7月にはパリ・サンジェルマン(PSG)の選手たちが来日した際に原作者の高橋陽一先生がライブドローイングを披露。メッシやネイマールといった歴史に名を残す選手たちが高橋先生の手により生み出されていく翼くんと岬くんの姿に目を見張っていました。

 また、2000年代の初頭、戦争によって荒廃したイラクの復興支援でも翼くんは活躍を見せています。現地入りした自衛隊は当初、海外からの派遣部隊として地元から警戒されていましたが、集英社の許可を取って給水車に大きな翼くんの絵を貼り付けたところ、子供たちが大喜びして大人たちも警戒を解いた……というエピソードが残されており、翼くんは世界平和にも貢献できる存在であることを示しました。

 リオデジャネイロオリンピックの閉会式で行われた東京オリンピックへの引継ぎ式典では、ドラえもんやハローキティ、スーパーマリオたちとともに翼くんの映像も流されており、日本を代表するキャラクターのひとりとして認識されています。

 そしてここまで大きな話ではありませんが、現代のアニメ・マンガ文化のなかで『キャプ翼』は重要な役割を果たしています。1980年代半ばに『キャプ翼』は同人誌の世界で大人気となっており、数多くの二次創作作品が作られました。少し後に登場した『聖闘士星矢』や『鎧伝サムライトルーパー』とともに、パロディ系コミックやアンソロジーといった二次創作作品の拡大に大きく貢献した作品でもあり、その流れは現代に脈々と受け継がれているのです。